映画「KANO」「海角七号」「セデック・バレ」3部作を世に送り出した監督
「魏徳聖さんと語る会」というのが東京で開催されたので、行ってきました。
3月7日(土)午後
新宿の京王プラザの宴会場にて。
語る会は参加費1000円。
その後、別会費で懇親会も開かれたのですが、先約があったこともあり講演のみ参加しました。
そもそも私ごときがそんな懇親会に参加しても…ね。
会場は細長い配置だったので、なるべく前の方に行こうと思いました。
前から5列目くらいに陣取りました。
右隣は若い女性(KANOのTシャツを着てました。映画のファンかな?)
左隣は(たぶん)在日台湾人のおばあさん。
同じ列には取材っぽい人もいました。(監督の話をその場でキーボードで打ち込んでた。)
この会の主催は「在日台湾同郷会」というところ。
共催には在日台湾婦女会、日本台湾医師連合、日本李登輝友の会、台湾の声、台医人協会、台湾研究フォーラム、高雄医学大学日本校友会、怡友会、東京池袋教会、台湾独立建国連盟日本本部、日本台湾語言文化協会、日本基督教団東京台湾教会という団体が名前を連ねていました。
さっぱりわかりませんが、政治的な香りもしなくはないですね。チャンネル桜関係も来てたし。でもいろんな人たちが協力してこの会を実現させてくれたことに感謝です。
会場は年配の方が多く、台湾語が飛び交ってました。
方々であいさつしあってる人たちを見かけました。こういう世界はかなり狭いもののようですね。私の知った顔もなくはなかったですが、声をかけるほどでもなく、一人静かに参加しました。
有名なところでは、金美齢さんをお見かけしました。すてきな帽子をかぶって颯爽としてらっしゃいました。もう81歳なんですね。とてもそんな風には見えなかったなぁ。
で、「語る会」の内容ですが、これは非常に面白かった。
魏さんの語り口は柔和でとてもわかりやすく、さらにバランス感覚もいいし、政治的に流れそうな質問もうま~くさばいてました。(変なところに感心しちゃった)
前半はあらかじめ主催者が用意した質問に魏さんが答えていくスタイル。
後半は参加者からの質問に魏さんが答えるスタイル。参加者からの質問は紙に書いて提出し、その中から進行係が選んでました。中国語への翻訳も必要だし、スムーズに進んで良い進行だったと思います。
印象的だった話。
日本時代のことは3部作で描ききったので次の構想は、400年前のオランダ人が来た頃を描きたいらしい。
台湾人のアイデンティティーを追求して映画を作ってるんだなぁと思いました。
これまでも魏監督のインタビューなどを通して、この人は別に日本に思い入れがあるわけではないと感じてたけど、今回その点がよく理解できた気がします。
日本人としては少しさみしいけど、当たり前のことです。日本も中国も台湾ということをとらえるための装置なんだな~と。
自分を許す
「原諒~ゆるし」というキーワードが何度か出てきたのですが、それについて「自分を許す」ということだと話していました。
これは監督の中ではかなり明快なことと見えて、よどみなく話をしてた。
このテーマについて何年も何年も考えていたのだろうと思いました。
3部作は台湾の日本植民地時代をテーマに扱っていますから「ゆるし」なんていうと、短絡的に「その時代をゆるす」とか「日本の植民地支配を許す」なんてことを考えてしまうわけですけど、そういうことではないらしい。
「他者を許すのではなく自己を許す」ということです。と語っていました。
この点、私自身も目からうろこが落ちるような感覚がありました。
今の日本とアジア各国との関係を考えるとき、この許すかどうかの問題がいつも立ちはだかってます。「中国や韓国は日本を許してない」「日本は原爆を落としたアメリカを許しているのに」「台湾の人たちは親日で日本を許している」とかなんとか。
そしてもう一つ、世代の問題もあります。「前の時代に先祖が犯した罪」についての考え方です。それを糾弾するのか、見ない振りするのか、自分が生まれる前のことだから関係ないとするのか、あるいは自分の罪だと自責の念に駆られるのか・・・・。
このことは、わたしも長年考えてきたことで、監督の視点はとても面白いと思いました。監督が何度も「生まれながらに罪を背負っているのかどうか」という話をしていました。まさに日本人である私も同じことを考えるのです。考えない人もいるのかもしれませんが、考えなければやはり前に進めないこともあるのです。
果たして私自身は私自身のこととして、許しているのかどうか?
まだ答えは出ないけど、とても良い考える視点をもらったと思います。
この3部作のうち実はセデックバレを見ていません。
予告編で首が飛んだりするシーンがあるのを見て、私には無理だなと思ったからです。
2作品だけ見た感じだと、特に「海角七号」は下手な映画です。(KANOは監督が違うし、結構いい感じにできてました)でも台湾でものすごい旋風を巻き起こしました。歴代興行収入の記録を塗り替えたんですからすごいです。台湾のアイデンティティーを考えるという監督の狙いがばっちりと成功しているわけです。
その手法として映画はとてもよかったんだなと思いました。
ストーリーの中に描くのでじわじわ伝わるのでしょう。
その他にも、一番好きな映画は「屋根の上のバイオリン弾き」だとか、是枝監督が気になるとか。エドワードヤン監督の話とかいろいろ面白いこと話してくれました。
きっとそのうちどこかにレポートが掲載されるのではないかと期待しています。
休憩時間には監督に挨拶したりサインもらったり写真撮ったり、にぎやかでした。
言葉の話。
司会者は台湾語で質問してました。
魏さんは大体中国語で答えてましたが、ところどころ台湾語になったりもしてました。たぶん、参加者の中に台湾語話者が多いことを知っていたからでしょう。台湾語になると会場の反応も盛り上がってました。
進行は日本語で行われました。
日本語が母語でないことが明らかな人でも日本語だけで挨拶してましたし。魏さんの話もすべて日本語に翻訳されました。でもどうしても要約気味になるので、少しでも中国語が聞き取れてよかったです。会場の人たちの多くは通訳が不要のようでした。
魏さんの中国語はとてもわかりやすくて、わたしでも半分くらいは理解できました。
でも2時間ずっと聞き続けたので、頭がパンクしそうでした。
私はぼんやりしてて質問できなかったのですが、将棋のシーンのことをきけばよかったなぁと帰る頃になって思いました。