愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

トラネコのテルと金色のネコじゃらし4

2006年04月20日 | ネコの寓話
 テルは、しばらくの間、ネコじゃらしをくわえたまま(最近はネコじゃらしに夢中になっていたので、子ネコたちと遊んでいなかったな。でも、みんな今でも僕と遊ぶつもりがあるのかな?)とぼんやり考えていました。
 すると、タビはテルの心を読み取ったのでしょう。にっこり笑って言いました。
「大丈夫だよ。以前のように子ネコを呼んでごらん」
 心を読まれたテルは、ドキッとして何も言えずに立ちすくんでいました。
 そんなテルをみたタビが「にゃおーん」と一声。すると、テル以外のネコが呼んでも決して集まることのなかった子ネコたちが、境内の下や植え込みの中などいたるところから、ぞくぞくと集まってきました。その数は、ネコじゃらしを見物にきたネコよりも多いくらいです。
 その中には、いつか、金色のネコじゃらしに触れようとして、テルに追い返された子ネコの姿も見えました。テルは、何だか嬉しくなって、子ネコに向かって、にっこりと微笑みかけました。そして、以前と変わらない優しい口調で、子ネコたちに話しかけました。
「みんな、今日はネコじゃらしで遊ぼうか?」
 そして、テルはくわえている金色のネコじゃらしをポーンと子ネコが遊びやすい広い場所に放りました。子ネコは、びっくりして、テルの顔を見つめていましたが、そのうち、ネコじゃらしの方に駆け寄っていき、みんなで奪い合うようにじゃれつきました。
 ネコじゃらしは、数分ですっかりぼろぼろになってしまいましたが、テルはすごく満足そうです。ネコじゃらしがなくなると、今度は、子ネコたちの中に入って、自分のしっぽにじゃれつかせたり、子ネコたちに乗っかられたりして、もみくちゃにされています。なんだか、とても楽しそうです。
 そんな、テルの姿を見て、タビがやさしく声をかけました。
「楽しそうだね」
 テルは子ネコにもみくちゃくされながら言いました。
「うん、こんな楽しい気持ちになれたのは久しぶりだよ」
 そう言いながら子ネコたちと遊んでいるテルの肩ごしに、タビはぼろぼろになった金色のネコじゃらしを見つけました。
「すっかり、ぼろぼろになってしまったね。金色のネコじゃらし」
 このタビの問いかけに、テルは、ちょっと照れたように口元に笑みを浮かべながら答えました。
「うん、子ネコたちがすごく楽しそうに遊んでくれたよ」
 タビは、テルのその言葉を聞くと、再びひょいと境内に飛び乗りました。そして、テルのほうに振り返り、にっこりと笑うとゆっくりと去っていきました。
(おわり)
作者・たっちーから:何かにとらわれていると、新しいものを手にすることはできません。あなたにとっての金色のネコじゃらしはなんでしょう? 続けていても虚しくなるだけの関係、終わってしまった恋…。ポーンと放り投げて、新しい何かを掴みませんか? 春ですしね!
コメント (2)
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