入れ替わりの生活が1週間が終わりました。
白丸は、だいぶ人間と関れるようになりました。しかし、以前のように疲れてしまっています。
黒丸も、だいぶ人間を気にせず過ごせるようになりました。しかし、やっぱり以前のように疲れてしまっています。
その夜、黒丸は白丸に言いました。
「実は、白丸みたいに、人間を気にしないで過ごせたら気持ちいいだろうなあと、思って1週間を過ごしてみたんだけど、何だかすごく疲れてしまったんだ」
すると、白丸も言いました。
「実は、僕も黒丸みたいに人間に関わったら気持ちがいいだろうなあと、思って1週間を過ごしてみたんだけど、何だかすごく疲れてしまったんだ」
2人とも、そう言ったきり腕組みをして考え込んでしまいました。
そこへ、壁を飛び越えてタビがやってきました。
タビは、話を聞くと2人に訪ねました。
「君たち、この1週間幸せだったの?」
白丸と黒丸は、黙ったままお互いの顔を見つめていました。
翌日、以前のように可愛らしい声で鳴きながら、人間に愛想を振りまいている黒丸がいました。
「もう、風邪は直ったのね」
白丸に初めてパンをくれた女の子が、今日はチーズの包み紙をきれいに剥いて黒丸の前に置きました。
「あら、お友達がいるのね」
いつの間にか、黒丸のすぐ後ろに来ている白丸に気付いて、女の子が言いました。
「今度から2匹分もって来なくちゃね」
女の子は、そう言いながらやさしく黒丸と白丸の頭を交互に撫でた後、いつものように赤いランドセルを揺らしながら元気に走り去っていきました。 その後ろ姿を見ながら、黒丸が白丸に聞きました。
「もう、非常階段の踊り場での昼寝は飽きたのかい?」
「今日はちょっとあの女の子に会いたかっただけさ。すぐに戻るよ」
白丸は、少し照れているようで、後ろ足で首の付け根をかきながら答えまると、そそくさと去っていきました。
そして、いつもの非常階段の踊り場で、お腹の白い毛を空に向けてごろんとしていると、黒丸がやってきました。
「ちょっとの間でいいから、僕もここで昼寝をさせてもらっていいかな」
黒丸は、少し照れているようで、横を向いて顔を洗いながら聞きました。
「僕は、別に構わないけど…」
白丸は、わざと気のない振りをして答えました。
2匹のネコが、非常階段の踊り場で、ごろんと横になりました。
とてもいい天気です。
そんな2匹の様子を、タビが少し離れたところにあるビルの屋上から、優しいまなざしで見つめていました。
(おわり)
作者・たっちーから:人が気になって、人の顔色を気にしてばかりの黒丸。人を拒絶して、かかわりを避けようとする白丸。あなたは、黒丸派? 白丸派? 無理のなく、上手に自分のペースを維持しながら楽しい付き合いを広げて生きたいですね。