人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

エルバート・ハバード & アンドリュー・S・ローワン「ガルシアへの手紙」を読む ~ 物事に積極的に取り組む「自主性」と課題に挑む「行動力」の重要性を説く

2023年03月21日 06時41分35秒 | 日記

21日(火)。日テレの「リバーサルオーケストラ」の最終回を見損なって残念に思っていたら、reilaさんが「TVer で無料で見られます」とコメントして下さったので、さっそくパソコンでTVerを検索して観ました 相変わらずの強引なストーリー展開には苦笑しましたが、エンタメなので許せるかな、と思い直しました 音楽はほとんどオープニング・テーマのチャイコフスキー「交響曲第5番」に特化していましたが、この曲は素晴らしいですね まったく同じテーマのメロディーが第1楽章では暗く沈んだ音楽として現れ、第4楽章では勝利の音楽として登場するのですから こういうところにチャイコフスキーの天才を感じます 超面白い内容だけに10回だけでは短かすぎたと思いますが、この放送によって一人でも多くの人がクラシック音楽に馴染んで、コンサートを聴きに来てくれるようになればいいな、と思います

ということで、わが家に来てから今日で2989日目を迎え、高市早苗経済保障担当相は20日午後の参院予算委員会で、放送法の行政文書をめぐる質疑で野党議員に「信用できないならもう質問しないで」などとした発言を撤回した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     この人 発言は撤回したけど 謝罪はしていない 表向きだけで 反省していないようだ

 

         

 

昨日、夕食に「エビの肉巻き」「生野菜サラダ」「ジャガイモの味噌汁」を作りました 「海老の肉巻き」を作るのは2度目ですが、今回も美味しく出来ました

 

     

 

         

 

エルバート・ハバード & アンドリュー・S・ローワン「ガルシアへの手紙」(角川文庫)を読み終わりました

エルバート・ハバードは1856年生まれ、アメリカの思想家・作家・教育者。1915年に乗船中のイギリス客船がドイツの潜水艦Uボートに撃沈され死亡。アンドリュー・S・ローワンは1857年生まれ。アメリカの軍人。1898年の米西戦争の英雄。1943年没

「ガルシアへの手紙」は著者のエルバート・ハバードが「1時間で書き上げた」という話もあるくらいの短い物語です 文庫本にしてたったの13ページしかありません

 

     

 

物語は「アメリカースペイン戦争」が起きた1898年頃の出来事が基になっています アメリカの目と鼻の先にキューバがありますが、当時はスペイン領でした。そんな時キューバでスペインからの独立運動が起きます 当然、アメリカはそれを全面的にサポートすることになり、これがスペインとの戦争へと発展していくことになります 当時のアメリカ大統領・マッキンレーは、キューバの独立運動のリーダーであるガルシア将軍とどうしてもコンタクトを取りたかった しかし、今から120年も前には当然、ケータイやスマホなどの通信機器に頼ることが出来なかった そもそもガルシアがどこにいるのかさえ、誰も知らなかったのだ その時、ある人物が「ローワンという男なら、ガルシアへ大統領の書簡を届けることが出来るだろう」と大統領に推薦します。これを受け、ローワンが呼ばれることになりました ローワンは大統領からの書簡を受け取ると、そのままボートに乗り、キューバに赴き、敵陣に潜入し、4週間後には任務を全うし無事生還したのです

物語はこれだけのことです しかし、ハバードがあえてこの物語を書こうと思ったのは、「ガルシアへの手紙」の内容ではなく、敵国キューバに乗り込んで どこにいるのかも分からないガルシアを自ら探し出してその手紙を手渡したばかりでなく、無事に大統領の元に帰ってきた「自主性」と「行動力」に感銘を受けたからです ローワンは命がけの任務であるにも関わらず、指令に対して「ムリ!無理!ムリ!」と拒否したり、「ガルシアはどんな人物で、キューバのどの辺にいるのか?」とか質問することもなく、すぐに目的を達成するための行動に移ったのです

この物語は世界中の多くの人たちの共感を得て、100年以上にわたり読み継がれ、これまでに1億人以上の人々が読んだと言われています

気になるのは「ローワンは いったいどうやってガルシア将軍を見つけ出し、どのように生還したのか」ということです    これについてはローワンの手記「ガルシアへの手紙を、いかに届けたか」に具体的に書かれています

上記を含めて、本書は次のような構成になっています

第1章『ガルシアへの手紙』:エルバート・ハバード

第2章「解説『ガルシアへの手紙』から学べること」:三浦広

第3章「ローワンの手記『ガルシアへの手紙を、いかに届けたか』」:アンドリュー・S・ローワン

第4章「解説 ローワンの手記から学ぶべきこと」:三浦広

三浦広氏は第2章「解説『ガルシアへの手紙』から学べること」の中で「成功する人の条件は次の3点だ」と書いています

①気概と熱意がある

②明るく、前向きに生きるという覚悟がある

③他人への思いやりと感謝がある

また、「できる人」のさらなる条件は次のようなものだ、と書いています

①会社の方向、組織の目指しているところをよく知っている

②自分の位置、役割をはずさない

③自分に厳しく、自分をコントロールできる

④反省できる

⑤素直である

他方、仕事のできない人は、先の3原則が守れない人であり、次のようなタイプの人である、と書いています

①言われない限り、自分の仕事を作らない

②言い訳ばかりする

③相手によって態度を変える

④他人の目ばかり気にしている

⑤他人に「ありがとう」と言えない

⑥他人を好きになれない

⑦新しいことに対して拒否反応を起こす

⑧平気で人を利用する

上記を踏まえて、三浦氏は「(著者のエルバート・ハバードは)一人でも多くの人に、ローワンのようにできる人になってもらいたいとの願いを込めて、この教訓を本にしたのだ」とコメントしています

日本でも「自己啓発セミナー」が流行った時期がありましたが、そんなものに大金をかけるよりも、800円(税別)で角川文庫の本書を買って読む方が、よほど安価で役に立つと思います サラリーマン、経営者、自営業など職種を問わず、広くお薦めします

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佐藤俊介 ✕ 東京交響楽団でシュポア「ヴァイオリン協奏曲第8番」、ベートーヴェン「交響曲第1番」、メンデルスゾーン「弦楽のための交響曲第8番」を聴く ~ 水谷コンマス、ラストステージ

2023年03月20日 02時35分00秒 | 日記

20日(月)。わが家に来てから今日で2988日目を迎え、トランプ米前大統領は18日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「ニューヨークのマンハッタン地区検察官に来週火曜日に逮捕される」と投稿し、支持者に対して抗議するよう呼び掛けたが、地区検察官は、トランプ氏が2016年の大統領選中に元ポルノ女優に「口止め料」を支払った問題をめぐって捜査を続けており、米メディアは「捜査が大詰めを迎えている」と報じている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     またしても支持者を扇動して 自分の立場を有利にしようとしている 懲りない男だ

 

         

 

18日(土)夜、サントリホールで東京交響楽団「第708回定期演奏会」を聴きました プログラムは①シュポア「ヴァイオリン協奏曲第8番 イ短調 作品47 ”劇唱の形式で” 」、②ベートーヴェン「交響曲第1番 ハ長調 作品21」、③メンデルスゾーン「弦楽のための交響曲第8番 ニ長調」(管弦楽版)です 指揮&ヴァイオリン独奏は佐藤俊介です

佐藤俊介は2010年、第17回ヨハン・セバスティアン・バッハ国際コンクールで第2位および聴衆賞を受賞、2018年6月からオランダ・バッハ協会第6代音楽監督に就任しました(今年6月まで)

 

     

 

