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90年代初頭までの少女雑誌「マイバースデイ」系の雑誌では、
ギリシャ神話・北欧神話をはじめとした世界中の神話や伝承、
妖精伝説が少女向けの表現で紹介され、またそうした神話を
モチーフとしたカードやポスターの付録があって、それを使って
占いなどが出来るようになっていました。
全て占いに還元してしまうのが必ずしも良いとは言えないの
ですが、わたくしなどはそうしたものに接する事で神話の
世界に関心を持ち、自分でも調べて読むようになった経緯が
ありますので、やはり子供の頃に最初に接する情報の選択と
いうものが大切なのではないかと感じています。
その同誌も、バブル景気から不況に転じた少し後の93年辺りから
そうした神話や伝説などに関する記事や付録はなくなり、
代わりに「体相でわかるあなたの愛と性」だとか、「恋愛
講座」だとか、「大人の女になる」だとか、そうした種類の
記事でいっぱいになってしまいました。
この時期辺りから、10代の少女と、20代30代の女性得る情報の
種類の境界というのが非常に曖昧になってきたように思うのですが、
とにかく雑誌が売れる事が第一になってしまって、精神性や想像力を
育て、更なる探求に続く事が出来るような記事をなくし、代わりに
原稿が集め易く、刺激として最も手っ取り早い大人の恋愛に関する
記事ばかりを集めて提供してしまう路線に切り替えられた事で、
とても精神的に貧しくなってしまった印象を受けました。
完全な無神論者であっても、少なくとも神話や伝説が単なる教養に
留まるものではなく、人類の創造性や芸術のインスピレーションに
なった事は否定出来ないと思うのですが、昔のような児童向けの
神話の解説本なども非常に少なくなってしまって、代わりにお洒落
だとか恋愛だとかの情報や漫画ばかりになってしまった現在、
精神的なアンバランスを起こして心に問題を抱える子供が増えても
おかしくはないのではないかとも感じます。
画像の方は90年の「マイバースデイ」系の雑誌の付録で、北欧
神話の「シグルドリーヴァの伝説」を基にして考案された「勝利の
護符」との事ですが、この中央の「防御の」ルーン文字に関連した、
このような伝承があるそうです。
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【伝説と物語】
沼地で今でも語られている、断片的な話しがある。
若い娘が父親の剣を求めてやってきた。
父親は墓に眠って久しく、汚れなき骨は地球照を受けて光り、剣も遺体に
使える様に冷たく横たわっていた。
彼は人々に慕われ、娘からも愛され、尊敬された。
だが彼は死に、国全体は戦火の中にあった。
海の向うから敵がやって来て、無防備な国を襲ったのだ。
それが娘が沼に現れた理由だった。
ここまでは百にのぼる話しのさわりなので、特に珍しくもない。
ただ、少し代わった点がある。
娘が求めている剣は、人間が作ったものではなかった。
娘の曽祖父の時代でさえ、既に古い剣だった。
中空の丘の中から出てきたその剣は、計り知れぬほどの昔に、暗闇の中で
熟練の職人が作ったのだという。
娘は沼地に着いた。
奇妙な水が水上を漂い、地上にある木の幹は滑らかで、骨のようだった。
光を追っていくと中空の丘があり、死者達が待っていた。
死者達はこう言った。
「剣は娘のものだが、その前に剣さばきを学ばねばならない。
剣を正しく使えば、国を救えるだろう。」
その後、長く尖ったアシの葉がこすれ合う音がする中、声が聞こえ、
大いなる秘密をただ一人知る権利を持つ娘に伝えた。
しかしあなた方には、こっそり教えよう。
もしかしたら、いい事があるかもしれない。
決して怒りに任せて剣を振り上げたり、敵に突き刺してはいけない。
もしこれを破れば、剣は折れて、再び地中に埋もれるだろう。
剣は先祖の祝福と共に、静かに、高々と掲げなくてはならない。
国に戻り、娘は言われた通りにした。
すると、見ている敵軍の前で、妖精の国の剣が歌いだした。
敵は黙って撤退し、国への攻撃は収まった。
賢い娘の掲げた剣の示す妖精の国の意思に、誰が立ち向かえるだろうか?
こうして剣は再び持ち主を得た。
娘は国の平和を守ると誓った男達に、この偉大な剣を喜んで貸した。
しかし、剣は必ず男達の手からすべり落ち、地中へ、そして娘の国へ
戻って行った。
そしてついに、娘は自分の娘に剣を渡し、その娘も自分の娘に託した。
そのため、今日剣の秘密を知りたければ(近頃は貸す気がないようだが)、
沼地の女性――あなたは別の名前で彼女を知っているかもしれない――
を探し出し、それを使わないと約束するしかない。
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「待ち合わせから抜け出せない」
http://jp.youtube.com/watch?v=eNhqFlVGCoI&feature=related
JR東日本、新潟地区の歌です。