在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Ermafrodito, Mostra Bernini ヘルマアフロディトス像 ボルゲーゼ美術館のベルニーニ展

2017-12-21 21:06:00 | 何故か突然アート
Ermafrodito, Mostra Bernini alla Galleria Borghese
ヘルマフロディトスとボルゲーゼ美術館のベルニーニ展



ヘルマフロディトス(ヘルマプロディトス)は、ギリシア神話に登場する神。
両性具有の神として知られている。

お父さんはヘルメス、お母さんはアフロディテ(ヴィーナス)、たいへんな美少年であったようだが、ニンフのサルマキスに恋され、襲われそうになった(笑)のを拒否し、拒否されたサルマキスがゼウスに頼んで永久に結合してもらったということらしい。

そこで、見た目は美少女のように美しく、しかし、男性の体と女性の体の両方を備えている。

さて、ボルゲーゼ美術館には、1階にあるヘルマフロディトスの間に、長らく、1体のヘルマフロディトス像が置かれていた。


この日は実際になかったので、この写真はHPから

壁際に沿って置かれていたので、両性具有、と言われても、美しい少女のような後姿だけした見えず、ふーーん、そう、としか思えなかった。



さて、ここで、11月にボルゲーゼ美術館で始まったベルニーニ展。

ところが、少し前、久々にボルゲーゼ美術館に行ったところ、それがなくなり、代わりに、似て非なるヘルマアフロディトス像が飾ってあった。

それも、中央ではないが、向こう側へ回れる位置に、である。

像はそっくり、たぶんほとんど同じだとわかったが、マットレスが違う。



後ろ(つまり前)に回るとこんな感じ
ほんとだー


ちょうどベルニーニ展、ただでさえ狭い所、多くの作品が追加されているので、どれが常設展のものか、特別展のものか非常に分かりにくい。

以前あった像は何度も見ているので、確信があったが、これは、あっちとこっちの作品が交換されて展示されているのかもしれないと思った。

そこで、改めて、ボルゲーゼ美術館の作品解説、を見てみる。
すると、以下の説明がある。

部屋の名前は、有名なヘルマフロディトス像に由来し、その像は、ポリクレートのオリジナルの、2世紀(注:紀元後)のローマ時代のコピーで、現在、ルーブル美術館に展示されている。作品は、1609年、サンタ・マリア・ヴィットリア教会(注:テルミニ駅近く)建設中に発見され、1620年にジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598−1680)によりマットレスに自然に横たわっているように変えられた。
1807年、ナポレオンに古代コレクションが売却されたあと、パーロ(注:ギリシャ)の大理石で造られた似ている像(2世紀)で、アンドレア・ボルゴンディ(1721?−1789?)がベルニーニのものに似せて修復したアフロヘルマフロディトス像に置き換えられえた。

つまり、今回のベルニーニ展で、以前あった本物のアフロヘルマディトス像が戻ってきたということになる。

と言うことは、もしかしたらルーブルに、置き換えられたものが展示されているのかも??
(それとも、単に倉庫に眠っているだけか。。。)

ルーブル美術館の方の作品解説を見てみる。

説明は似ているが、
ディオクレティアヌス浴場付近で発見ー確かにそうと言える
マットレスの制作を依頼したのはシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿ーたぶんそうだろう
ヘルマフロディトス像自体の修復を手がけたのはダヴィッド・ラリク
ナポレオンが義理の弟にあたるカミッロ・ボルゲーゼから購入しているーナポレオンの妹はボルゲーゼ家に嫁いでいる

しかし。。。。。。
前3−前1世紀
になっている。

あれー、前と後では違うのよー

と言いたいのだが、たった100−200年程度しか違わないからいい??