オケは10型ですが、変わった配置です 弦楽器は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれますが、ヴィオラも左右に分かれ、その後ろにチェロ(5)が横一列に配置され、コントラバスが左右に3人ずつ分かれてスタンバイします ”完全対抗配置”とでもいうようなスタイルです。コンマスはこの公演を最後に退団する水谷晃、その隣は”友情出演”のコンマス、グレブ・ニキティンです

1曲目はシュポア「ヴァイオリン協奏曲第8番 イ短調 作品47 ”劇唱の形式で” 」です この曲はドイツの作曲家ルイ・シュポア(1784-1859)が1816年に作曲、同年9月27日にミラノ・スカラ座でシュポアの独奏により初演されました 第1楽章「レチタティーヴォ:アレグロ・モルト」、第2楽章「アダージョ ~ レチタティーヴォ:アンダンテ」、第3楽章「アレグロ・モデラート」の3楽章から成りますが、続けて演奏されます 奥田佳道氏のプログラムノートによると、シュポアは1820年頃に『あご当て』を考案したヴァイオリン近代奏法の始祖とのことです

佐藤俊介が登場し弾き振りで第1楽章の演奏に入ります サブタイトル”劇場の形式で”の通り、独奏ヴァイオリンがオケとの掛け合いによって、まるでオペラの登場人物が歌うレチタティーヴォ(叙唱)とアリアのように演奏します ソリストと弦楽奏者はノンビブラートのピリオド(古楽器)奏法で演奏するため、歯切れの良い透明感のある美しい音が印象に残ります メリハリの利いた心地よい演奏でした

2曲目はベートーヴェン「交響曲第1番 ハ長調 作品21」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1799年から1800年にかけて作曲、1800年4月2日にウィーンのブルク劇場で初演されました 第1楽章「アダージョ・モルト ~ アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アンダンテ・カンタービレ・コン・モート」、第3楽章「メヌエット:アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アダージョ ~ アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります

オケをよく見るとホルンとトランペットはバルブのない古楽器(ナチュラル)を使用しています

佐藤の弾き振りで第1楽章に入ります 佐藤のリードにより強いアクセントによるメリハリの利いた演奏が繰り広げられます 荒絵理子のオーボエ、相澤政宏のフルート、福士マリ子のファゴットが素晴らしい 本当は今月末で退団する荒木奏美のオーボエを聴きたかったのですが、仕方ありません 第3楽章のメヌエットはこれまで聴いたことのない高速演奏で度肝を抜かれました 躍動感あふれる素晴らしい演奏でした 第4楽章では、佐藤と水谷が向かい合って掛け合いをする姿が何とも楽しそうでした 全4楽章を聴き終わって、まるで生まれたばかりの曲の初演を聴いたような新鮮な驚きを感じました

 

     

 

プログラム後半はメンデルスゾーン「弦楽のための交響曲第8番 ニ長調」(管弦楽版)です    この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)が1821年から1823年にかけて作曲した「弦楽のための交響曲」全12作のうちの1曲で、1822年11月6日から27日にかけて作曲されました メンデルスゾーンはこの曲に自信を持ったようで、同年12月30日に管弦楽用に編曲、翌1823年4月26日に初演されました   第1楽章「アダージョ・エ・グラーヴェ・アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット:アレグロ・モルト・トリオ:プレスト」、第4楽章「アレグロ・モルト」の4楽章から成ります ここで気が付くのは、各楽章の速度指定がベートーヴェン「交響曲第1番」とまったく同じだということです さらに、星野宏美氏のプログラムノートによれば、「弦楽オーケストラにフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット各2本、ティンパニという楽器構成はベートーヴェンの第1番と同じ」とのことです いかに若きメンデルスゾーンがベートーヴェンの最初の交響曲を意識していたかが分かります

佐藤は、この曲では指揮に専念します。第1楽章が重心の低い音楽で開始されますが、間もなく躍動感あふれるメロディーが取って代わります この落差が魅力です 第2楽章ではヴィオラの青木篤子、西村眞紀、武生直子の3人による演奏がとても印象的でした 第3楽章のメヌエットはベートーヴェンと同じように高速演奏による溌溂とした演奏が繰り広げられましたが、トリオの部分では木管楽器群の演奏が素晴らしかった 第4楽章は快速テンポにより愉悦感に満ちた音楽が展開、今月末で退団する大野雄太のナチュラルホルンの素晴らしい演奏もあり、爽快なフィナーレを飾りました

演奏を聴き終わって思うのは「この曲、本当に13歳の少年が作ったのか 」ということです 「モーツアルトの再来」と騒がれたのも無理はありません

満場の拍手のなか、カーテンコールが繰り返されましたが、弾き振りの佐藤俊介とともに、今月末で退団する水谷晃と大野雄太の両氏にも惜しみのない拍手が送られました

     

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高関健 ✕ 佐藤晴真 ✕ 東京シティ・フィルでカバレフスキー「チェロ協奏曲第1番」、ショスタコーヴィチ「交響曲第7番”レニングラード”」を聴く ~ 第359回定期演奏会

2023年03月19日 06時47分10秒 | 日記

19日(日)。わが家に来てから今日で2987日目を迎え、国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ)は17日、ウクライナ侵攻をめぐって、ロシア軍がウクライナの占領地から違法に子どもを連れ去った戦争犯罪の容疑の責任があるとして、ロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     主権国家への侵略、民間人への強盗殺人、子どもの誘拐、悪いことやりたい放題!

     

         

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールで東京シティ・フィル「第359回定期演奏会」を聴きました プログラムは①カバレフスキー「チェロ協奏曲第1番 ト短調 作品49」、②ショスタコーヴィチ「交響曲第7番 ハ長調 作品60 ”レニングラード”」です 演奏は①のチェロ独奏=佐藤晴真、指揮=高関健です

今シーズンもこの日で終わり、1階16列12番の席ともこれでお別れです 来シーズンは同じセンターブロックの右方向の席に移ります

かなりの客入りです 佐藤晴真人気か、はたまた高関のショスタコーヴィッチ目当てか

プレトークで高関氏は、「この日のプログラムは昨年2月のロシアのウクライナ侵攻より前に決定していた まさかこんな情勢になるとは思いもしなかった 現在の情勢を受けて、ショスタコーヴィチの交響曲第7番を、曲が曲だけに、何も考えずに演奏することは難しいと告白せざるを得ない しかし、楽譜に忠実に純音楽作品として演奏したいと思う 前日、全曲通して演奏したが、演奏が終わった途端、疲れ果ててしまった」と語りました。この曲はショスタコーヴィチが作曲した全15曲の交響曲の中で最長の作品で、演奏時間にして約80分かかる大曲です さて、どのような演奏になるのでしょうか

 

     

 

オケは10型で左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置。コンマスは荒井英治です

1曲目はカバレフスキー「チェロ協奏曲第1番 ト短調 作品49」です この曲はドミトリー・カバレフスキー(1904-87)が1949年に作曲しました 柴田克彦氏のプログラムノートによると、「カバレフスキーは、旧ソ連の”社会主義リアリズム”を佳き形で具現化した作曲家。モスクワ音楽院で学び、1932年以降は同音楽院で教鞭をとりながら創作活動を展開した」とのことです この曲は「ソヴィエトの青少年に捧げる協奏曲3部作」の第2作として書かれました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゴ・モルト・エスプレッシーヴォ」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります

チェロ独奏の佐藤晴真は2018年にルトスワフスキ国際チェロ・コンクールで優勝、さらに2019年にミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門で日本人として初めて優勝を果たしました 現在、ベルリン芸術大学でJ=P.マインツ氏に師事しています

高関の指揮で第1楽章に入ります 佐藤の独奏チェロの軽快な演奏が展開します なるほど社会主義リアリズムに則った作品だけに聴きやすい音楽です 白眉は第2楽章のカデンツァです かなり技巧的な印象を受けますが、佐藤は難しさを感じさせずサラリと演奏します 第3楽章はロシア舞曲風の主題が繰り広げられますが、最後は荘重に終結します 聴きごたえのある素晴らしい演奏でした

