【追悼 アラン・ドロン】日本の男性を虜にしたスタイルアイコン 「美貌」を超えた神通力

2024年09月02日 11時45分57秒 | 社会・文化・政治・経済
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高度経済成長を経て国際化の機運が高まった1960〜70年代。日本にアイビールックを流行させたヴァンヂャケットに代わり、新たなメンズスタイルのお手本となったアイコンが、アラン・ドロンだった。

「ダーバン、それは現代を支える男のエレガンス」。

フランス語のつぶやきで締められるCMが、繰り返しテレビで流れた70年代。既製服のスーツが普及する時代に、勢いづいていたレナウンの「ダーバン(D’URBAN)」の広告キャラクターとなったアラン・ドロンは、都会的な国際派スーツを着こなす理想像として日本のスーツスタイルに絶大な影響を及ぼした。タキシードに白いマフラーをあしらう着こなしのイメージはいまだ根強い。

21世紀にも衰えぬ神通力

彼は「エレガントな」スーツのアイコンになったばかりではない。トレンチコートのベルトのあしらい方、帽子をかぶる角度、シャツを素肌に着るときのボタンの開け具合やアクセサリーの見せ方はじめ、あらゆる男性服の着こなしのお手本として繰り返しその姿が引用される。「サムライ」でのチェスターコートに白手袋という暗殺者スタイルは、マイケル・ジャクソンの白手袋にも受け継がれた。

ドロンは、時計、香水、サングラスなどでビジネスも展開した。その神通力は21世紀に入っても衰えず、「クリスチャン・ディオール(CHRISTIAN DIOR)」は2009年と15年に香水「オーソバージュ」のキャンペーンで、彼が出演した映画の映像を使っている。

時折見せるダーティーな影
男性を引きつける無二の魅力

メンズスタイルの色あせない理想としてなぜ彼はこれほどのインパクトをもったのか?もちろん、彼の「酷薄さ」までアクセントになる完璧な美貌、従軍経験で鍛えた体躯と身のこなしがあったからこそであろう。しかし人は表面的な美にはすぐ飽きるものだ。彼は「美男子であることを人々に忘れさせるために、俳優として何年も人一倍苦労した」と言った。幸薄い少年時代に幾多の苦労を経てきただけでなく、スターになってからも付き人の射殺事件で長時間取り調べを受けるなど、暗部もつきまとっていた。しかしドロンはダーティーなイメージがついたあとはそれを逆に利用し、その後は暗殺者や前科者など屈折した悪役を積極的に演じてかえって評価を高めた。

当代一の美男子であるという生まれの「ハンデ」を克服し、不穏な評判も逆利用するしたたかな生命力が、身に着けるものまで魅惑的に見せたのである。女性のアイドルとして以上に、アラン・ドロンはむしろ、時折ちらつく下品な影を含めた男性の理想のアイコンとして、これからもあり続けるだろう。


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