三月も今日でおしまい、というか日本では「今学年度」が今日でおしまいですね。明日は早(はや)四月一日、そして新年度。
新しい学年に進級される学生の皆さん、さらには高校や大学へ進学されたり、社会人としての日々が正式に始まる人もいらっしゃるでしょう。
四月は不安と期待感が入り混じった時期ですが、それを春めいた空気や桜の花が包み込んでくれたりして、あのなんとも言えない「新しい年度」の雰囲気を創り上げているのだと思います。
そういう「新年度」の雰囲気は微塵もないアイスランドですが、私はこの週末は少しのんびりすることができています。おととい金曜日の夜に、ふと気がついてメジャーリーグのネットを開いてみると、なんとすでに大陸でも、シーズンが始まっているではありませんか!
東京でのマリナーズの開幕戦のことはもちろん承知していました。イチローの引退も。ですが、Myヤンキースまですでに先一昨日(さきおととい)の木曜日にホームオープン戦を終えているとは! マー君の先発を見逃してしまった...
それでもMBLのペイ会員である私は、ビデオで開幕戦を観ることができました。いいとこだけ拾い見の一時間、へへ。もちろんヤンキースの快勝。マー君一勝目。万歳。
ところがです。
そんな春先ののんびりムードは私の古アパートの中だけのことで、異様に重く、沈鬱な空気がアイスランドを包み込んでいます。なぜかというと、巨大な春の嵐に見舞われたからです。木曜日にワウ・エアWOWairが倒産し、すべてのサービスがストップしてしまったのです。
WOWは、ムラサキ色の機体にでっかく白い字でWOWとデザインしてある、あの航空会社です。日本からいらっしゃる方が、どれくらいWOWを利用されているのか -いたのか- よく知りませんが、こちらにいらっしゃった方なら、空港でそのムラサキ色を見たことがあることと思います。
WOWのロゴ
アイスランドのメジャーな航空会社は、もちろんアイスランド航空ですが、経済恐慌の時期にかけてアイスランド・エクスプレスという第二の航空会社が存在していました。
いわゆる「格安運賃」でお客さんを集めるタイプの会社でした。そのアイスランド・エクエスプレスを買収して誕生してきたのがWOWでした。2011年に創業。
WOWは格安主義を踏襲しましたが、創業当時からにわかに起こってきた「アイスランド観光ブーム」に見事に乗っかり、みるみる業績を上げてきたのです。そうとうな収益を上げていたと報じられています。
うろ覚えですが、確かアイスランド航空が、例えばコペンハーゲンまで片道25.000クローネとか言っている時に、WOWは6.000クローネを切っていたのではないかと思います。
すみません、確かめようがないのです。WOWのサイトはすでにクローズドされてしまっていて、「終業のご挨拶」以外の情報が手に入らないからです。
WOWの経営状態が良くない、ということはしばらく前、そうですね、半年前くらいから見ていた覚えがあります。アイスランド航空との提携が話し合われていたが、うまくいかなかったとか。
で、次にはIndigo Partnersとかいうアメリカの投資会社が、WOWを買収する話しがあって、私はそれで話しが付いたものだ、と思っていました。「買収後もWOWはアイスランドの航空会社であり続ける」とかのコメントを見たのを覚えていますから。
ところが、それも確定していなかったのでしょうか?ここ二週間くらい、またWOWの話題がニュースのトップに出始め、再びアイスランド航空との提携だか、買収のニュースがしきりに。
それが「アイスランド航空は、WOWとはもう一切関係はない」とかいうコメントが一週間くらい前に出されました。以降さかんに、「国は介入するのか?」の質問が財務大臣とかに寄せらていましたね。
そんなこんなするうちに、先週の木曜日の未明の夜半、WOWは突然「すべての業務を終了します」宣言。当然、全フライト、アイスランドからの便も、アイスランドへ帰る便もすべてキャンセル。
現在のWOWのホームページ サービスの終了を伝えるのみ
Myndin er ur wowair.com
というわけで、木曜日は朝からこの話題で国中が占拠されました。
で、人ごとのように書いていますが、この小国にあってはこれは非常に心重くなる出来事なのです。
国内事情に触れる前に言いますと、まずもって直接の無実の被害者は、WOWに乗るはずだった人々です。アイスランドに観光に来ていた人たち、外国に行っていて帰国するつもりだったアイスランド人たち。
双方とも、甚大な迷惑だろうと想像します。だって、そういう時に他航空会社にカバーしてもらうように働くはずのWOWのスタッフがいないのですから。アイスランド航空とかのスタッフが、お助けマンでこれをカバーしているらしいです。(未確認情報)
早期に、それぞれが自宅に安全に帰れることを願います。
そして、もっと長期になるであろう深刻な問題は、これによって相当数の失業者が一挙に生まれたことです。WOWの直接の解雇者だけで -つまり、木曜日の未明に仕事をなくした人だけで- 1100人といいます。二十人が解雇されたら大ニュースになる国ですからね。
しかも、関連する国内の旅行サービス会社Kynnisferdirキンニスフェルズィルが59人のスタッフを即日解雇。その翌日には空港内施設の会社 -様々なサービスの提供を統括している会社と思いますが- 計210人を解雇しました。航空関係だけではなく、観光業全体に大きな影響があるのです。ということはアイスランド経済全体に影響するということ。
報道によると、最大2000人以上が短期間のうちに失業者とならざるを得ないだろう、とのこと。これは、もう大問題です。失業手当用の国の基金があるのですが、「あっという間に空っぽになる」見込みだそうで、政府はすでに追加の予算措置を取りました。
WOWの倒産を報じる木曜早朝の第一報
Mynddin er ur Visir.is
Jalが倒産したのは、2010年1月でしたから、九年前になりますね。でも、その時もJalは飛び続けたと理解していますが、違いますか?