佐藤はアンコールにJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」から第4曲「サラバンド」をしみじみと演奏、聴衆を黙らせました

 

     

 

プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲第7番 ハ長調 作品60 ”レニングラード”」です この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1941年に戦火のレニングラードで愛国心を込めて作曲、1942年にモスクワの東800キロにある町クイビシェフで初演されました 第1楽章「モデラート」、第2楽章「モデラート・ポコ・アレグレット」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります 作曲者は当初、第1楽章に「戦争」、第2楽章に「回想」、第3楽章に「広大な祖国」、第4楽章に「勝利」という標題を付けていましたが、最終的に採用しませんでした

オケが14型に拡大し、高関の指揮で第1楽章の演奏に入ります 冒頭はオケの総力を挙げての勇壮な演奏により「人間の主題」が力強く展開します しばらくすると、スネアドラムの連打の音が小さく聴こえてきて「戦争の主題」が竹山愛のフルートによって奏でられ、ピッコロ、オーボエ、ファゴットへとリレーされていきます まるでラヴェルの「ボレロ」のような展開です このテーマのリレーの間、重低音で奏でられるコントラバスの演奏が不気味です このテーマは狂暴な形でクライマックスを迎え爆発しますが、その後ファゴットの長いモノローグが演奏されます この演奏が寂寥感に満ちていて素晴らしかった 第2楽章の冒頭は第2ヴァイオリンから入り、その後第1ヴァイオリンが絡んできますが、ヴァイオリン・セクションが右と左に分かれて対面で向かい合う「対抗配置」が功を奏し、弦楽による素晴らしいアンサンブルが展開しました 第3楽章でも弦楽合奏によるコラール風のテーマの演奏が美しく響きました 切れ目なく続く第4楽章は、咆哮する金管・木管楽器群、渾身の弦楽器群、炸裂する打楽器群の総力を挙げてのスケールの大きな演奏により、音の大伽藍が築き上げられました

終演とともに満場の拍手が高関と東京シティ・フィルの面々を包み込みました 高関は、一番最初にフルート首席の竹山愛を立たせて健闘を讃え、彼女のシティ・フィルにおけるラストステージに華を添えました

高関✕東京シティ・フィルは80分の長丁場にも関わらず、途中で弛緩することなく、終始集中力に満ちたアグレッシブな演奏を展開、聴衆をショスタコーヴィチの世界に誘いました

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大植英次 ✕ 小曽根真 ✕ 新日本フィルで小曽根真「ピアノ協奏曲『SUMIDA』」、ブルックナー「交響曲第9番」他を聴く~第13回すみだクラシックへの扉 / どうした?東響!

2023年03月18日 07時02分24秒 | 日記

18日(土)。東京交響楽団のホームページによると、3月31日付で、荒木奏美(首席オーボエ)、大野雄太(首席ホルン)、ジョナサン・ハミル(首席ホルン)、影山梨乃(首席ハープ)の4名が退団します すでに同日付でコンマスの水谷晃氏が退団することが発表されているので、3月末に、一気にコンマスと首席奏者4人が退団することになります とくにコンマスとオーボエはオーケストラの要とでもいうべき存在なので、影響が大きいのではないかと思います また、ホルンは首席が2人いなくなります 「いっぺんに5人の退団は異常ではないか?」「何かあったのか、東響?」と疑問が浮かびます まさか、ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)がらみじゃないよね 荒木奏美さんはすでにJNOのメンバーだし、やっぱり違うか いずれにしても、廣岡克隆楽団長にとって初めての大きな試練になりそうです

また、ツイッター情報によると、N響のゲスト・コンサートマスター白井圭氏が3月末で契約期間満了で退団する、さらに東京シティ・フィルの首席フルート奏者の竹山愛さんが3月末で退団するーという人事もあるようです とくに竹山愛さんはシティ・フィルの”管楽器の顔”のような存在なので、退団が本当なら残念です 今日の定期演奏会が団員として最後の出演となるのかもしれません 3月末人事はまだあるのでしょうか

ということで、わが家に来てから今日で2986日目を迎え、ウクライナ侵攻を続けるロシアの違法行為をめぐって、国連人権理事会が設置した独立調査委員会は16日、民間人に対する無差別攻撃や殺害、性的暴行、子どもの連れ去りなど、ロシア軍による広範囲の戦争犯罪があったとする調査報告書を公表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ”犯罪のデパート” ロシア軍の蛮行をロシア国民に知らしめるには どうしたらいい?

 

         

 

昨日、夕食に2週間に一度のローテにより「鶏の唐揚げ」を作りました 今回は栗原はるみ先生のレシピによる「うまみ醤油」に漬ける時間が10分と短かったにも関わらず、とても美味しくできました 毎回、鶏肉の大きさに応じて揚げる時間を変えていますが、今回は一つ一つが大きめだったので3分半✕2度揚げしています

 

     

 

          

 

昨日、すみだトリフォニーホールで「第13回すみだクラシックへの扉」定期演奏会を聴きました プログラムは①小曽根真「ピアノ協奏曲『SUMIDA』」(新日本フィル創立50周年記念委嘱作品/世界初演)、②ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より「エルザの大聖堂への行進」、③ブルックナー「交響曲第9番 ニ短調 WAB109」(ハース版)です 演奏は①のピアノ独奏=小曽根真、指揮=大阪フィル桂冠指揮者、ハノーファー北ドイツ放送フィル名誉指揮者・大植英次です

プログラムは当初、①と②が逆でしたが、リハーサルの過程で上記の順番に変更となりました

 

     

 

拍手の中、楽員が配置に着きます 弦は14型で左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの新日本フィルの並び。ステージ中央にピアノが置かれ、ヴィオラの手前にベースとドラムスが配置され、ピアノトリオを構成します コンマスは崔文洙、隣はアシスタントコンマス・立上舞です

前日の公開リハーサルでは弦楽器群はマスクを着用していましたが、本番は全員がノーマスクで臨みました

1曲目は新日本フィルが創立50周年を記念してジャズ・ピアニストの小曽根真に委嘱した「ピアノ協奏曲『SUMIDA』」の世界初演です この曲は小曽根真(1961~)の3番目のピアノ協奏曲に当たりますが、第2番までが弦楽とピアノのための協奏曲だったのに対し、本作は初のピアノと管弦楽(+ベース、ドラムス)のための協奏曲となっています

この日の午前中に隣のホテルで開かれた小室敬幸氏による「60分ワンコイン講座」での解説によると、小曽根氏は作曲にあたり、新日本フィルのヴィオラ奏者・吉鶴洋一氏に墨田区を案内され、「すみだ郷土文化資料館」で触れた関東大震災(1923年9月1日)や東京大空襲(1945年3月10日)が強く印象に残り、また「両国」の名前の由来に感銘を受けたとのことで、そうしたことが作曲に反映しているようです 曲は2部構成となっており、第1部は「両国 Two  Countries」の由来を音楽で描くことから開始されます そして、下総国(現在の千葉県)と武蔵国(現在の東京都等)との交流が描かれます 第2部は様々な歴史を経て悲しみを抱えながらも復興を遂げるエネルギーを描いています

大植の指揮で第1部の演奏に入ります 小曽根の独奏ピアノとオーケストラとのコラボが続き、ピアノとベース&ドラムスによるトリオの演奏が挟まれ、一連の叙事詩を描いていきます そして、震災や空襲の惨禍を描くかのように悲劇的な大音響で第1部を閉じます ピアノトリオの即興演奏を経て第2部に移りますが、小曽根のインプロビゼーションが素晴らしい 曲想は徐々に明るさを増し、エネルギーに満ちた音楽が展開します そしてオーケストラとピアノトリオの総力を挙げての強奏で歓喜のクライマックスが築き上げられ、最後は静かに幕を閉じます この終わり方がスマートで良かったと思います

