人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

最高のソプラノ~ノルマ・ファンティー二の「トスカ」を観る~新国立劇場 

2012年11月12日 07時00分52秒 | 日記

12日(月).昨日,初台の新国立劇場でプッチーニの歌劇「トスカ」のプルミエ公演を観ました ヒロインのトスカをノルマ・ファンティー二が歌います.私は数年前に,新国立劇場で彼女が歌うトスカを初めて聴いてすっかり魅了されてしまい,彼女が日本で公演すると聞いては聴きに行きました 新国立の「アイーダ」タイトルロール,「仮面舞踏会」アメーリア,「イル・トロヴァトーレ」レオノーラ,「アンドレア・シェニエ」マッダレーナはもちろんのこと,一昨年10月の日本初の「ソプラノ・リサイタル」,昨年10月のプラハ国立歌劇場の「トスカ」と聴ける限りすべての公演を聴きました         

今回のキャストは,ノルマ・ファンティー二のほかに,カヴァラドッシにサイモン・オニール,スカルピアにセンヒョン・コー,アンジェロッティに谷友博,スポレッタに松浦健ほかで,バックは沼尻竜典指揮東京フィル,演出はアントネッロ・マダウ=ディアツです.今回の演出は2000年に初めて公開したものの何回目かのものですが,何度観ても飽きない演出です

 

          

 

会場はほぼ満席です.自席のすぐ前の席に見たような白髪の紳士が座っています.休憩時間に確かめると,指揮者の飯守泰次郎さんでした プログラムに載っている新国立劇場運営財団名簿を見ると”芸術参与”として飯守氏の名前が載っていました.この日はプレミエ(初日)公演だったので観にこられたのでしょう.第2幕終了までご覧になって帰られました

私が「トスカ」で好きな場面は3か所あります.まず最初は第1幕のフィナーレです.スカルピアが「行け!トスカ」を歌う中,教会の鐘やオルガンに伴われて聖歌が合唱で歌われ,最高潮に達する場面です このフィナーレは同じ作曲者の「トゥーランドット」第1幕のフィナーレに匹敵する華麗で壮大な音楽です

次は,やはり何と言っても第2幕でトスカが歌うアリア「歌に生き,恋に生き」から,トスカがスカルピアをナイフで突き刺して去って行くまでの場面です アリアでは高度な歌唱力が,その後のフィナーレに向けては無言の演技力が求められる重要な場面です ノルマ・ファンティー二はこの両方の力を備えています.彼女の歌う「歌に生き,恋に生き」は生で5~6回聴きましたが,何度聴いても感動します

 

          

 

 幕間のカーテンコールに出てくるノルマ・ファンティー二は,最初,笑顔が見えません.それは直前まで演じていたトスカに成りきっているからです 手をつなぐ隣のサイモン・オニールやセンヒョン・コーに促されて,やっと我に返って笑顔を見せるのです いつもそうなのです

3か所目は第3幕のフィナーレです.これは歌よりも演出の素晴らしさが光る場面です 兵士に迫られたトスカが城壁から身を躍らせて落ちていくのですが,通常の演出では,歌手がスカートの裾をたくし上げて,足から”どっこいしょ”と飛び降りるのですが,この演出では,トスカが城壁に立って,スカーフを持った右手を挙げて,そのまま舞台奥の下をめがけて倒れ込んでいくのです この演出を初めて見た時は思わず息を飲みました.凄い演出だと思いました.ノルマ・ファンティー二のトスカは,この演出とともに記憶されています

全3幕が終わりカーテンコールになったのですが,指揮者の沼尻竜典が舞台に登場するや,3階席辺りからブラボーに紛れて大きなブーイングが出ました 私は彼の指揮はすごく良かったと思っていたので,これは意外でした.どこが悪かったのかさっぱり分かりませんでした.が,家に帰ってこの日の公演をもう一度振り返ってみて,ハッと気が付きました

それは,第3幕でカヴァラドッシが告別のアリア「星は光りぬ」を歌う場面で,アリアが終わってもオーケストラの伴奏が続き,間をおかずに次の場面に移ったため,せっかくのサイモン・オニールの熱唱に拍手とブラボーを贈りたかった聴衆が,そのチャンスを与えられなかったためではないか,と思ったのです それ以外に考えられません.それにしても近来まれに見るブーイングでした.近くの人はドンビキしたのではないでしょうか  

総じて今回のトスカは素晴らしい出来だったと思います スカルピア役のセンヒョン・コーは歌は申し分ありませんが,もう少し悪役に徹するふてぶてしさがあっても良かったと思います カヴァラドッシ役のサイモン・オニールも歌は良いのですが,もう少しダイエットした方がいいかもしれませんね,関係ないけど ノルマ・ファンティー二はいつでも全力投球で,歌も演技も最高でした

                         

劇場入り口で配られていたチラシの中に,トリノ王立歌劇場来日公演「トスカ」にノルマ・ファンティー二が出演するというチラシが入っていました.来年11月29日(金),12月2日(月)東京文化会館とのこと.これは聴き逃せません

 

          

 

 閑話休題  

 

2日(金)から続いてきたコンサート通いは昨日の「トスカ」をもって,”10日間連続自己新記録”を達成して幕を閉じました あっという間の10日間でした.正直言って疲れました

2日:小菅優+カメラ―タ・ザルツブルク(1) モーツアルト「ピアノ協奏曲第21番,第23番」ほか.

3日:小菅優+カメラ―タ・ザルブルク(2)  モーツアルト「ピアノ協奏曲第20番,25番」ほか.

4日:METライブ「愛の妙薬」       アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)ほか.

5日:アリス・沙良・オット:ピアノリサイタル  ムソルグスキー「展覧会の絵」ほか.

6日:ミューズたちの饗宴 小川里美他   ベッリーニ「ノルマ」~清らかな女神よ,ほか.

7日:ダン・タイ・ソン+新日本フィル(1)  ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番,2番,3番」

8日:ダン・タイ・ソン+新日本フィル(2)  ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4,5番」   

9日:萩原麻未+フィルハーモニア台湾  グリーグ「ピアノ協奏曲イ短調」ほか.

10日:ラドゥロヴィチ+東京交響楽団   メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」「ホ短調」

11日:新国立オペラ「トスカ」     ノルマ・ファンティー二(ソプラノ)ほか.

今後この記録が破れるかどうか分かりませんが,『音楽は生で聴くことに意義がある』という信念のもと,クラシック音楽なら何でも聴いてやろうという意欲だけは,今後も持ち続けていきたいと思っています

 

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