航空会社のような社会への影響が大きような企業は、国がテコ入れしてでも、なんとか「潰れ切ってしまわないよう」にするものだと思っていました。学生の頃読んだJ・K・ガルブレイス教授も書いていたと記憶していますよ: 「現代では自動車会社のような基幹産業は国が倒産させない。影響が大きすぎるから」
時代は変わったか?
私はビジネスはからきしダメで、何がどうなるべきだったのを自分の意見として述べる勇気はないのですが、政府あるいは国民 にとって -税金を払って暮らしているガイコクジンも含めて- 潰れた後始末よりは、潰れないように支えることの方がはるかに楽だったのではないか、と想像します。
「なぜ、ここまで経営が悪化する前に監督指導できなかったのか?」という質問がメディアから関係大臣にありました。2008年の経済危機の時も同じパターンだったような気がしますが... 勝手にやりすぎてるのに、誰も気にしない。コワイです、これ。
私も所属する「緑の党」のカトリーン首相ですが、なんかもう支持はできない感じになってきましたね。一民間会社の倒産である以上に、政治的問題になってしまった、と思います。
実際に、突然職を失うというのは、本人にとっては大変なパニックですからね。それが二千人という規模で起こっているのですから、できることならWOWが完璧に残骸になってしまう前に、復興させてもらいたいと願います。
パニックに直面している人たちひとりひとりに救いの道が与えられますよう。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
新しい学年に進級される学生の皆さん、さらには高校や大学へ進学されたり、社会人としての日々が正式に始まる人もいらっしゃるでしょう。
四月は不安と期待感が入り混じった時期ですが、それを春めいた空気や桜の花が包み込んでくれたりして、あのなんとも言えない「新しい年度」の雰囲気を創り上げているのだと思います。
そういう「新年度」の雰囲気は微塵もないアイスランドですが、私はこの週末は少しのんびりすることができています。おととい金曜日の夜に、ふと気がついてメジャーリーグのネットを開いてみると、なんとすでに大陸でも、シーズンが始まっているではありませんか!
東京でのマリナーズの開幕戦のことはもちろん承知していました。イチローの引退も。ですが、Myヤンキースまですでに先一昨日(さきおととい)の木曜日にホームオープン戦を終えているとは! マー君の先発を見逃してしまった...
それでもMBLのペイ会員である私は、ビデオで開幕戦を観ることができました。いいとこだけ拾い見の一時間、へへ。もちろんヤンキースの快勝。マー君一勝目。万歳。
ところがです。
そんな春先ののんびりムードは私の古アパートの中だけのことで、異様に重く、沈鬱な空気がアイスランドを包み込んでいます。なぜかというと、巨大な春の嵐に見舞われたからです。木曜日にワウ・エアWOWairが倒産し、すべてのサービスがストップしてしまったのです。
WOWは、ムラサキ色の機体にでっかく白い字でWOWとデザインしてある、あの航空会社です。日本からいらっしゃる方が、どれくらいWOWを利用されているのか -いたのか- よく知りませんが、こちらにいらっしゃった方なら、空港でそのムラサキ色を見たことがあることと思います。
WOWのロゴ
アイスランドのメジャーな航空会社は、もちろんアイスランド航空ですが、経済恐慌の時期にかけてアイスランド・エクスプレスという第二の航空会社が存在していました。
いわゆる「格安運賃」でお客さんを集めるタイプの会社でした。そのアイスランド・エクエスプレスを買収して誕生してきたのがWOWでした。2011年に創業。
WOWは格安主義を踏襲しましたが、創業当時からにわかに起こってきた「アイスランド観光ブーム」に見事に乗っかり、みるみる業績を上げてきたのです。そうとうな収益を上げていたと報じられています。
うろ覚えですが、確かアイスランド航空が、例えばコペンハーゲンまで片道25.000クローネとか言っている時に、WOWは6.000クローネを切っていたのではないかと思います。
すみません、確かめようがないのです。WOWのサイトはすでにクローズドされてしまっていて、「終業のご挨拶」以外の情報が手に入らないからです。
WOWの経営状態が良くない、ということはしばらく前、そうですね、半年前くらいから見ていた覚えがあります。アイスランド航空との提携が話し合われていたが、うまくいかなかったとか。
で、次にはIndigo Partnersとかいうアメリカの投資会社が、WOWを買収する話しがあって、私はそれで話しが付いたものだ、と思っていました。「買収後もWOWはアイスランドの航空会社であり続ける」とかのコメントを見たのを覚えていますから。