ということで、今回のボルゲーゼ美術館のベルニーニ展では、あっちこっちから運ばれてきたベルニーニの作品が展示されている。(ルーブルからのものが多い)

もともとボルゲーゼ美術館には、アポロとダフネ、プロセルピーナの略奪、ダビデを始めとする多くのベルニーニの作品が展示されているが、所狭しと、またまた彼の作品が置かれている。

ベルニーニファンなら、今回のベルニーニ展は必見。

ボルゲーゼ美術館は2時間交代の完全予約制なので、当日ふらっと行ってもおそらく入れない。
ネットで事前に予約する必要があるが、同じ行くなら今がいい。

ベルニーニ展は2018年2月4日まで。
急いでね〜

Venezia Biennale Arte 2017 ヴェネツィア ビエンナーレ アート 2017 続き

2017-12-01 20:21:36 | 何故か突然アート
ヴェネチアのビエンナーレ・アート2017の続き

他にも写真は撮ったのだが、うまく撮りにくいもの、とってもよくわからないものなどなどはパスしている。

こちらはジャルディーノの方。


フィボナッチを思わせる


ロシア館。下は人、人、人。


同じく。誰が隠れているか書いてある。


携帯画面で、隠れている人の姿が見えるという趣向。。。


日本館。 逆さま。下の穴から人が顔を出す。。。はずかし〜


ネオンアート


私も穴を開けたい。


ここまで精巧に開けるのは疲れそう。


噴水


絵の中の本


いたずら書きをしたくなる


よく見ると名画がいっぱい見えてくる


君は名画をいくつ知っているか。。。


印刷したメモ用紙的なものを貼り付けている

今年の花形。場外の作品。今年一番の話題作。
タイトルは「サポート」だが、みんな「手」と呼んでいた。
本物を見るだけの価値あり。


ヴァポレットから見るとこんな感じ



下から見るとど迫力







カ・ドーロの隣の宮殿で、ホテルらしい。
ああ、泊まってみたい。
窓から見たらもっとど迫力だろう。

Venezia Arte Biennale 2017 ヴェネツィア ビエンナーレ アート 2017

2017-12-01 19:50:02 | 何故か突然アート
Biennale Arte 2017 Venezia



ギリギリ、駆け込みセーフでヴェネチアのビエンナーレに行った。
正確にはビエンナーレ・アート。
最終日。

今年で3回目。
隔年なので、3年目ではない。

ヴェネチアのビエンナーレは、隔年で、アート年と建築年が開催されている。
建築年もぜひ行きたいのではあるが、さすがにローマからなかなか時間が取れない。
しかし、アート年は面白いのでぜひ行きたいと思っている。
今年はダメかと思ったのだが、なんとか、本当にギリギリセーフで最終日に行けた。

11月も終わりだから、あいにく天気がいまひとつで、しかし、どのみちビエンーレしか行かないで、そんなの構わない。
そして、その方が、かえって人が少なくなるので嬉しいくらいである。

予想通り、お昼前は結構人が入っていたが、午後になるとだいぶ減り、アルゼナーレもジャルディーノもかなりゆっくり見ることができた。
特に、ジャルディーノの方は、各パビリオン入場の際に、いちいち列に並ばないといけないようでは、たくさん見ることができなくなってくる。
最終日も悪くない、と思った。

ビエンナーレは、会場外の作品もあるが、主な会場はアルセナーレ(造船所)とジャルディーノ(庭園)に分かれている。

両方を見るには、駆け足で半日強。
ゆっくり見たい場合や、ジャルディーノの方の列が多いと、丸1日かかる。

一つしか見れない場合や、どちらから見るかとか、悩むところなのであるが、私はアルセナーレ>>ジャルディーノの順番で見る。

アルセナーレの出口が、入り口の反対側に位置しているので、出た後、10分程度、ジャルディーノまでとぼとぼ歩いて、その後、残りの時間をジャルディーノに費やす。

アルセナーレはほぼ一方通行。
最後の方にイタリアのパビリオンがある。

ジャルディーノにはビエンナーレ館があり、そのほか、各国のパビリオンが並んでいる。
その中にはもちろん日本館もある。

前回の日本館には感動した。
ドイツに住んでいる、日本の女性の作品で5万個の鍵を使った作品。
未だに携帯の待ち受け、PCの壁紙に使っている。
(家族の写真を使う趣味はないので、これで落ち着いている)

