愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

ミミとチチ2

2006年05月21日 | ネコの寓話
「チチを探しに行こう」
 ミミは、そう決心しました。
 でも、どこを探していいかわかりません。
 あてもなく、ふらふらと街を歩き続けました。
 来る日も来る日も、ひたすらチチを探して歩きました。
 すると、ある夜、一匹の猫に出会いました。
 真っ白い毛に4本の足下としっぽの先だけが、まるでタビを履いているようにグレーの毛が生えている猫、タビです。
「どこへ行くんだい?」
 タビはミミにやさしく声をかけました。
「弟のチチがいなくなってしまったので、探しているんです。僕と同じキジ猫なんですけど見かけませんでしたか?」
 タビは、ミミの言葉を聴くと、すべてを察したようでした。
 そして、やさしくミミに言いました。
「目をつぶってごらん」
 ミミが目を閉じたことを確認すると、タビは「あおーん」と一声鳴きました。するとチチの姿が見えました。
 その姿は、すっかり病気も治り、健康を取り戻しているようでした。
「チチ、やっと会えたね。どこにいるの? もう病気は治ったの? 僕、迎えに行くから一緒に帰ろう」
 ミミは声をかけましたが、チチは笑っているだけで何も応えてくれません。
 何度も何度も「チチ、チチ」と呼びかけました。
 すると、チチはやさしい声でいいました。
「ミミ兄さん、僕はどこにも行ってないよ。ずーっと側にいるよ」
 チチはそういうと、フッと姿を消してしまいました。
 ミミはゆっくり目を開けました。タビの姿はありませんでしたが、目を閉じる前と変わらない景色がありました。とっても長い時間目を閉じていたような気もしますし、ほんとちょっとのわずかな時間だったような気もします。でも、ミミは、チチが側にいるような気がしました。そして、耳を澄ますと「ずーっと側にいるよ」といったチチの声が聞こえてくるような気がしました。
 街が徐々に明るくなり始めました。
 ミミは、大きく伸びをして
「じゃあ、帰ろうか。チチ」
 と囁くように言うと、ゆっくりと朝日を身体いっぱいに浴びてゆっくりとした足取りで家路に着きました
 その姿を、タビがビルの屋上から笑顔で見送っていました。
(おわり)

作者・たっちーから:今回は「死別」という、とても重たいテーマを扱いました。不十分な点は、私の未熟さと文章力のなさからくるものです。ご了承ください。
生きているとさまざまな「別れ」と出会います。別れを乗り越えることで、強さを身につけながら、成長していくのだと思います。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする