市民の苦難に応える補正予算へ・・・提案と指摘
12月20日、熊本市議会最終日、「令和5年度熊本市一般会計補正予算」ならびに「国民健康保険条例の一部改正」について、問題点を指摘し、住民要求実現の立場で積極的な提案もして、討論を行いました。
【評価する点】
西消防署の西区への移転は前進面として評価し、太洋火災から50年の節目、さらなる消防力の強化を要望
西消防署移転事業費273万円が提案され、すべての区それぞれに消防署が設置される運びとなりました。太洋デパート火災から50年の節目の年に、長年の課題が解決に向けて動き出したことは評価する点です。
現在消防局では、太洋デパート火災の教訓を風化させない取り組みとして、要綱を制定し、毎年11月29日を「消防避難訓練の日」に制定する取り組みもすすめられています。しめくくり質疑で指摘したように、今後重要となる中央署の体制拡充の検討を期待したいと思います。
【問題点】
低所得者への支援は、市民に寄り添い、市独自策の実施を
物価高騰対策として、低所得世帯へ1世帯7万円の給付が予算化され、支給時期についても私どもの要望が実現する形で、1カ月前倒し、2月からの支給になりました。それがさらに、1月末からの支給へと前倒しになりました。
しかし、長期に止まらない物価高騰の中で、根拠も示されていない7万円、その時限りの支給というのは、到底実際の物価高騰に追い付いていないというのが実情です。賃金が上がらない、年金が減る、社会保障の負担が次々と増えていく、逆進性の強い消費税はインボイス制度の実施によって中小零細事事業者の負担が一層重くなっています。こうした、国がやるべき点が行われていないことが一番の大きな問題です。
同時に、様々な機会をとらえて提案してきた熊本市独自の支援策が待たれています。
かなり多くの高齢者が月額10万円にも満たない年金額で、100円、200円を節約しながら、遊ぶ楽しみも、食べる楽しみもなく、古くなった家の修理にすら手が付かないという切羽詰まった暮らしをされているというのもマスコミで紹介されていました。こうした、日本の高齢者、低所得世帯の現実をしっかりと見据えるならば、市民の苦難に寄り添い、困窮世帯、中小事業者への独自支援の必要性ははっきりしています。
京都府は、民間団体が物価高騰の影響を受けて生活に困窮する世帯への支援物資の無償提供に対し、1団体30万円以内の食料品・生活必需品を支援する事業を「年末年始生活支援事業」としてこの12月に行っています。また、岩手県は福祉灯油を1世帯7000円に拡充しましたが、総務省は都道府県・市町村の福祉灯油などへの特別交付税措置を2021年度か年度の制度設計も現在行っています。こうした国の支援も活用した、様々な自治体独自策を参考に、熊本市でもぜひ実施してほしいものです。
国土強靭化による高規格道路中心の土木事業でなく、生活道路や身近な公園の改修・災害対応などの充実を
経済対策として、土木分野他で防災・減災・国土強靭化等対応経費約33億円が提案されました。道路・河川・公園等の整備を促進してすすめるための国補助事業で、補助率も高く、後年度の交付税措置を含めれば、本市負担はかなり少ない、財政上は効果的な制度です。しかし、その約93%を占める道路関連事業費30億6490万円は、西環状線や国道501号等の高規格道路が中心です。
政令市移行によって、道路事業が高規格道路整備に予算が集中し、身近な生活道路予算が限られていること、高規格道路は用地買収方式でどんどん進められていくにもかかわらず、生活道路はどんなに狭隘で危険であっても買収方式で拡幅されることがほとんどないことは、全く対照的な状況です。また、都市防災・減災・国土強靭化は、大規模災害に備えることを目的としていますが、公園では遊具の改修にとどまり、災害時に一番必要となる身近な公園のトイレの改修などが補助対象外です。
33億円の大きな補正額であるだけに、生活道路の改修や身近な公園のトイレ改修など、必要な事業が補助対象となるよう国へ働きかけるとともに、その内容・必要性について、今一度、住民の視点での検証が必要である点を指摘しました。
問題だらけのマイナンバーカード推進のための「マイナンバーセンター予算」
債務負担行為に、2024年度のマイナンバーセンター運営のための事業費が業務委託で4億1290万円予算化されています。中央区マイナンバーセンターを縮小し、サクラマチサテライトは撤退して中心市街地に新センターを設置してマイナンバーカードの更なる普及・利活用をすすめていくものです。