世界初演なので、もちろん初めて聴きましたが、素晴らしい音楽です そして演奏も素晴らしかった 小室氏が「この曲はジャズミュージシャンが作曲したピアノ協奏曲の中でも1,2位を争う素晴らしい作品だと思う」と語っていましたが、決して誇張ではありませんでした

カーテンコールが繰り返され、オケと共にベースとドラムスのプレイヤー2人も満場の拍手を浴びます 小曽根はピアノの蓋を閉じて、オケ全体が見渡せるようにしました こういう気配りは、他の演奏家で見たことがありません 小曽根はアンコールにオリジナル曲「Reborn」を鮮やかに演奏、再び大きな喝さいを浴びました

新日本フィルは最も相応しいミュージシャンに記念すべき作品の作曲を依頼したと思います 世界初演、大成功です

 

     

 

新日本フィルの会員で、フェスタサマーミューザや都民芸術フェスティバルでいつもお目にかかる川崎市在住のSさんが、昨年末に胃がんの手術をすると聞いていたので気になっていました 今年に入って、どこのコンサート会場でも見かけないので、休憩時間にパトロネージュ部の登原さんに消息が分かるかどうか尋ねてみました 彼女の話では Sさんは新シーズンのチケットについて事務局に問い合わせの電話をかけてきたとのことでした 登原さんは「いつも来るべき人が来ないと、何かあったんじゃないかと気になりますよね」とおっしゃっていましたが、まったくその通りで、とても心配していました   とにかく生きていることが確認できて安心しました

 

     

 

プログラム後半の1曲目はワーグナー:歌劇「ローエングリン」より「エルザの大聖堂への行進」です この歌劇はリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が1846年から48年にかけて作曲、1850年にワイマルで初演されました オペラでは第2幕第4場から第5場にかけて演奏されます

大植の指揮で演奏に入りますが、冒頭のオーボエ、フルートを筆頭とする木管楽器群のアンサンブルが美しく響きました また、後半にかけてはトロンボーン、チューバ、ホルンを中心とする金管楽器群のいぶし銀のような重心の低い重厚な演奏が印象的でした

2曲目はブルックナー「交響曲第9番 ニ短調 WAB109」(ハース版)です この曲はアントン・ブルックナー(1824-1896)が1891年から96年にかけて作曲、第3楽章までは完成したものの未完に終わりました 第1楽章「厳かに、神秘的に」、第2楽章「スケルツォ:動きをもって、生き生きと」、第3楽章「アダージョ:ゆっくりと、厳かに」の3楽章から成ります

大植の指揮で第1楽章に入ります 冒頭のホルンの演奏が素晴らしい 後半にかけてはトロンボーン、チューバといった金管楽器群が重厚な演奏を繰り広げます 第2楽章のスケルツォは弦楽器のピッツィカートと渾身の激しいキザミが印象的です ここぞというところでティンパニがクサビを打ち込みます 「怒涛の快進撃」とでも言うべきアグレッシブな演奏が展開しました 第3楽章のアダージョは、冒頭の第1ヴァイオリンの渾身の演奏が光ります リハーサルで入念に詰めてきた楽章だけに、弦楽器も管楽器も持てる力を存分に発揮します ホルン8人のうち4人はワーグナー・チューバを持ち替えて演奏しますが、この演奏が素晴らしかった なお、このワーグナー・チューバはトリフォニーホール2階に展示されている楽器が使用されました 全体を通して重心が低くスケールの大きな演奏が展開しました 存分にブルックナーのシャワーを浴びた気分です

     

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大植英次 ✕ 新日本フィルでワーグナー「ローエングリン」から「エルザの大聖堂への行進」、ブルックナー「交響曲第9番」の公開リハーサルを見学する ~ すみだトリフォニーホール

2023年03月17日 07時04分18秒 | 日記

17日(金)。昨日午後5時から内幸町の日本記者クラブレストランで、A君の慰労会が開かれたので参加しました A君は新聞関係団体(NSK)時代の後輩で、NSKに34年間勤務した後、私の2度目の職場でもあるNPCの監査役を務め、今年2月に退任したので、NPCの元専務のU氏が発起人となって開かれたものです この日はワールド ベースボール クラシック 順々決勝 ~  日本 対 イタリア戦 があるにもかかわらず、A君を含め9人が参加しました 慰労会の内容についてはこのブログの最後で書きます

ということで、わが家に来てから今日で2985日目を迎え、動画サイトで著名人を繰り返し脅迫する内容の配信をしたなどとして、警視庁は16日、元参議院議員のガーシー氏について、暴行行為等処罰法違反(常習的脅迫)容疑などで逮捕状を請求した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     除名処分にされたあげく 逮捕されるとは 騙されたとはいえ 身から出た錆じゃね?

 

         

 

昨日、夕食に「茄子の生姜焼き」と「生野菜サラダ」を作りました あとはマグロの刺身です。昨夜は私が外食だったので娘のために作りました どうです、ヘルシーそのものでしょう

 

     

 

         

 

昨日午前10時半から、すみだトリフォニーホールで新日本フィル「第13回 すみだクラシックへの扉」公演の公開リハーサルを見学しました 本公演は本日=17日(金)と18日(土)の両日、トリフォニーホールで開かれます 本番のプログラムは①小曽根真「ピアノ協奏曲『SUMIDA』(仮題)」=新日本フィル創立50周年委嘱作品/世界初演、②ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より「エルザの大聖堂への行進」、③ブルックナー「交響曲第9番ニ短調」ですが、この日は②と③のリハーサルが公開されました 指揮は大阪フィル桂冠指揮者、ハノーファー北ドイツ放送フィル名誉指揮者の大植英次です

開始にあたり、事務局から「通常の公開リハーサルは『60分・休憩・60分』という編成であるが、今回は『75分・休憩・75分』に拡大するので、終了が午後1時15分となる」旨の説明がありました

 

     

 

すでに楽員は普段着姿で各自の持ち場に着いて練習をしています オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの新日本フィルの並び コンマスは崔文洙、隣はアシスタントコンマスの立上舞です。弦楽奏者はコンマスを除きマスクを着用しています

そこに上が白、下が黒のお洒落な衣装、白のマフラーを首にかけた大植が登場、指揮台に上ります どう見てもリハーサル用のカジュアルな服装には見えません 野球界で言えば日本ハムの新庄監督、音楽界で言えば神奈川フィルの組長と呼ばれるコンマスと同じジャンルに区分される人類のド派手な衣装です これで指揮ができるのか?と一瞬心配になりました

最初にワーグナー「ローエングリン」から「エルザの大聖堂への行進」を、途中で止めることなく通して演奏しました その後、冒頭に戻り、木管楽器を中心に細かな指示を与え、また演奏し、ということを繰り返していました 弦楽器は暇そうでした この曲は35分くらいかけてリハーサルを行いました

次にブルックナー「交響曲第9番」のリハーサルに移りましたが、最初は第3楽章「アダージョ」から開始しました これは開始して間もなく演奏を止め、弦楽器に指示を出し、また演奏を進め、管楽器に指示を出し、といった具合にきめ細かく詰めていきました

11時45分に前半が終わり、休憩後の正午に後半が始まりました 第3楽章のフィナーレを再度詰めて、第1楽章「おごそかに、ミステリオーソ」のリハーサルに入りました この楽章は途中で止めることなく通して演奏したので、ありがたかったです 次いで第2楽章「スケルツォ」の演奏に入りましたが、途中で止め、フィナーレの詰めを行いました これで一通りさらったことになりますが、大植は第3楽章の主要部分をもう一度時間をかけておさらいし、最後に第1楽章冒頭を仕上げてリハーサルを終了しました

