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90年代初頭に、「マイバースデイ」系誌上で、「月のしずく」
というものについて掲載されていた事を以前書かせて頂き
ましたが、それら四種類の月光の色のものの他に、12月だけに
注がれる「月のしずく」というものについても、別の機会に
書かれていました。
その「月のしずく」というのは、満月と下弦の中間に当たる
「泉月」の月の時に注がれるという説明でした。
本年12月の「泉月」は、12月16日に当たります。
以下本文です。
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【氷玉月の聖夜】
美しい氷玉月を瞳に映す事が出来るのは、晩秋から冬にかかる
十三夜と泉月の頃、という極めて短い期間である。
卵形をした月が、透き通るようなレモン色となり、その縁を
薄いブルー(あたかも氷を思わせるような)の光が覆う、そんな
月相の事である。
氷玉月の月精(月に宿る精霊)の名は、シャイク。
ロイヤルブルーの瞳の美少年。
華奢な割には周囲を圧倒してしまう、知的で冷静沈着なムードに
満ち溢れている。
しかし普段は極めて穏やかで、優しい。
月光が織りなす美しい柱にもたれかけ、優雅に竪琴を弾き、
恋の歌を口ずさむ……
うっとりするような澄んだ声の響きに、月界も下界も全て戦いを
忘れ、愛を求めて安堵の眠りにつくのだ、という。
そのシャイクが、チャジャという月剣士に出逢ったのも、こんな
寒い冬の夜だった。
月剣士とは、正義の戦いに挑む月の戦士。
チャジャは千年もの間、勇敢に戦い続けた。
しかし再び平和が訪れた時、彼の力が更に強大になる事を
恐れた月精王は、安易にもその少年を、「北の宮」に幽閉して
しまったのだ。
そう、次の千年間、決して解ける事のない強い魔法で……
可哀想なチャジャ、自分の悲運を呪い、心なき月精王を心底
憎んだ。
しかし、シャイクが彼を救った。
何者をも信じられなくなり、数百年閉ざしたままだった彼の心を、
その青年が初めて開いたのである。
月界の者達は「氷玉月の魔法だ」と口々に噂した。
そう、氷玉月には、心に宿る怒りや憎しみの感情を溶かしてしまう
力がある。
厳しい冬が到来すると共に、氷玉月のシャイクは、傷つき
歪めてしまった人間の意識の中に、包み込むような、美しい
竪琴の音色を響かせる。
邪悪な意識は全て過去の悪夢となるよう、楽しい思い出だけに
光を当てて…
再び正しい人生の軌道を歩んでいけるように。
氷玉月の聖夜は、12月の泉月から三日間。
その期間は、氷玉月の精霊達が地上に、幸せのエキスをいっぱい
つめた、薄青色の月のしずくを思い切り降り注ぐ……
愛を忘れ、戦う事しか考えなくなった人間の心に、もう一度豊かで
優美な感情を呼び戻すために……
今年の聖夜も、シャイクの澄んだ歌声が、月光と素晴らしい
ハーモニーを奏でてくれる事だろう。
そしてあなたの心の傷口に、そっと薄青色のしずくを降り注ぎ、
哀しい思いを癒してくれるに違いない。
優しく穏やかに微笑むシャイクに、心の壁を越えたチャジャは、
感謝の祈りを今日も捧げる。
そうして氷玉月の聖夜は過ぎていくのだ。
……
もし、あなたが心にコントロールし切れない憎悪や、短気な性格に
お悩みなら、氷玉月の夜に、心から願いを込めて魔法をかけて。
十二月の十三夜か泉月の時、そう、この頃はもう夕方から
東の地平線に昇ってきますから、容易に見つけられるはず。
レモン色となった氷玉月をまっすぐに見つめ、右手を喉の下
辺りにそっと当てて、こう言うの。
「氷玉月のシャイク、幸せの薄青色のしずくをどうか私に。
モシューム・ヤワラ・プリーズ。」
「モシューム」とは、月の呪文の言葉で「どうぞお願い」という
意味。
英語の「プリーズ」よね。
「ヤワラ」は相手を尊重する時に用いる言葉です。
この、「モシューム・ヤワラ」という言葉を入れれば、あなたなりの
言い方でOKです。
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