憲法25条は第1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権を定めており、住まいがなければ、健康で文化的な最低限度の生活を送ることはできません。住宅は誰もが必要とするもので、公共性が極めて高いにもかかわらず、現代社会では個人による所有が推奨され(私有化)、賃貸については需要と供給の市場原理が適用され(市場化)、不動産は投資の対象となっています(金融化)。これを当たり前としてはいけないと私は思っています。住宅の公共性をにわかに取り戻すことはできませんが、命と暮らしを守る最前線にある自治体にできることはあります。選挙公約では、住まいを失った人や失いかけている人に対して、安定した住まいの確保を最優先とする「ハウジングファースト」の理念にそった支援をおこない、民間賃貸住宅に暮らす低所得者を対象にした家賃補助制度を創設することを掲げました。「住むことは権利だ」という視点に立つと、住宅政策は大きく変わってきます。杉並区は他区と比べて住宅全体に占める公営住宅の数が少なく(23区中19番目)、入居希望者の倍率は5倍です。本来なら公正な価格で安心して住むことができる公営住宅を増やしていかなければいけないのですが、新たな公営住宅の建設が困難な中で、住宅弱者を守る知恵を絞らなくてはなりません。
本日の集会が、「住むことは権利」という視点にたった住宅政策のあり方を具体的に話し合う大事な場である認識しています。皆さまの経験、知見、政策提案が住まいを取り巻く公共政策の立案に活かされること、今日の活発な議論を期待申し上げ、連帯のご挨拶とさせていただきます。 2022年10月19日 杉並区長 岸本聡子
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