今年は、ちょっとした余興的な部分は面白かったのだが、全体にはイマイチ。

しかし、それはフランス館も同じで、前回の方が良かったと思うし、イギリス館やカナダ館も含め、前回の方が良かったというところが多かった。

逆に、今年、ダントツに良かったのはロシア館。

しかし、アルセナーレの方は、今年の方が、いや、今年も面白かった。

イタリア館もかなり良かった。

なお、今年、ダントツに話題になったのが、場外の作品の「手」。正式な作品のタイトルは「サポート」。
大運河沿いに見て、さらにその下まで行けて、その大きさに感動。

良かった作品で、写真に撮りやすかったものを紹介。


糸を使った作品


刺繍でまるで文字のよう


迷路。。。(でもないが)


なんてことないが結構気に入った作品


あはは


これも同じ作家


毛糸の山


人形はかなり小さい


もちろん鏡の仕業


なるほどね


潜水艦があった


聖女チェチリアの素顔

2017-11-15 21:48:41 | 何故か突然アート
聖女チェチリアの素顔



聖女チェチリアは音楽の守護聖女。そこで、ローマで最も有名な音楽院の名前はサンタ・チェチリア音楽院という。
異説はあるが、230年、ローマで殉教した聖女。

貴族の娘でキリスト教徒であったチェチリアは、同じく貴族(異教徒)のヴァレリアーノの元に嫁いだが、神に対して処女であることを誓った、ということを夫に理解してもらった。
夫は、チェチリアの勧めで改宗し、洗礼を受け、家に帰ってくると、部屋の中は音楽で満たされ、花の香り芳しく、そこへ天使が現れたそうな。

また、チェチリアは、賛美歌を、伴奏をつけて歌っていたらしい、ということで、オルガンを発明したとも言われ、持ち物はオルガンになっている。

捕らえられ、蒸気で蒸し殺しにされるはずだったのだが、死ななず、今度は首を3度切りつける、という刑に。すぐには死なず、3日生き延びて息を絶えたそう。

墓は、アッピア街道沿いにあるサン・カリストのカタコンベに作られた。

その墓を発見したのはパスクアーレ1世法王。
チェチリアがに夫ともに住んでいた家が教会になっていたのだが、改築をしている。

さて、中に入ると、教会の主祭壇の手前に、とても魅力的な聖女チェチリアの彫刻が置いてある。

制作者はステファノ・マデルノ(1576-1636)
制作年は1600年。

1599年に、チェチリアの墓を開けたらしい。
その時、マデルノは、見た姿そのままを彫った、と言われるのだが、奇跡のごとく、純白の衣装はそのまま、神を讃える仕草をし、首には切りつけられた跡。

その彫刻の顔が、向こうを向いて、まるで棺のような容器に納められている。
顔が後ろを向いているので、見えないので、チェチリアの顔を見たことはなかった。

音楽の聖女、チェチリア。
処女聖女。
鼻が細く高く、さぞかし、惚れ惚れするような美女ではないか。。。。と思っていたのが。。。。


用事があって、久々にサンタ・チェチリア教会に行き、パンフレットをついでに買って帰り、ふと見ると、彫刻を後ろから撮った写真が載っていた。

ぷぷぷ。

笑ってしまった。(ごめんなさい)



パンフレットの言葉を借りて「クラシックにアルカイック」とあるように、ちょっと鼻が低くて、潰れているわけではないが潰れたようにも見える何てことのない顔をしていた。

すごーい美女かと思ったのに。。。。

聖女チェチリアもなんだか普通の女性だった(奇跡は起こしたが)と、ちょっと身近に感じることになった。


Codex Seraphinianus di Luigi Serafini コデックス・セラフィニアヌス

2016-06-19 18:28:32 | 何故か突然アート
Codex Seraphinianus di Luigi Serafini コデックス・セラフィニアヌス

