愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

ミーとレイ1

2006年05月01日 | ネコの寓話
 長い川の少しだけ大きい河原に、レイという名前のネコが住んでいました。
 レイは、淡いグレーの長くてちょっとカールのかかった毛に全身が包まれています。この辺りでは珍しくイカした感じです。スタイルだって抜群です。大きな瞳にちょっと掛かかっている自慢の長い毛を、風にふわふわっとなびかせれば、みんなうっとりとして振り返ります。
「いつ見ても、レイは素敵だなぁ」
 男の子たちだけでなく女の子からも、そんな言葉があちこちから聞こえてきます。レイは、こんなふうにみんなに注目されるのが、楽しくて仕方がありません。
「男の子たちはみんな私に好かれたいと思っているし、女の子たちはみんな私に憧れているんだわ」
 レイは、そう考えていました。
 茶トラのミーも、レイに憧れていました。
「いいなぁ、レイはあんなにふさふさの素敵な毛に、スタイルだって抜群だし…。私は、ありきたりな茶トラで、スタイルだって良くないし…」
 そう思いながら、ミーはいつもレイを羨まし気に見つめています。でも、レイは、ミーのことは、頼めば何でもやってくれる便利な娘ぐらいにしか思っていませんでした。
「ミー、三丁目のボスに伝言をお願い!」
「ミー、ちょっとお腹空いたんだけど」
 レイは、よくこんなふうにミーを召し使いのように扱います。
 でも、ミーは、レイの言いなりです。言いなりになることで、もっとレイと仲良くなれると思っていました。仲良くなれば、何だか自分もレイのように素敵なネコになれるような気がしていたのです。だから、一所懸命にレイの言うことを聞いていました。
 でも、いくらレイの言いなりになっていても、身体を包んでいる毛の色が変わるはずもありません。
 ミーは、日に日にいらいらしてきました。そして、次第にレイに対して、やきもちを焼くようになっていきました。
 ある日、ミーはレイに向かって、それまでにないきつく厳しい口調で言いました。
「あなた、みんなにちやほやされて、最近、少しいい気になっているんじゃない?」
 レイは、今まで召し使いのように扱っていたミーの反乱に一瞬戸惑いましたが、すぐに怒りが湧いてきました。そして、嫌みっぽく答えました。
「別にいい気になんてなっていないわよ。ただ歩いているだけで、みんな勝手にちやほやするんだから、しょうがないじゃない」
「あら、それは知らなかったわ。ただ、私はあなたのことを思って忠告しただけよ」
「あら、それはどうもありがとう。だけど、大きなお世話ね」
 レイもミーも、だいぶ感情的になっているようです。
 2匹は、しばらくにらみ合った後、同時に「ふん」というと、反対の方向に歩いていきました。
(つづく)
コメント (2)
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