全体を見学した印象は、派手な衣装の割には かなり細かい人だな、ということです なお、リハーサルを聴く限り、オケはかなりパワフルです 今日の本番が楽しみです

帰りがけにパトロネージュ部の登原さんから、新日本フィルの「維持会員」として寄付をしたことに対する礼状と領収書を受け取りました 印刷された礼状の余白には、「仕事で新日本フィルを支えて、良い演奏で恩返しをしたいと思っています」と登原さんの直筆で書かれていて、とても頼もしく思いました いつも感心するのは、ものすごい達筆で書かれていることです 「みみずの のたくった字」と長年言われ続けてきた私から見ると嫉妬を覚えるくらいです どうしたらあんな上手に書けるのだろうと首をかしげてしまいます 性格か、育ちか、天性か、努力か      いずれにしても、どんなに努力してもあの達筆な字は書けそうもないな

 

         

 

さて、A君の慰労会の話に戻ります この日の参加者は、A君のほかに今年満90歳になるK氏を筆頭に、呼びかけ人のU氏、U氏と同期のM女史、NPC元監査役S氏、男女雇用均等法施行直後入社のK女史、A君の一年下の後輩H君、A君の広告担当時代の同僚のN女史、そして私の9人です ワインを飲みながら、各人がA君との思い出やエピソードを語りました A君はNSK在籍34年間で主要各部署10カ所以上(大阪勤務を含む)を異動したとのことで、これは通常の人事異動よりはるかに多いケースです これについて本人は「どこでも使いものにならず、すぐにお払い箱になって」と謙遜していましたが、K女史の「困った時にはA君に任せておけば安心だ、ということで引く手あまただったのよ」という結論で落ち着きました K女史からはよく飲んだり、A君の趣味の演劇を観に行ったりした話、H君からはバイク事故で入院した際にA君が何度も見舞いに来てくれた話などが披歴されました 私からは、A君は会員社受けが良かったこと、異動で経理に移った時に給与計算のノウハウを、前任者だったA君から親切に教えてもらい助かったこと、松本で毎年夏に開かれている「サイトウ キネン オーケストラ」フェスティバルに、A君の運転する車で何度か連れていってもらい、小澤征爾の指揮するベートーヴェンの交響曲やベルリオーズのオペラ「ファウストの劫罰」を聴いて、日帰りで帰ってきたことをお話ししました A君がいなければこんな貴重な体験は出来ませんでした

ところで、この日のサプライズはNSKの広告担当時代に一緒に働いていたN女史の参加です お会いするのは35年ぶりくらいです 実は、U氏も私もA君もH君もN女史も同じ時期に広告担当に勤務していました したがって、この日の会合はさながら広告担当OB・OG会の様相を呈していました NさんはNSKに3年間しか在籍しなかったのですが、退職後は英語やフランス語などの翻訳を手がけていらしたそうです 彼女の現役時代の感想は「とにかく仕事が多くて大変な3年間でしたが、それなりに楽しかったです」とのこと 私はそばで彼女を見ていたので良く分かります 私も当時、月平均60時間以上残業していたのではないかと思います

話は尽きませんでしたが、2時間をとっくに回ったので、記念撮影をして解散しました A君、長い間お疲れさまでした 呼びかけ人のUさん、お世話になりました ご参加の皆さん、お話しできて楽しかったです またいつか 同じメンバーでお会いできると嬉しいです

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新国立オペラ、オッフェンバック「ホフマン物語」初日公演を観る ~ レオナルド・カパルボ、安井陽子、エギリス・シリンス、木下美恵子、大隅智佳子にブラボー!

2023年03月16日 06時50分11秒 | 日記

16日(木)その2.よい子はその1も見てね モコタロはそちらに出演しています

昨夜、新国立劇場「オペラパレス」でオッフェンバック「ホフマン物語」初日公演を観ました 出演はホフマン=レオナルド・カパルボ、ニクラウス/ミューズ=小林由佳、オランピア=安井陽子、アントニア=木下美穂子、ジュリエッタ=大隅智佳子、リンドルフ他=エギルス・シリンス、アンドレ他=青地英幸、ルーテル他=伊藤貴之、ヘルマン=安東玄人、ナタナエル=村上敏明、スパランツァーニ=晴雅彦、シュレーミル=須藤慎吾、ステッラ他=谷口睦美。合唱=新国立劇場合唱団、管弦楽=東京交響楽団、指揮=マルコ・レトーニャ、演出・美術・照明=フィリップ・アルローです

 

     

 

この日、東京劇術劇場ではサーモグラフィー・カメラを撤廃していましたが、新国立劇場では継続して設置しています また、サントリーホール他のホールではクロークを再開していますが、新国立劇場はまだ再開していません コートを預ける人がいなくなる春を待っていたのかもしれません。さすがは私立でなく国立です。したたかです

会場は、超人気プロとは言えない演目のせいか、初日公演にしてはちらほらと空きが目立ちました

私が新国立オペラでフィリップ・アルロー演出の「ホフマン物語」を観るのは、2003年、2005年、2013年、2018年に続いて今回が5度目です 私は2002年のシーズンから新国立オペラの会員になっていますが、過去の上演記録を見たら、2003年の出演者にニクラウス/ミューズ=エリナ・ガランチャとあり、観て聴いたはずと思うものの、まったく思い出せません 当時はオペラを聴くようになって日が浅かったので、ガランチャと言われてもピンとこなかったと思われます できるならあの日に戻りたい、と思います

 

     

 

歌劇「ホフマン物語」はジャック・オッフェンバック(1819-1880)が1877年から80年にかけて作曲、1881年パリのオペラ・コミック座で初演された未完のオペラです

物語の舞台は歌劇場に隣接する酒場。公演終演後に歌姫ステッラとの逢瀬の約束を交わした詩人で音楽家のホフマンは、酒を飲みながら3人の女性との失恋物語を学生たちに語り始める 機械仕掛けのオランピアに、そうとも知らず恋をする物語 胸を病む恋人アントニアが激しく歌い息絶えてしまう物語 ヴェネツィアの高級娼婦ジュリエッタに影を奪われる物語 回想を終え、恋の空しさに絶望して酔いつぶれたホフマンの前に、詩の女神ミューズが姿を現す

 

     

 

ホフマンを歌ったレオナルド・カパルボはアメリカ出身のテノールですが、ジュリアード音楽院に学び、マリリン・ホーンに師事、ヨーロッパやアメリカを中心に活躍しています 力強い歌唱力と役に成り切った演技力が印象的でした

ニクラウスとミューズの2役を歌った小林由佳は国立音楽大学・大学院修了、文化庁派遣芸術家在外研修員としてイタリアに留学、二期会を中心に活躍しているメゾ・ソプラノです 美しい歌唱で聴衆を魅了しました

オランピアを歌った安井陽子は桐朋学園大学・大学院修了、文化庁派遣芸術家在外研修員としてウィーン国立音楽大学に留学、二期会会員として活躍しているソプラノです 機械仕掛けの人形の動きを見事に再現、歌も超絶技巧の最高音を張り上げ、聴衆から圧倒的な喝さいを浴びました ネジが切れて回転するシーンなどは前回(2018年)の時よりも進化していると思いました シン安井陽子の誕生です

リンドルフ、コッペリウス、ミラクル博士、ダベルトゥットの4役を歌ったエギルス・シリンスはラトヴィア出身のバス・バリトンですが、深みのある歌唱で存在感が抜群でした

アントニアを歌った木下美穂子は武蔵野音楽大学・大学院修了、新国立オペラでも活躍しているソプラノですが、「きじ鳩は逃げた」をはじめ透明感のある美しい歌唱が印象に残りました