しかし、マイナンバーカードをめぐっては、全国的に、本人以外の公的給付金受取口座の誤登録が約14万件、マイナ保険証に他人情報が登録されたケースが7400件を超え、他人の年金記録の閲覧、2024年秋からの保険証との一体化や2024年度中の免許証との一体化などが含まれており、保険証との一体化では、窓口で医療費を全額請求される、他人の医療情報とひも付けされるトラブルの続出、無保険扱いが多発するなど、命にかかわる重大な危険が指摘されています。そもそもマイナンバー制度は、医療、年金、介護など人生で受ける全行政サービスと、個人の金融口座、資産をひも付けし、国が管理することによって、国民の所得・資産・社会保障給付を把握し、国民への徴税強化・給付削減を押しつけるためでした。しかも、大量の個人情報をビジネスに利用しようとする特定企業の利益を後押しする動きも加速しており、国民の大切な個人情報が国や特定企業の利益のためにと利用されていきます。全額国費による予算とは言え、住民への不利益を考えると到底容認できません。
出産した被保険者の保険料軽減は、高齢者への負担増と一体でなく、国が財源を出して実施を
国民健康保険料条例の改正は、出産した被保険者の保険料の所得割・均等割を出産前後の4カ月間免除するものですが、その保険料減額は、今年5月に成立した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」に伴うもので、持続可能な社会保障制度を構築するためということで、現役世代の負担を軽減しつつ、高齢者の保険料を引き上げる、世代間の公平という名のもとに高齢者へのとんでもない負担増が押し付けられるという内容と一体である点が問題です。
さらには、各種保険への国庫負担が910億円も削減され、全世代型社会保障と言いながら、その中身は、社会保障に対する国の財政支出、責任を大きく後退させるものです。ささやかな現役世代への保険料軽減の一方で、協会けんぽや共済組合の負担も増やされるために、事実上は、現役世代にも負担を押し付けるものです。
加えて、「都道府県の保険料水準の平準化」の名の下で、自治体が独自に行っている国民健康保険料の軽減をやめさせることも打ち出されています。目先のささやかな軽減策の裏には、医療保険全体に対する国の責任放棄の仕組みがあり、特に年金が減る中、格差と貧困も広がって困窮した高齢者の暮らしをよそに、高齢者への負担増を押し付けるという国の社会保障制度改悪は容認できません。
出産した被保険者の保険料負担を軽減するというのであれば、年金は削って、医療費も保険料も負担を増やすこのようなやり方でなく、国が税金で財源をねん出して、現役も高齢者も、全世代が安心できるような社会保障制度をこそ、構築すべきです。
以上のような問題点を指摘しました。
12月20日、熊本市議会最終日、「令和5年度熊本市一般会計補正予算」ならびに「国民健康保険条例の一部改正」について、問題点を指摘し、住民要求実現の立場で積極的な提案もして、討論を行いました。
【評価する点】
西消防署の西区への移転は前進面として評価し、太洋火災から50年の節目、さらなる消防力の強化を要望
西消防署移転事業費273万円が提案され、すべての区それぞれに消防署が設置される運びとなりました。太洋デパート火災から50年の節目の年に、長年の課題が解決に向けて動き出したことは評価する点です。
現在消防局では、太洋デパート火災の教訓を風化させない取り組みとして、要綱を制定し、毎年11月29日を「消防避難訓練の日」に制定する取り組みもすすめられています。しめくくり質疑で指摘したように、今後重要となる中央署の体制拡充の検討を期待したいと思います。
【問題点】
低所得者への支援は、市民に寄り添い、市独自策の実施を
物価高騰対策として、低所得世帯へ1世帯7万円の給付が予算化され、支給時期についても私どもの要望が実現する形で、1カ月前倒し、2月からの支給になりました。それがさらに、1月末からの支給へと前倒しになりました。
しかし、長期に止まらない物価高騰の中で、根拠も示されていない7万円、その時限りの支給というのは、到底実際の物価高騰に追い付いていないというのが実情です。賃金が上がらない、年金が減る、社会保障の負担が次々と増えていく、逆進性の強い消費税はインボイス制度の実施によって中小零細事事業者の負担が一層重くなっています。こうした、国がやるべき点が行われていないことが一番の大きな問題です。
同時に、様々な機会をとらえて提案してきた熊本市独自の支援策が待たれています。
かなり多くの高齢者が月額10万円にも満たない年金額で、100円、200円を節約しながら、遊ぶ楽しみも、食べる楽しみもなく、古くなった家の修理にすら手が付かないという切羽詰まった暮らしをされているというのもマスコミで紹介されていました。こうした、日本の高齢者、低所得世帯の現実をしっかりと見据えるならば、市民の苦難に寄り添い、困窮世帯、中小事業者への独自支援の必要性ははっきりしています。
