愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

在り来りな…

2006年04月07日 | たっちーの部屋
-在り来りな人
-在り来りな会社
-在り来りな出来事
なんだか、ちょっとマイナスのイメージで
とらえられることが多い「在り来り」。
でも、それって本当に「在り来り」ですか?
ひとりひとりが、かけがえのない今を生きて、
かけがえのない生活をしています。
だから、人間って本当は存在するだけでスペシャル。
自分を大切にしたいですね。
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黒丸と白丸3

2006年04月07日 | ネコの寓話
 こうして、翌日から2匹の入れ替わりの生活が始まりました。
 しかし、白丸の人間不信が直ったわけではありませんし、黒丸みたいに可愛い声でなくことも、ままなりません。一所懸命に、可愛らしく鳴こうとしました。だけどうまくいきません。
「びゃご」
 何だか、風邪をひいて鼻が詰まっているかのようです。
 こんな声で、しかも今にも飛びかかりそうな体勢で鳴いているのですから、人間は寄っくるどころか、みんな逃げてしまいます。その去っていく後ろ姿を見ながら白丸が言いました。
「ちぇっ、だから人間なんて信用できないんだ」
 白丸が、匙を投げかけていると、赤いランドセルを背負った女の子が近付いてきました。白丸は、いつもの癖で、一瞬、逃げ出そうとしましたが、女の子は構わず声をかけてきました。
「今日は、声が変だけど、どうしたの?」
 白丸は、初めて近付いてくれたこの女の子に向かって、精一杯に可愛らしい声で鳴こうとしました。
「びゃう」
 失敗。今日、一番の変な鳴き声。白丸は、これで女の子も逃げていくと思いました。しかし、女の子は逃げませんでした。
「可哀想に。きっと、風邪をひいたのね。今日は、給食のパンを半分を食べないでもってきたんだよ。これを食べて、早く風邪を直してね」
 女の子はそういうと、ポケットから取り出したパンを小さく千切って白丸の前に置きました。
 そして、「じゃあね」と言うとランドセルを揺らしながら、元気よくその場を走り去っていきました。
 白丸は、細かく千切られたパンをぼんやりと眺め、なかなか食べることができませんでした。
 そのころ、黒丸は白丸の指定席の非常階段の踊り場にいました。
「白丸は、うまくやっているかな」
 小さく見える景色の中から白丸を探そうと、鼻先を一所懸命に地上に向けて覗き込んでみましたが見つかりません。
「白丸と入れ替わるなんて言わなければ良かったな」
 場所が変わっても、黒丸はやっぱり人間が気になって仕方ありません。
 黒丸は、寂しくなって誰もいない、非常階段の踊り場で、いつものように可愛らしい声で「にゃー」と一声鳴いて見ましたが空しくなるばかりです。
 黒丸は、諦めて空を見上げました。
 そこには、地上で見るよりずっと広い青空が広がっていました。
「空がこんなに広いなんて、気がつかなかったなあ」
 この場所は、いつも黒丸が過ごしている人通りの多い場所に比べ、とても静かです。
「ちょっと、昼寝でもしてみようか」
 黒丸は、ごろんと横になって静かな眠りにつきました。
(つづく)
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