ジュリエッタを歌った大隅智佳子は東京藝術大学・大学院修了、新国立オペラでも活躍しているソプラノですが、声に力があり良く通ります 出演者の中では一番声が出ていたのではないかと思います

新国立劇場合唱団のコーラスはいつもながら素晴らしく、今回は高度な演技力が求められますが、見事に演じ切りました

スロヴェニア出身のマルコ・レトーニャ指揮東京交響楽団は歌手に寄り添いつつ、自らも登場人物の心情を歌い上げました とくに、第3幕(アントニアの幕)では、ヴァイオリン・ソロや、オーボエ、フルートといった木管楽器がアントニアの悲しい心情を歌い上げていました

フィリップ・アルローの演出は色彩感に溢れ、美しくファンタジックな世界を描いていました

 

     

 

カーテンコールが繰り返され、幕が下りたのは22時25分を回っていました 家に帰ったのが23時を過ぎていたので、「リバーサルオーケストラ」の最終回が見られませんでした それだけが心残りです

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芸劇ブランチ「第23回 名曲リサイタル・サロン 小林沙羅」でドビュッシー「美しい夕暮れ」、グノー「ファウスト」より宝石の歌ほかを聴く:ピアノ=三浦友理枝

2023年03月16日 00時14分04秒 | 日記

16日(木)その1.わが家に来てから今日で2984日目を迎え、ロシア下院は14日、民間軍事会社ワグネルを含む軍事力行使に関する虚偽情報の流布や中傷行為への取り締まりを強化する修正法案を採択した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     法律を修正するほど虚偽情報や中傷行為が多いのは 軍が酷いことをやってるからだ

 

         

 

昨日、夕食に「真鯛の塩焼き」「マグロの山掛け」「生野菜サラダ」「豚汁」を作りました ヘルシーな魚を定期的に食べたいと思います

 

     

 

         

 

昨日午前11時から東京芸術劇場コンサートホールで、芸劇ブランチコンサート「第23回 名曲リサイタル・サロン 小林沙羅」を聴きました プログラムは①滝廉太郎「花」、②中田喜直「さくら横ちょう」、③別宮貞雄「さくら横ちょう」、④ティリンディッリ「おお、春よ!」、⑤シューマン「春が来た!」、⑥ラフマニノフ「リラの花」「春の流れ」、⑦グリーグ:叙情小曲集より「春に寄す」(=ピアノ独奏)、⑧R.アーン「春」、⑨ドビュッシー「グリーン」「美しい夕暮れ」「星の夜」、⑩グノー「ファウスト」より「宝石の歌」です 出演はソプラノ=小林沙羅、ピアノ=三浦友理枝です

いつもは会場入口に体温検知用のサーモグラフィー・カメラが設置され、入場者の体温を自動的に検知しているのですが、この日はありませんでした 久しぶりにコンサート会場でこういう光景に遭遇しました。考えてみればこれが普通なのです 他の会場でも少しずつ撤廃に向けて動くのではないかと想像します

 

     

 

拍手の中、小林沙羅がピンクの花模様の春らしい衣装で、三浦友理枝が薄緑の明るい衣装で登場、さっそく演奏に入ります

1曲目は滝廉太郎「花」です この曲は1900年に出版した歌曲集「四季」に収録された1曲です 作詞は武島羽衣で、滝とは東京音楽学校の教員同士とのことです 前日、東京で桜の開花宣言が出ましたが、まさにそれにピッタリの華やかな歌唱で、やっぱり小林沙羅の歌う日本の歌はいいなあ、と思いました

2曲目と3曲目は加藤周一(文芸評論家として有名)の作詞による「さくら横ちょう」です 同じ歌詞に中田喜直と別宮貞雄が曲を付けました 中田の方はドラマティックで、別宮の方は抒情的で、同じ詩なのにこんなにも違うものかと驚きました

4曲目はミラノ生まれのティリンディッリ作曲「おお、春よ!」です 名テノール歌手カルーソーのために書いただけあって、明るい春の太陽を感じさせる作品で、沙羅さんはダイナミックに歌い上げました

5曲目はシューマン「春が来た!」です この曲は1849年に発表された「子どものための歌のアルバム」の第23曲です シューマン特有のリズム感が印象的でした

6曲目はラフマニノフ「リラの花」です。この曲は1902年にベケートワの詩に曲を付けたもので、優しさを感じました 次の「春の流れ」は1896年に出版された「12のロマンス」の中の1曲ですが、ロシアの広大な大地を感じさせるドラマティックな歌でした

次は三浦友理枝のピアノ独奏によりグリーグ:叙情小曲集より「春に寄す」が演奏されました メロディーの美しい作品で、抒情的な演奏が印象的でした

曲間にはナビゲーターの八塩圭子さんによるインタビューがあり、沙羅さんは日常生活も含めて次のように語っていました

「日本には四季があって移ろいゆきますが、例えばロシアでは暗い冬が長く、5月になって一気に春を感じるようになるので、春の表現の仕方も爆発的になります 同じ春の歌でも国によって印象が異なるのが興味深いと思います

「フランス語は苦手で避けてきましたが、ピアニストの三浦さんと一緒に演奏するようになって、フランス語の美しさを感じるようになり、フランスの歌曲やオペラの勉強をするようになりました

「コンサート当日は、力を出すため、朝食はお米と納豆を食べます 卵もよく食べます。海外に行くときに炊飯器を持参することもあります

「子どもは男の子2人で、下の子は1歳ですが、やんちゃでクレヨンを放り投げたり、牛乳をぶちまけたりと大変です 寝る時には子守唄を歌ってあげますが、子供たちも一緒に歌ってしまうのでなかなか寝付かないで困ります

沙羅さんはプロのソプラノ歌手の傍ら、ちゃんとお子さんの面倒もみておられるようですね

 

     

 

ここからフランスの作曲家による作品に移ります 沙羅さんは水色の衣装に”お色直し”して登場、会場を「オーッ」と言わせました

8曲目はR.アーン「春」です この曲は1898年に作曲された「ロンデル(歌曲集)」に収録された1曲です 沙羅さんは美しいフランス語で歌い上げました

次に、ドビュッシー「グリーン」「美しい夕暮れ」「星の夜」を続けて歌いました いずれも美しい曲ですが、個人的には「美しい夕暮れ」に馴染みがあるので、沙羅さんの歌うフランス語の美しさを堪能しました

最後の曲はグノーの歌劇「ファウスト」より「宝石の歌」です このオペラは1859年に初演されましたが、この歌は第3幕でマルグリートが歌うアリアです 沙羅さんは身ぶり手ぶりを交えながら、時に聴衆に語りかけるように歌いました

満場の拍手にアンコールに応え、アーンの小曲と、フォーレ「夢のあとに」を美しいフランス語で歌い上げました

この日のリサイタルは、日本語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、フランス語による歌曲を美しい歌唱で歌いましたが、沙羅さんの声は独特の”艶”があって、歌声を聴くと小林沙羅だ、と分かります 声にしっかりとしたアイデンティティーがあると言えば良いでしょうか

長年の共演歴のある三浦友理枝さんとの相性も抜群で、素晴らしい春のひと時を過ごすことが出来ました

 

     

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マーク・フォースター監督「オットーという男」を観る ~ トム・ハンクス主演により”生きることの意味”を問う作品 / シネコンの本編上映開始前の15分間は拷問

2023年03月15日 06時54分16秒 | 日記

15日(水)。わが家に来てから今日で2983日目を迎え、政治家女子48党の浜田聡政調会長は14日の参院懲罰委員会で、同党のガーシー議員に除名の懲罰を科せば「参院による人権侵害であり、民主主義の破壊だ」と述べ、要件に該当しないと主張した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     あんたも新党首の大津綾香も ガーシーのように立花孝志に利用されてるだけじゃね?