ところが、それも確定していなかったのでしょうか?ここ二週間くらい、またWOWの話題がニュースのトップに出始め、再びアイスランド航空との提携だか、買収のニュースがしきりに。
それが「アイスランド航空は、WOWとはもう一切関係はない」とかいうコメントが一週間くらい前に出されました。以降さかんに、「国は介入するのか?」の質問が財務大臣とかに寄せらていましたね。
そんなこんなするうちに、先週の木曜日の未明の夜半、WOWは突然「すべての業務を終了します」宣言。当然、全フライト、アイスランドからの便も、アイスランドへ帰る便もすべてキャンセル。
現在のWOWのホームページ サービスの終了を伝えるのみ
Myndin er ur wowair.com
というわけで、木曜日は朝からこの話題で国中が占拠されました。
で、人ごとのように書いていますが、この小国にあってはこれは非常に心重くなる出来事なのです。
国内事情に触れる前に言いますと、まずもって直接の無実の被害者は、WOWに乗るはずだった人々です。アイスランドに観光に来ていた人たち、外国に行っていて帰国するつもりだったアイスランド人たち。
双方とも、甚大な迷惑だろうと想像します。だって、そういう時に他航空会社にカバーしてもらうように働くはずのWOWのスタッフがいないのですから。アイスランド航空とかのスタッフが、お助けマンでこれをカバーしているらしいです。(未確認情報)
早期に、それぞれが自宅に安全に帰れることを願います。
そして、もっと長期になるであろう深刻な問題は、これによって相当数の失業者が一挙に生まれたことです。WOWの直接の解雇者だけで -つまり、木曜日の未明に仕事をなくした人だけで- 1100人といいます。二十人が解雇されたら大ニュースになる国ですからね。
しかも、関連する国内の旅行サービス会社Kynnisferdirキンニスフェルズィルが59人のスタッフを即日解雇。その翌日には空港内施設の会社 -様々なサービスの提供を統括している会社と思いますが- 計210人を解雇しました。航空関係だけではなく、観光業全体に大きな影響があるのです。ということはアイスランド経済全体に影響するということ。
報道によると、最大2000人以上が短期間のうちに失業者とならざるを得ないだろう、とのこと。これは、もう大問題です。失業手当用の国の基金があるのですが、「あっという間に空っぽになる」見込みだそうで、政府はすでに追加の予算措置を取りました。
WOWの倒産を報じる木曜早朝の第一報
Mynddin er ur Visir.is
Jalが倒産したのは、2010年1月でしたから、九年前になりますね。でも、その時もJalは飛び続けたと理解していますが、違いますか?
航空会社のような社会への影響が大きような企業は、国がテコ入れしてでも、なんとか「潰れ切ってしまわないよう」にするものだと思っていました。学生の頃読んだJ・K・ガルブレイス教授も書いていたと記憶していますよ: 「現代では自動車会社のような基幹産業は国が倒産させない。影響が大きすぎるから」
時代は変わったか?
私はビジネスはからきしダメで、何がどうなるべきだったのを自分の意見として述べる勇気はないのですが、政府あるいは国民 にとって -税金を払って暮らしているガイコクジンも含めて- 潰れた後始末よりは、潰れないように支えることの方がはるかに楽だったのではないか、と想像します。
「なぜ、ここまで経営が悪化する前に監督指導できなかったのか?」という質問がメディアから関係大臣にありました。2008年の経済危機の時も同じパターンだったような気がしますが... 勝手にやりすぎてるのに、誰も気にしない。コワイです、これ。
私も所属する「緑の党」のカトリーン首相ですが、なんかもう支持はできない感じになってきましたね。一民間会社の倒産である以上に、政治的問題になってしまった、と思います。
実際に、突然職を失うというのは、本人にとっては大変なパニックですからね。それが二千人という規模で起こっているのですから、できることならWOWが完璧に残骸になってしまう前に、復興させてもらいたいと願います。
パニックに直面している人たちひとりひとりに救いの道が与えられますよう。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
今日(4日)にニュースでは、WOWの社長だったスクーリ氏が、「今年の夏にすぐに新WOWを飛ばす」と語っていることが紹介されました。
「マジかよ?」という気がしますが、まったくのヨタ話ではないようなので、次が注目されます。
Shimihikaさん、こめんといただきありがとうございます。ですが、あまり嬉しくはない状況でのコメントで残念です。
買われたもとで、何も保障というか、全額ではなくとも戻ってくる仕組みはないのですか?
まあ、それがないから価格が安いのかなあ。
何もできなくて申し訳ありませんが、被害が最小限でありますこを願います。