愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

ミーとレイ4

2006年05月04日 | ネコの寓話
 ミーは、間一髪のところで、助かりました。
 助けるのがもう少し遅れていたら、死んでしまったことでしょう。
 ミーは、泣きながら、何度も何度もレイにお礼を言った後、ほっとして気絶するように倒れてしまいました。レイは、その様子を見ると、足早にその場を立ち去っていきました。
 しばらくして、ミーが目を覚ますと、そこにはタビがいました。
「レイが、火事から君を助け出すところを見たんだ。怪我はないかい?」
 ミーは、タビの声を聞いくと、何だか安心してぽろぽろと涙を流しながら大きな声で泣いていました。
 そのころ、レイはひどく落ち込んでいました。
 心配していたようにレイの自慢の長い毛は炎に焼かれ、ぼろぼろになっていました。その姿をみんなに見られるのが嫌で、ミーを助け出すと、逃げるようにその場を走り去っていったのでした。
 レイは、川面に自分の姿を何度も何度も写して見ました。でも何度見ても、その姿はやっぱりぼろぼろです。レイは、小さく丸まって何時間もしくしくと泣き続けていました。
「これで、もうだれも私のことを素敵だなんて言ってくれないわ」
 寂し気に、ぽつりとそう囁くと、1匹のネコが後ろから声をかけてきました。
「大丈夫かい? ケガはないかい?」
 その声の主は、タビでした。
「あっちに行って!」
レイは、ぼろぼろになった自分の姿を見られたくなくて、草むらに身を隠しました。
 タビは、レイが身を隠す動きを見て、後ろ足に怪我を負っていることに気付きました。
「後ろ足を怪我しているようだね」
「うるさいわね。放っておいてよ。もう、私なんか、もうどうなってもいいのよ」
 レイが、自棄になったようにそう叫ぶと、タビの後ろからミーゆっくりと姿を表わしました。
「レイ、助けてくれて本当にありがとう。私のせいでこんなことになってしまって、ごめんね」
 ミーはそう言うと、ゆっくりとレイに近付き、怪我をしている後ろ足を優しく嘗め始めました。ミーは「ありがとう」と「ごめんね」を繰り返しながら、優しく、優しく、ケガをした後ろ足を嘗め続けました。すると、レイもだいぶ落ち着きを取り戻したようでした。
「いいのよ、ミー。ありがとう」
 2匹のネコは、かばい合うように身を寄せ合い、静かにやさしい眠りにつきました。
 タビは、その様子を見ると、ゆっくりと川下の方に去っていきました。
(おわり)

作者たっちーから:本当に大事なもの・大切なものは、目には見えません。レイは、大切にしていた自慢の長い毛を無くしてしまいましたが、変わりに目に見えない本当に大切なものを手に入れたのかもしれません。
コメント (2)
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