 

         

 

昨日、夕食に「豚肉の生姜焼き」「生野菜とアボカドのサラダ」「モヤシの味噌汁」(写真には写っていませんが)を作りました 豚肉はビタミン豊富で美味しいです

 

     

 

         

 

昨日、TOHOシネマズ新宿でマーク・フォースター監督による2022年製作アメリカ映画「オットーという男」(126分)を観ました

オットー・アンダーソン(トム・ハンクス)は町の嫌われ者で、いつもご機嫌斜めな男 曲がったことが許せない彼は、近所を毎日パトロールしてはゴミの分別や違法駐車などのルールを守らない人に説教を垂れ、挨拶をされても仏頂面で、野良猫には八つ当たりをするなど、面倒で近寄りがたい存在だった しかし、そんなオットーも人知れず孤独を抱えていた。最愛の妻に先立たれ、仕事も失った彼は、自らの人生を終わらせようとしていた ところが、向かいの家に引っ越してきた陽気な女性マリソル・パルバネ(マリアナ・トレビーニョ)とその家族が、メキシコ料理を持ってきたり、車のバック駐車や病院への送迎、娘たちの子守など、何かと頼み事を持ちかけてきて、死のうと思ってもなかなか死ぬことができない しかし、そんな迷惑なはずのパルバネ一家の出現が彼の人生を変えていくことになる

 

     

 

この映画はスウェーデン発のベストセラー小説を2015年に映画化した「幸せなひとりぼっち」を、トム・ハンクスの主演・製作でリメイクした作品です

オットーがマリソルの子どもたちから名前を聞かれ「オットー、O T T O だ」と答えると、子どもは「右から読んでも左から読んでも O T T O だね」と言います   「上から読んでも山本山、下から読んでも山本山」を思い出してクスリと笑ってしまいました

マリソル役のマリアナ・トレビーニョは1977年メキシコ生まれのコメディー俳優ですが、おせっかい焼きの主婦を魅力的に演じています こういう女性を相手にしたらなかなか死ねないでしょう

オットーが心臓発作で入院した時、看護師から「彼は心臓( heart )が大きいんです」と説明を受けて、マリソルは「彼は 心(heart)が広いんです」と勝手に間違えて解釈して、「まさかそんなわけないでしょ」と言わんばかりに苦笑いするところが可笑しかった

若き日のオットーをトルーマン・ハンクスが演じていますが、名前で分かる通りトム・ハンクスの息子さんです 子どもたちの中で一番若き日のトムに似ているということで出演が決まったそうです なるほど雰囲気がよく似ています

この映画のテーマは、言うまでもなく「生きることの意味」です 「人は生きているからこそ人に助けられ、あるいは助けることが出来るし、そのことに喜びを見出すことが出来る 死んだら負け」ということです

さて、音楽です   オットーは、天井からロープを下げて首を吊ろうとしたり、車庫の車の中でガス自殺を図ろうとしたり、何度か自殺を試みては失敗しますが、猟銃自殺をしようと椅子に座って引き金を引こうとした時に流れてきたのはリスト「コンソレーション 第3番」でした    まるで、亡き妻が過去の思い出を思い起こさせ、オットーに「強く生きるのよ」と説得しているかのように響きました

ユーモアたっぷりのストーリーであるとともに、ほろりと泣かせることも忘れていません まさしく正攻法をいくヒューマンドラマです

 

     

 

それにしても、「どうにかならないのか」と思うのは映画館(とくに大手映画グループのシネコン)でのコマーシャルや予告編が多いことです この日は午前8時45分開始の部を観ましたが、8時40分頃からTOHOのPR動画が流れ、続いて映画を観る上でのエチケットやらポップコーンのCMやらが続き、続いて予告編が何作か上映され、「映画泥棒」の動画が上映されたのでやっと本編上映かと思っていると「お帰りの際はお忘れ物のないように」「暗いので足元の階段にお気を付けください」というご親切なお知らせが流れ、映倫の年齢制限画像が表示され、9時少し前にやっと本編の上映に移りました つまり入場券に表示された開演時刻より15分も遅れてやっと本編が上映されるのです 予告編はこれから観る・観ないの参考になるのである程度理解できますが、映画会社の「PR」やら「お知らせ」などはどうでもいいのです 「早く本編を上映せんかい、このアホンダラ」と言いたくなります。はっきり言って、この15分間は拷問です

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ダニエル・クワン & シャイトナー共同監督「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を観る ~ 第95回アカデミー賞で7部門受賞

2023年03月14日 06時51分27秒 | 日記

14日(火)。マスクの着用が個人の判断に委ねられるよになった昨日、岸田首相はマスクを外して官邸入りしたそうです まあ、一応”日本の顔”ですからね、顔が見えた方がいいと思います 一方、外を歩いている人を見ると3分の2の人はまだマスクをしていて、山手線の電車内では100%マスク着用でした 徐々にこの比率が変わっていくのでしょうか 私は「自分の身は自分で守る」という考えから、しばらくの間 コンサート、映画を含め 外出時はマスクを着用する方針です

ということで、わが家に来てから今日で2982日目を迎え、共同通信社は11~13日、全国電話世論調査を実施したが、放送法の「政治的公平」に関する総務省の行政文書について、当時総務相だった高市早苗経済安全保障担当相による「不正確で捏造だ」との説明に対し「納得できない」との回答は73.0%に上った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     かつての部下が作成した文書を「不正確で捏造だ」と断定するんだから 無責任だ!

 

         

 

昨日、夕食に「チキンカレー」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました カレーにはワインですね

 

     

 

         

 

TOHOシネマズ新宿でダニエル・クワン ✕ ダニエル・シャイトナー監督による2022年製作アメリカ映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(139分)を観ました

エヴリン・ワン(ミシェル・ヨー)は、経営するコインランドリーが税務調査を受けて破産寸前、父親ゴンゴン(ジェームズ・ホン)はボケているのに頑固、娘ジョイ(ステファニー・スー)はいつまでも反抗期が終わらない、夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)は優しいだけで頼りにならないという状態で、頭の痛い問題ばかりを抱えている 毎日精一杯の日常生活を送る彼女の前に、突如として夫に乗り移った「別の宇宙(ユニバース)の夫」ウェイモンドが現れる 混乱するエヴリンに、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と驚くべき使命を負わせる そんな「別の宇宙の夫」に言われるがまま、訳も分からず「マルチバース(並行世界)」に飛び込んだ彼女は、カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、マルチバースの脅威ジョブ・トゥパキ(別の宇宙の娘)を相手に全人類の命運をかけた戦いに身を投じる

 

     

 

ひと言でいうと「ぶっとんだ映画」です ごく普通の主婦でコインランドリーを営む中年女性が、いきなり宇宙の別の世界から来た人物から「悪者を倒してくれ」と頼まれ、命を懸けた戦いに巻き込まれてしまうのです 普段は頼りない夫が突然ヒーローになってカンフーアクションで大暴れしたり、エヴリンもその能力を授けられて敵と対峙します エヴリンが「もしもあの時、別の選択をしていたら、そこには『別の自分』がいた」と考えると、たちまち有り得たかもしれない人生の可能性のパターン(歌手、シェフ、カンフーの達人など)を次々と体験していくことになります 映像は「現実の世界」と「マルチバース(並行世界)」を目まぐるしく行き来するエヴリンを映し出します

この映画の肝の一つはヒロインのエヴリンの一家が中国からアメリカに移住した移民で、マイノリティーである彼女が「マルチバース(並行世界)」の危機を救うという設定です もう一つは、母娘の不和と和解です エヴリンは仕事と介護に追われて忙しすぎ、娘ジョイに気持ちを向ける余裕がありません たまに面と向かうことがあると「あなた、太り過ぎよ」としか言えません ジョイはそんな母親に嫌気がさしています 同じ親子でも母親と娘との関係は独特のものがあるようで、その辺の機微がコミカルに描かれています