京都府は、民間団体が物価高騰の影響を受けて生活に困窮する世帯への支援物資の無償提供に対し、1団体30万円以内の食料品・生活必需品を支援する事業を「年末年始生活支援事業」としてこの12月に行っています。また、岩手県は福祉灯油を1世帯7000円に拡充しましたが、総務省は都道府県・市町村の福祉灯油などへの特別交付税措置を2021年度か年度の制度設計も現在行っています。こうした国の支援も活用した、様々な自治体独自策を参考に、熊本市でもぜひ実施してほしいものです。
国土強靭化による高規格道路中心の土木事業でなく、生活道路や身近な公園の改修・災害対応などの充実を
経済対策として、土木分野他で防災・減災・国土強靭化等対応経費約33億円が提案されました。道路・河川・公園等の整備を促進してすすめるための国補助事業で、補助率も高く、後年度の交付税措置を含めれば、本市負担はかなり少ない、財政上は効果的な制度です。しかし、その約93%を占める道路関連事業費30億6490万円は、西環状線や国道501号等の高規格道路が中心です。
政令市移行によって、道路事業が高規格道路整備に予算が集中し、身近な生活道路予算が限られていること、高規格道路は用地買収方式でどんどん進められていくにもかかわらず、生活道路はどんなに狭隘で危険であっても買収方式で拡幅されることがほとんどないことは、全く対照的な状況です。また、都市防災・減災・国土強靭化は、大規模災害に備えることを目的としていますが、公園では遊具の改修にとどまり、災害時に一番必要となる身近な公園のトイレの改修などが補助対象外です。
33億円の大きな補正額であるだけに、生活道路の改修や身近な公園のトイレ改修など、必要な事業が補助対象となるよう国へ働きかけるとともに、その内容・必要性について、今一度、住民の視点での検証が必要である点を指摘しました。
問題だらけのマイナンバーカード推進のための「マイナンバーセンター予算」
債務負担行為に、2024年度のマイナンバーセンター運営のための事業費が業務委託で4億1290万円予算化されています。中央区マイナンバーセンターを縮小し、サクラマチサテライトは撤退して中心市街地に新センターを設置してマイナンバーカードの更なる普及・利活用をすすめていくものです。
しかし、マイナンバーカードをめぐっては、全国的に、本人以外の公的給付金受取口座の誤登録が約14万件、マイナ保険証に他人情報が登録されたケースが7400件を超え、他人の年金記録の閲覧、2024年秋からの保険証との一体化や2024年度中の免許証との一体化などが含まれており、保険証との一体化では、窓口で医療費を全額請求される、他人の医療情報とひも付けされるトラブルの続出、無保険扱いが多発するなど、命にかかわる重大な危険が指摘されています。そもそもマイナンバー制度は、医療、年金、介護など人生で受ける全行政サービスと、個人の金融口座、資産をひも付けし、国が管理することによって、国民の所得・資産・社会保障給付を把握し、国民への徴税強化・給付削減を押しつけるためでした。しかも、大量の個人情報をビジネスに利用しようとする特定企業の利益を後押しする動きも加速しており、国民の大切な個人情報が国や特定企業の利益のためにと利用されていきます。全額国費による予算とは言え、住民への不利益を考えると到底容認できません。
出産した被保険者の保険料軽減は、高齢者への負担増と一体でなく、国が財源を出して実施を
国民健康保険料条例の改正は、出産した被保険者の保険料の所得割・均等割を出産前後の4カ月間免除するものですが、その保険料減額は、今年5月に成立した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」に伴うもので、持続可能な社会保障制度を構築するためということで、現役世代の負担を軽減しつつ、高齢者の保険料を引き上げる、世代間の公平という名のもとに高齢者へのとんでもない負担増が押し付けられるという内容と一体である点が問題です。
さらには、各種保険への国庫負担が910億円も削減され、全世代型社会保障と言いながら、その中身は、社会保障に対する国の財政支出、責任を大きく後退させるものです。ささやかな現役世代への保険料軽減の一方で、協会けんぽや共済組合の負担も増やされるために、事実上は、現役世代にも負担を押し付けるものです。
加えて、「都道府県の保険料水準の平準化」の名の下で、自治体が独自に行っている国民健康保険料の軽減をやめさせることも打ち出されています。目先のささやかな軽減策の裏には、医療保険全体に対する国の責任放棄の仕組みがあり、特に年金が減る中、格差と貧困も広がって困窮した高齢者の暮らしをよそに、高齢者への負担増を押し付けるという国の社会保障制度改悪は容認できません。
出産した被保険者の保険料負担を軽減するというのであれば、年金は削って、医療費も保険料も負担を増やすこのようなやり方でなく、国が税金で財源をねん出して、現役も高齢者も、全世代が安心できるような社会保障制度をこそ、構築すべきです。
以上のような問題点を指摘しました。