人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

故 飯守泰次郎氏に関する井上道義氏の追悼インタビュー ~ 朝日新聞より / 「METライブビューイングアンコール2023」でリヒャルト・シュトラウス「カプリッチョ」を観る

2023年08月28日 06時28分15秒 | 日記

28日(月)。昨日の朝日新聞朝刊に、8月15日に亡くなった指揮者・飯守泰次郎さん(享年82歳)についての井上道義氏(76歳)のインタビュー記事「テクニック拒み  心で迫る音楽」が掲載されました インタビュアーは同社編集委員・吉田純子さんです 内容を超略すると以下の通りです

「僕は16歳で尾高忠明君(75)と同時期に齋藤秀雄先生に弟子入りし、そのまま先生のいる桐朋に進んだ その時の一番弟子がすでに才能を花開かせていた小澤征爾さん(87)で、その5つ下にいたのが秋山和慶さん(82)と飯守さんだった。斎藤先生は世界の舞台に立つ指揮者を育てるという夢を抱き、征爾さんに続く存在を探していた そんな先生が『指揮者にならないか』と自ら声をかけたのが飯守さんだった ピアノがうまく、初見演奏の能力もすごかった 本人はピアニストになりたかったようだが、斎藤先生が放っておかなかった。指揮の授業では、秋山さんと飯守さんがピアノ2台でいろんな作曲家の交響曲を弾いてくれるのだが、これがうまくてうまくて 秋山さんと飯守さんは双子のように仲が良かったけど、指揮者としての個性は対照的だった 秋山さんのタクトは、斎藤指揮法の基本を誰よりも忠実に受け継いでいる でも飯守さんは、『でも、先生』とあからさまに先生に反抗していた 『君の棒が悪いからオケが合わない』と叱られると、『音楽の作り方は楽員たちが楽譜を見て自ら考えるもので、棒で示すものじゃない』と言い返す どちらが正しいとも違うとも、僕は言うつもりはない。ただ飯守さんは、斎藤先生の職人としての生き方に『音楽』を感じなかったんじゃないかな 音楽は理屈じゃない。心で伝えるものだと信じたかったのかもしれない いずれにせよ先生への反発が、音楽に対する、飯守さんの信仰のような帰依の礎になったのは確かだと思う 飯守さんの手の動きは決してわかりやすくなかったから、若い頃はあまり仕事がこなかったみたいだけど、代わりにワーグナーの殿堂、独バイロイト音楽祭の音楽助手として20年ものキャリアを積んだ ピアノを弾きながら歌手たちにドイツ語を教えたり、発声の指導をしたり、信じられないことだ とにかくワーグナーが好きでたまらないんですね。ワーグナーへの尊敬に打ち震えながら、一音一音にこめられた思いを妥協なく言葉で伝えようとする。結果としてリハーサルにすごく時間がかかるから、飯守さんの本領は、プロよりもアマチュアのオーケストラで発揮されることの方が多かったんじゃないかな 飯守さんは覚悟の上で、共通言語として与えられたテクニックを拒み、心ひとつで音楽に迫り続けようとしたのだと思う

初めて聞くことばかりで「そうだったのか」と新鮮に感じました とくに飯守氏は斎藤先生に反発し、それをエネルギーに変えて独自の指揮法を確立していったことに感銘を受けました 「飯守さんの手の動きは決してわかりやすくなかった」というのは、実際にコンサートで彼の指揮を見たことがある人は理解できるでしょう 私も東京シティ・フィルのコンサートで「楽員は、あれでよく棒に合わせられるなあ」と感心したことが少なくありませんでした また、「プロよりもアマチュアのオーケストラで発揮されることの方が多かったんじゃないか」というのは、「新交響楽団」のことを指していると思われます アマチュア・オケなので なおさら、「よくあのタクトについていけたものだな」とあらためて感心します

かつて、ベルリンフィルの常任指揮者を務めた巨匠フルトヴェングラーは、指揮が分かりずらく「振ると面くらう」と誰かが言ったとかいうエピソードを聞いたことがありますが、飯守氏の指揮も、振ると面くらったのではないかと想像します しかし、オケから出てくる音楽には、プロであれアマであれ いつも説得力がありました

ということで、わが家に来てから今日で3149日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は27日までに、ウクライナでの特別軍事作戦に自発的に加わる義勇兵らに対し、国家に献身し司令官の命令に服するとの誓約を義務付ける大統領令に署名したが、民間軍事会社ワグネルの戦闘員を念頭に、国防省の統制を強化して事実上、軍に編入する狙いとみられる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     死傷者が圧倒的に多いからね!ワグネル戦闘員はプリゴジンの仇を討たないのか?