さらに、岩山の頂上で2つの大きな岩同士の会話シーン(テロップで表示)がありますが、「地球なんて宇宙の中の一つの星に過ぎない。人間なんてその地球の中で生活している小さな存在に過ぎない。毎日の出来事なんて大したことはない」とする考えの一方で、「たとえ小さな世界でも、家族や身近な人たちとの生活を大事にして生きていきたい」という考えが語られます これもこの映画の一つのテーマです

さて、音楽です 「マルチバース(並行世界)」でエヴリンとジョブ・トゥパキとが対峙するシーンでは、ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲の「スイス軍の行進」が超スローテンポで流れていて、シュールな感覚を醸し出していました   また手の指がソーセージになってしまう並行世界のシーンは、スタンリー・キューブリック監督の「2001年 宇宙の旅」のパロディで、猿たちが骨を空に放り投げる場面でリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語り」冒頭の音楽が流れました   また、ソーセージの指ではピアノが弾けないため、両足の指でドビュッシー「月の光」を弾くシーンが印象的で、さすがは印象派の音楽と感心しました

本作は第95回アカデミー賞で作品、監督・脚本、主演女優ほか同年度最多の10部門11ノミネートを果たしていましたが、映画を観終わって家でニュースを見たら、何と作品賞、監督賞、主演女優賞(マレーシア生まれのミシェル・ヨー)、助演男優賞(ベトナム生まれのキー・ホイ・クァン)など7部門で受賞していてぶっ飛びました ポイントは「多様性」ですね

 

     

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バッティストーニ ✕ 東京フィルによる「3月度定期演奏会」の公開リハーサルを見学する ~ サン=サーンス「交響曲第3番”オルガン付き”」他

2023年03月13日 06時46分23秒 | 日記

13日(月)。わが家に来てから今日で2981日目を迎え、ガーシー参議院議員が国会を長期欠席したことから国会議員としての地位が危ぶまれるなか、NHK党の党首・立花孝志氏が党首を辞任し、後任に元子役の大津綾香氏が就任、政党名を「政治家女子48党」に変更したことについて、ガーシー氏は「今さら日本に連れ戻せなくて、その責任を取って辞めます。名前は『女子党』にしますって、これもうただのジョークやん、コントでしょ、こんなもん、ただの」と不満を表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     あんたが参院選で当選したこと自体が ジョークでコントだったんだよ こんなもん 

 

         

 

昨日正午から、オーチャードホールでアンドレア・バッティストーニ ✕ 東京フィルによる「3月度定期演奏会」の公開リハーサルを見学しました 実は、本番を10日(金)にサントリーホールで聴いたばかりです。本番の後で公開リハーサルを聴くなんて本末転倒もいいところですが、東京フィルの日程設定がそうなっているのでどうしようもありません モヤモヤしながらも、事前にWEB申し込みをしてあり、東京フィルの公開リハーサルを見学するのは今回が初めてなので、予定通り見学することにしました

座席は自由で、午前11時半開場・正午リハーサル開始なので11時10分頃に会場に行って並びました   11時半より前に、高校生らしき団体が先に入場していたので、特別に招待したのでしょう。とても良いことだと思います 見学可能な席は1階17列目より後方ですが、早く並んだ甲斐があって18列目のセンターブロック右通路側が確保できました 事前の通知には公開されるのは約1時間で、曲目はサン=サーンス「交響曲第3番」となっていましたが、当日配布された案内文書には「12:00~13:30」とあり、スタッフの説明ではリハーサル後に指揮者バッティストーニから挨拶があるとのことでした 気になったのは、3つの楽曲のうちどの曲をどういう順番で公開するのかということがどこにも書かれていないし、スタッフの説明にもなかったことです

指定された見学席はかなり埋まっています この日午後3時から開かれる「オーチャード定期演奏会」の会員が中心と思われます スタッフの説明によると、公開リハーサルは3年4か月ぶりとのことです

 

     

 

正午ジャストに白のTシャツ姿の近藤コンマスの合図でチューニングが始まり、拍手の中、普段着姿のバッティストーニが登場し指揮台に上ります 1曲目が激しいアレグロで開始され、ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」から始めるのだな、と初めて分かりました バッティストーニは何度か途中で演奏を止め、注意点を指摘し前に進めました イングリッシュホルンの素晴らしい演奏を聴いて、本番での感激を思い出しました 2曲目はプログラム通りカゼッラの狂詩曲「イタリア」でした 冒頭のドラマテックな演奏を聴いて色彩感溢れる本公演が蘇りました この曲でもイングリッシュホルンの演奏が心に沁みました 残念ながら、あの「フニクリ・フニクラ」の主題が登場する最終楽章のリハーサルはありませんでした もう完璧に仕上がっているということですね

ここで次のサン=サーンス「交響曲第3番」の演奏のために舞台換えが行われます ステージ下手にはハープとピアノが置かれ、上手のコントラバスの後ろにはオルガンの石丸由佳さんがスタンバイします ここで、私は「オーチャードホールにはパイプオルガンがない」と気が付きました 石丸さんはかなり大きめの電子オルガンを弾きます

再びバッティストーニが登場し、第1楽章の第2部から演奏に入ります 最初からオルガンが入りますが、演奏が始まって間もなくして、バッティストーニは指揮台から降り、観客席の13列目位まで歩いてきて演奏に耳を傾けていました おそらく弦楽器とオルガンの音のバランスを確かめていたのだと思います また指揮台に戻り演奏を続けました。何度かその作業を繰り返し次の楽章に移りました リハーサルなので全曲を演奏するわけにはいかないので、全楽章を通じてバッティストーニが気になるところだけピックアップして集中的に演奏したようです

リハーサル終了後、バッティストーニが通訳と共に登場し、客席の13列目辺りでマイクを持って聴衆に向かい次のように語りました

「普段のリハーサルは東京オペラシティでやることが多いです 本公演はすでにオペラシティとサントリーホールで本番を演奏してきたので、私がどういう指揮をするか、皆さんよく分かっていらっしゃると思います しかし、ホールが違うとオーケストラの対応も違ってくるのです 今日は2回の本番で出たミスを改め、危なそうな箇所をチェックすることをテーマに最終リハーサルを行いました ところで、最近はテクノロジーが発達し、AIが何でもやるようになりました テクノロジーの発達には良い面もあります。パイプオルガンの代わりに電子オルガンが使用されるようになったのもその一つです しかし、現代はAIが作曲までする時代です。オーケストラに代わってAIが演奏するようになったらお終いです 皆さん、AIに抵抗を示してください さて、今気が付いたのですが、2階席に生徒さんたちが見学に来ています 皆さん、これを機会にどんどんコンサートに来てください 音楽界にとって若い皆さんは大切なお客様です もちろん、その他の皆さんもどんどん聴きに来てください

バッティストーニの挨拶を聴いて、リハーサル前のモヤモヤがすっかり解消されました 「ホールが異なればオーケストラの演奏の仕方も変わってくる」というのはその通りでしょう サントリーホールのようなヴィンヤード(ぶどう棚)型のホールと、オーチャードやオペラシティのようなシューボックス(靴箱)型のホールとでは音の響き方や残響時間が異なります 指揮者はそうした点を考慮して、客席で聴くとどういう音響になるかを確認することがリハーサルの大きなテーマになるのだと思います

今回の公開リハーサルは聴きに行って正解でした リハーサルそのものはもちろん、バッティストーニの挨拶が良かったと思います クラシック音楽界は「明日の聴衆」を育て、コンサート会場に呼び込まなければ将来はありません

 

     

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