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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

トッド・フィールド監督 ケイト・ブランシェット主演「TAR ター」を観る ~ ベルリン・フィル初の女性指揮者に任命されたターの成功と転落を描く:テーマはマーラー「交響曲第5番」

2023年05月16日 00時01分06秒 | 日記

16日(火)。わが家に来てから今日で3045日目を迎え、ロシア大統領府によると、プーチン大統領は12日、南アフリカのラマポーザ大統領と電話で会談し、8月にヨハネスブルクで開かれる新興5か国(BRICS)首脳会議に向けて調整を続けることで一致したが、プーチン氏はウクライナ侵攻に絡んで国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されており、ICC加盟国の南アを訪れるかが焦点になっている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     どうせプーチンは 南アを訪問できるように 経済援助かなんか 提案したんだろうね

 

         

 

昨日、夕食に「ホウレンソウと豚肉の甘辛卵とじ」「蒸しジャガ  タラコバター」「生野菜とアボカドのサラダ」「大根の味噌汁」を作りました 「ホウレンソウ~」は初挑戦、「蒸しジャガ~」は先週作った時に、娘から「また作って!」とリクエストがあったので再度作りました   どちらも美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、TOHOシネマズ新宿でトッド・フィールド監督による2022年製作アメリカ映画「TAR ター」(159分)を観ました

リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は天才的な能力と類まれなプロデュース力で、アメリカの5大オーケストラの音楽監督を務めた後、女性として初めて世界最高峰のオケ、ベルリン・フィルの首席指揮者に任命された 7年を経た現在も指揮者として活躍する一方で、作曲者としての才能により、エミー賞、グラミー賞、トニー賞のすべてを制する 師バーンスタインと同じようにマーラーを愛し、ベルリン・フィルで唯一録音を果たせていない「交響曲第5番」を、来月ライブ録音し発売するまで漕ぎつけた その傍らで、自伝の出版も控えるなど多忙な毎日を送っていた また、投資銀行家でアマチュアオケの指導者としても活動するエリオット・カプラン(マーク・ストロング)の支援を得て、若手女性指揮者に教育と公演のチャンスを与える団体「アコーディオン財団」も設立し、ジュリアード音楽院でも指揮の講義を受け持つことになる そんな多忙なリディアを公私ともに支えているのは、オーケストラのコンミスのシャロン(ニーナ・ホス)だった。シャロンはリディアの恋人で、養女ペトラを一緒に育てている。さらに、リディアの副指揮者を目指す個人秘書で元恋人のフランチェスカ(ノエミ・メルラン)も、厳格なリディアの要求に応えていた 向かうところ敵なしのリディアだが、最近は新曲の作曲が思うようにいかず悩んでいた そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者クリスタ・テイラーが自殺したという訃報が入る 実は、リディアは裏では地位と権力を使って若い女性指揮者に肉体関係を迫るといったセクハラを繰り返しており、クリスタは犠牲者の一人だった クリスタの家族から告発の動き出たため、リディアは幻覚を見るようになり精神的に不安定になっていく パートナーのシャロンの心も離れていく リディアはライブ録音のためのコンサート会場で、リディアの代役指揮者エリオット・カプランがマーラーの第5番を指揮するところを突き飛ばし、楽団から首席指揮者の座を追われてしまう リディアは生まれ故郷に戻り、家で見つけた師匠バーンスタインのモノクロ・ビデオテープを観て一から出直すことを決意、タイに赴いて指揮者として活動を開始するが、聴衆はベルリン・フィルの聴衆とは程遠い、ゲーム「モンスター・ハンター」のコスプレ衣装に身を包んだ観客だった

 

     

 

最初に申し上げておくと、主人公のリディア・ターは実在の人物ではありません。架空の女性指揮者です

この映画は、クラシック音楽についてある程度知識を持っている人にとっては たまらなく面白い作品です そうでない人にとっては退屈かもしれません とくに冒頭30分くらいは

映画の序盤、レストランでのターと先輩老指揮者との会話シーンでは、「フランスのルイ14世の宮廷楽長を務めたジャン=バティスト・リュリ(1632-1687)は1687年、当時の習慣に従って長くて重い杖を指揮棒として使い、それを床で打ってリズムをとっていたが、誤って自分の足を勢いよく強打し、傷口に大きな膿傷が出来、それが原因で急死した」というエピソードが語られます