知る人ぞ知る、世界でも最も不思議な本(の1冊)と言われる「コデックス・セラフィニアヌス」を知っているだろうか。
友人のルイジ・セラフィーニが1981年に書いた本である。


これが2冊からなる1981年の初版

過去にもこの本のことはこのブログで書いたことがあるが、改めて詳しく書いてみる。
というのが、コデックスのWikiの日本語ページは随分前からあるのだが、作者ルイジ・セラフィーニの日本語ページが今までなかった。
ずーーーっと前からルイジとその話はしていたのだが、このところゆっくり時間を取ることができて、やっと日本語ページを作ったのである。
(まだまだ改定予定。。。。。)

それで、改めて、じーーーーーーっと彼の履歴を読むことになった。
だいたい知っていたこととは言え、改めて感心したのである。

コデックスは、美術系の人は知ってるかも知れないが、とにかく不思議な、読むに読めない文字で書かれた百科事典のような本である。
記号か記号でもないような字で、それが、見事に本物の百科事典のように作られている。
一番最初にコデックスを見たとき、その面白さ、素晴らしさに感動したのだが、これだけの膨大な量を、崩すことなく、最初から最後まで見事に描いたその忍耐には驚いた。
また、百科事典のようになっているので、当然、動物、植物、人物、機械、科学、言語、建築と、いろいろな章があるのだが、それらの全てを描ける才能にも感嘆。
そして、ルイジ本人と知り合って、彼の人柄の温厚さにさらに感動したのである。
それから、とにかく頭が完全にアーティスト、脳みそを割ってみたいと思うのだが、中にはいったい何が(どんなアイデアが)詰まっているかわからない頭の良さにも感心し、幸い、光栄なことに(恐れ多くも)非常に親しい友人の一人でいさせていただいている。

さて、ルイジがコデックスを書いたのは、彼がまだ若き20代の頃、1976年から78年にかけて、30ヶ月、ほぼ没頭するようにして書いた。
つまり、かなり古い本なのだが、その後、何度か再版され、現在の版(2013年版)は8版目にあたる。

初版本は2冊からなり、1981年、フランコ・マリア・リッチ出版社から発行されている。
3000冊程度(2冊組み)しか発行されていない、今では非常に希少な本である。
価値は高く、とても高価。2000ユーロは下らず、5000ユーロの値も軽くつくくらいである。
(本人、ボクにはなんの儲けもない〜と冗談。。。)


全てに番号とフツーのサイン(笑)が入っている


こちらのサインの方が彼らしい

その後、1冊にまとめた本が何度か、イタリアとイタリア以外の国で発行されている。(これらも、今はかなり高価)

さて、その後しばらく廃版状態だったのだが、2006年に廉価版(とは言っても100ユーロ近い値段は決して安くはないのだが)がリッツォーリ社より出版された。
これは、今までは豪華版で値段も高く、その後は一部の人しか見ることができない高額、希少価値的なものになってしまい、それを、もう少し安く広く販売できたら嬉しい、という彼の希望による再版である。
かなり色々なことにこだわる人なので、装丁、紙の質、印刷所、色のチェックなど、全てに丁寧に手を掛けている。

この版からオマケの「デコデックス」が付いている。
これはちゃんとした言語で書かれ(笑)非常に興味深い内容である。

2006年の販は、著名人がコデックスについて書いたものが載っているという、かなり「真面目」な内容。
ちなみに、有名なイタロ・カルヴィーノの序文はそれより前の版に載っている。
(イタロ・カルヴィーノが出したエッセイ本「砂のコレクション」(1984年、日本語訳あり)にはコデックスについて書いた一章がある)


左が2006年版 右が2013年版の表紙 似ているが微妙に違う

2013年版のデコデックスはがらっと変わって、当時の回想が載っていて面白い。
彼自身、あれ(コデックス)は「猫が書いたもの」と冗談を言うことがあるが、その当時の話が書いてあり、若干記憶と事実が違うことがないわけではないが、とにかく、彼の記憶による回想となっている。

