28日(日)その2.昨日午後、ミューザ川崎を後にして、初台駅に着いたのは13時10分。昼食を取ろうと「丸亀製麺」に行ったら「本日休業」の張り紙が 仕方ないのでコンビニでおにぎり2個と水を買って昼食を済ませ、開演30分前の13時30分に新国立劇場に入りました 私がなぜ急ぐかと言えば、プログラム冊子を事前にできる限り読んでおきたいからです しかもこの日のオペラ「サロメ」は途中休憩がないのでなおさらです 結果的には半分しか読めなかったので、残り半分は帰りの電車の中で読みました
ということで、昨日14時から新国立劇場「オペラパレス」でリヒャルト・シュトラウスのオペラ「サロメ」初日公演を観ました キャストはサロメ=アレックス・ペンダチャンスカ、ヘロデ=イアン・ストーレイ、ヘロディアス=ジェニファー・ラーモア、ヨハナーン=トマス・トマソン、ナラボート=鈴木准、ヘロディアスの小姓=加納悦子ほか 管弦楽=東京フィル、指揮=コンスタンティン・トリンクス、演出=アウグスト・エファーディングです
私が新国立オペラ「サロメ」をアウグスト・エファーディングの演出で観るのは2004年、2008年、2011年、2016年に次いで今回が5度目です
オペラ「サロメ」はリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)がオスカー・ワイルドの劇をもとに1903年から05年にかけて作曲、1905年にドレスデンで初演されました
物語の舞台は紀元30年頃の領主ヘロデの宮殿。ヘロデの寵愛を一身に受ける義理の娘サロメは、庭の古井戸に幽閉されているヨハナーンに関心を持ち、衛兵隊長ナラボートに彼を連れ出すよう命ずる ヨハナーンはサロメにキスを求められるが、彼は拒否して古井戸に戻る ヘロデから 何でも望みの褒美を与えると舞をせがまれたサロメは、7つのヴェールを裸身にまとい、妖艶な踊りを披露する 舞終えたサロメが要求した褒美はヨハナーンの首だった 逡巡するヘロデだったが約束を守り、ヨハナーンの首が撥ねられ銀の皿に乗せられてサロメに差し出される 死者の唇にキスをするサロメを見たヘロデはサロメを殺すように命じる
【注:以下は 演出に関わるコメントが含まれています】
同じ演出家による「サロメ」公演なので印象はさほど変わらないはずです しかし、今回は何かが違います それは何か
通常の公演は客席の照明が落とされ、指揮者が登場してオーケストラピットに入り、序奏なりの演奏を開始して幕が開きますが、本公演ではまず照明が落とされ、再び照明が点灯すると幕が開き、すでに指揮台にいる指揮者がタクトを振ります こういう演出はたまに見かけます。残忍な内容だけに開幕に拍手は相応しくないという判断でしょうか
ヘロデを歌ったイアン・ストーレイはイギリス生まれのテノールです 声が良く通り、サロメのとてつもない要求を断るに断れないヘロデ王を見事に演じました
ヘロディアス(ヘロデの妻、サロメの実母)を歌ったジェニファー・ラーモアはアメリカ出身のメゾソプラノです 強靭な歌唱力の持ち主で、異常なサロメの母親らしいエキセントリックな役柄を演じ、聴衆を圧倒しました
ヨハナーンを歌ったトマス・トマソンはアイルランド・レイキャビクの音楽学校で学び、英国王立音楽院卒業後にヨーロッパを中心に活躍しているバリトンです 威厳のある洗礼者ヨハネを力強い歌唱で歌い上げ、抜群の存在感を示しました
さて、問題はサロメを歌い演じたアレックス・ペンダチャンスカです ブルガリア・ソフィア生まれのソプラノですが、歌唱力に関しては声も美しく強靭な歌唱で申し分ありません しかし、これまで観てきたサロメ役の歌手と比べ、演技力の点で物足りなさを感じます ひと言で言うと、もっと「サロメ」らしい狂気と妖艶さがほしいということです 特に一番の見どころ「7つのヴェールの踊り」では、トリンクス ✕ 東京フィルの濃厚とも言える妖艶で狂気に満ちた音楽づくりに対し、あまりにも動きが静か過ぎて「どこまでも冷静なサロメ」を感じてしまいます これは彼女自身の責任というより、演出・衣裳・振付の問題かもしれません そう思いながらプログラム冊子を読んでいたら、「登場人物紹介」ページの「サロメ」に「シュトラウスは『理想とするサロメは、イゾルデの声を持つ、16歳の王女である』(!)と非公式に発言した」とあります 16歳の少女に「妖艶で狂気に満ちたサロメ」を求めるのは酷かな、と思い直しました しかし16歳で「どこまでも冷静なサロメ」もないだろうとも思います
特筆すべきはドイツ出身のコンスタンティン・トリンクス指揮東京フィルの演奏です 終始歌手に寄り添いながら緊張感に満ちた素晴らしい演奏を展開しました