 

         

 

昨日、東銀座の東劇で「METライブビューイングアンコール2023」のうちリヒャルト・シュトラウス「カプリッチョ」を観ました これは2011年4月23日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 出演は マドレーヌ=ルネ・フレミング、フラマン=ジョセフ・カイザー、オリヴィエ=ラッセル・フローン、ラ・ローシュ=ピーター・ローズ、伯爵=モルテン・フランク・ラルセン、クレーロン=サラ・コノリー、イタリア人歌手=バリー・バンクス、オルガ・マカリナ。管弦楽=メトロポリタン歌劇場管弦楽団、指揮=アンドリュー・デイビス、演出=ジョン・コックスです

 

     

 

「カプリッチョ」はリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)が1940年から翌41年にかけて作曲、1942年にミュンヘンで初演された彼の最後のオペラです

詩人のオリヴィエと音楽家フラマンは、若くして夫を亡くした伯爵令嬢マドレーヌにそろって恋している オリヴィエとフラマンは、マドレーヌが2人のうちどちらを選ぶかを言い争ううちに、「言葉」と「音楽」はどちらが重要かの議論に発展する マドレーヌの気持ちが揺れ動く中、2人はそれぞれ愛を告白する 返事を迫るうちに女優クレーロンや劇場支配人ラ・ローシュも巻き込み、二重唱、四重唱、八重唱と様々なアンサンブルを展開していく マドレーヌは、みんなでオペラを作ることを提案し、彼女の兄である伯爵は「今までの『言葉と音楽』をめぐる騒動を題材にオペラを作ったらどうか」と提案する しかし、マドレーヌが二人のうちどちらかを選ばないとオペラは完結しない。さてマドレーヌはどんな結論を出すのか

 

     

 

リヒャルト・シュトラウスのオペラと言えば「ばらの騎士」です 作曲家としてのR.シュトラウスはあまり好きではないのですが、このオペラだけは大好きで、CD等は8セット揃えています しかし、他の彼のオペラにはそれほど心を動かされません この「カプリッチョ」も、観たり聴いたりしたことがあるのかさえあやふやです それでもルネ・フレミングがヒロインのマドレーヌを歌うというので観ることにしました

事前によく調べずに東劇に行って、タイムスケジュール表を見たら、全1幕・2時間36分で休憩なしとなっていました てっきり3時間以上かかり休憩時間があるものだと思い込んでいて、お茶とサンドイッチを買って行ってしまいました

「カプリッチョ」というのは、諧謔的で気まぐれな性格を持った小品に付けられた名称です リヒャルト・シュトラウスらしい諧謔的なタイトルです

開演前のジョイス・ディドナートによるインタビューで「R.シュトラウスのこのオペラをどう捉えていますか?」と問われ、フレミングは「彼は第二次世界大戦中に活躍した作曲家でした。ドイツ国内に留まって作曲したわけですが、本来ならドイツ礼賛オペラを書かなければならないのに、フランスを舞台にしたオペラを書きました それだって勇気のいることだったと思います。オペラは、戦時下では身の回りの日常を描くことくらいしかできなかったのです そういう意味では苦労したのではないかと思います」と答えていました。METの看板ソプラノ歌手ともなると、オペラの時代背景や作曲家の境遇にも思いを馳せて役を演じ歌っているのだということをあらためて認識しました

幕開けは弦楽六重奏によって美しいアンサンブルが奏でられますが、カメラ映像を見ると、オーケストラピット内のオケの配置は、左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとっていることが分かります

正直言って、前半は退屈で眠気との闘いでした アリアらしいアリアがなく、レチタティーヴォ(叙唱)やアコンパニャート(伴奏付き叙唱)を中心に物語が進行していくので、飽きてしまうのです 中盤のバレエシーンあたりでやっと目が覚めてきました

「さすがはMET」と思わせる充実した歌手陣です しかし、このオペラは何といっても伯爵令嬢マドレーヌを歌ったルネ・フレミングです 終盤で鏡に向かって歌う 二人のうちどちらを取るか悩む長いアリアをはじめ、ビロードのような美しいソプラノで聴衆を魅了しました

さて、最終場面でマドレーヌは結論を出します。彼女は1枚の便箋にメモを走り書きします そこに結論が書かれているはずですが、観客にはその内容が分かりません まさに”カプリッチョ”に相応しい諧謔的なエンディングです

東劇での「カプリッチョ」の今後の上映は、8月31日(木)15:20、9月4日(月)19:10、同25日(月)19:00です

         

METライブビューイング2023-24シーズンのパンフレットが出来ました 新シーズンは12月8日から来年6月27日まで、全9演目が上映されます

 

     

     

     

     


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