登場人物の一人「投資銀行家でアマチュアオケの指導者としても活動するエリオット・カプラン」には実在のモデルがいます それはアメリカの実業家でマーラー研究家のギルバート・キャプラン(1941-2016)です 1967年創刊の経済誌「インスティテューショナル・インベスター」の創刊者として実業に携わり、成功を収めました 青少年時代に音楽教育を受けたことはなく、大好きなマーラーの「交響曲第2番 ”復活”」だけを指揮することを夢見て、30代を過ぎてからシカゴ響音楽監督のゲオルグ・ショルティに師事して指揮を学びました 40代で自費によるコンサートを行い、指揮者としてデビューしました その演奏が絶賛を浴び、世界中のオーケストラから声がかかり、ロサンジェルス・フィル、セントルイス響、ピッツバーグ響、ベルリン・ドイツ・オペラ座管などで指揮をしました この映画ではマーラーの「第2番」ではなく「第5番」を振るところが違います

ジュリアード音楽院での指揮の授業のシーンが印象的です 生涯に複数の妻と20人の子供をもうけたJ.S.バッハを、「性的にも人種においてもマイノリティーである自分には受け入れがたい」と主張する黒人男子学生に対し、リディアは「クラシックの作曲家はほとんどがドイツ系の白人男性よ! 肌の色に固執しないで音楽に集中しなさい」と彼を容赦なく罵倒します これは正論でしょう  しかし、これは後に彼の恨みを買うことになります

リディアは若い新人チェリスト、ソフィー(オルガ・メトキナ)が気に入り、エルガーの「チェロ協奏曲」を彼女をソリストとして抜擢し、マーラー「第5番」とともに演奏する計画を立てます リハーサルの模様が映し出されますが、ソフィー役のオルガは本当にチェロを弾いています それもそのはず、2001年ロンドン生まれの彼女はノルウェー国立音楽大学でチェロを学んでいます 11歳からリサイタルを行い、13歳からオーケストラで弾いています 本作の劇中音楽を収めたアルバムでは、ナタリー・マーレイ・ビール指揮ロンドン交響楽団と共に録音に参加しているとのことです これを機会に世界に飛躍するかもしれません

映画のラスト近く、リディアが生まれ故郷の家でバーンスタインのモノクロ・ビデオテープを観て指揮者の原点に立ち戻るキッカケを掴みますが、その時の映像はバーンスタインの教育活動の一環「ヤング・ピープルズ・コンサート」の一場面で、演奏されていたのはレナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルによるチャイコフスキー「交響曲第6番”悲愴”」の第3楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」でした バーンスタインは一流の作曲家、指揮者であるとともに、クラシック音楽を子どもたちに分かりやすく伝える教育者でもありました 私はレーザーディスクで「ヤング・ピープルズ・コンサート」全巻(10巻?)を持っていましたが、プレイヤーが壊れたため、泣く泣くセコハン・レコード屋に売り飛ばしました

ラストのリディアがタイに赴いて、ゲーム「モンスター・ハンター」のコスプレ衣装の観客のためにオケを指揮するという設定については、世界のトップ・オーケストラであるベルリン・フィルからアジアの片隅の劇伴オケの指揮者に転落したリディアの人生を象徴するものとして考えられたのだと思います しかし、タイのオーケストラ、例えばバンコク交響楽団やその関係者からみれば、「バカにするな」ということかも知れません しかし日本でも、観客のコスプレは別として、プロのオーケストラが「ドラゴンクエスト・コンサート」をやったり、映画に合わせてライブで演奏したりして結構な集客力を誇っています 一概に「これはけしからん」と決めつけるのは難しいと思います

本作は2022年の第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ケイト・ブランシェットが「アイム・ノット・ゼア」に続き2度目のポルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。また、第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)を受賞しました それはそうでしょう 彼女がマーラーの「交響曲第5番」を指揮する姿だけを取り上げても、狂気とも言うべき迫力に満ちています

この映画はクラシック音楽愛好家にとっては必見です そうでない人は サイコスリラー映画として見てはどうでしょう

 

     

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