その内容によると、コデックスの全ページの中に、彼が一番最初に書いた1ページというのがある。(これはファンならどのページが当てられる)
また、実は、1ページだけ未完のページがある。(これはルイジが教えてくれたのだが、たぶん誰も気がつかない)
それから、1ページだけ、本当のアルファベットが書かれたページがある。(よく見ればわかる)
初版を出版したフランコ・マリア・リッチ氏の肖像も登場している。(これはわかる)

他、2006年版はあと2回発行されているが、紙質が違うのにもエピソードがあったり、印刷がずれているという印刷ミスのページを含んだ版があったり、一見同じように見える版も、実は微妙に違ったりしているのである。
そこで、凝る人は、全ての版を買ってしまう。

特に2006年版には新しい「序文」が図版付きで加えられ、2013年版にも新しい図版がさらに加えられたので、すでに持っているのに買い足した人は多いと思う。
(ここで損をしたと思わないほうがいいと思う。なぜなら2006年版で、現在すでに何百ユーロかそれ以上の価値が付いているからである)

なお、この2006年版と2013年版は、同じような表紙に見えるが違う。
てんとう虫がさらに飛んでいる。これにも彼がカナダに行った時の偶然のエピソードがあり、とにかく、全てに意味が込められていると言っても過言ではない。


背表紙も微妙に違う

なお、コデックスのオリジナルの原画は、ずっと見たことがなかったのだが、初版本などを出した出版社、フランコ・マリア・リッチ氏が全て、まとめて所蔵している。
この冬から春にかけて、パルマの郊外にあるラビリント(大変素晴らしい場所で、竹林で分けて道を作っている)で原画展が行われたが、本物は涙が出るほど美しかった。


原画がずらっと展示され壮観

原画の美しさは、デコデックスの最初のページの牛のデッサン「Elapis」を持っているので分かるが、印刷されているものだけを見ても素晴らしく美しいのに、本人が書いた本物は比べものにならないくらい繊細で美しい。

コデックスの原画は、それとは比較にならないほど膨大で細かい作業、細い黒ペンの輪郭に色鉛筆で色が入っているのだが、そのペンの繊細さ、色のグラデーションの見事さには見ていて涙が出てきたほどである。

パルマのラビリントでの展覧会最終日前日には、フランコ氏も出席した講演が行われ、多くの若者が部屋にあふれんばかりで、今の若者にもこれだけ人気があるのかと改めて感心した。

コデックスをみると、ヴォイニッチ写本の真似と言われることもあるし、また、ページをめくっていて、アイデアのヒントらしきものは随所感じるのだが、決してヴォイニッチの本を真似しようとして書いたものではない。
だいたい、真似しようと思っただけで、これだけ膨大なページは描けない。(380ページ以上)
アイデアのヒントをどこからか得ることは普通だし、それよりも、現代美術展などに行くと、あれ、これ、コデックスからヒントを得たよう。。。という作品に時々お目にかかるので、コデックス自身が、その後の多くの芸術家にかなり影響を与えている。

とにかく美術に興味のある方にはぜひコデックスは見て欲しい。
(日本ではアマゾンでアメリカから買える。本当は、日本版だけの特別の図版を加えて出版したいのだが。。。。)
ネットで探すと、全ページをスキャンしたようなものが出てくるが、ちゃんと本になっているものは美しいし、原画はその何倍も美しい。
いつか、日本で原画展を開けないものかと思っているのだが、どなたかスポンサーになっていただける方はいないものだろうか。

さて、ルイジは作家ではなく芸術家、もちろん他の本も出しているし、絵画から彫刻、陶器まで制作している。これらもものすごく面白い。
そのあたりを、ぼちぼち紹介していきたいと思っている。


ルイジが気に入っている絵の1枚


植物のページのから 他の挿絵のあるページはネットでいくらでも出るので絵のないページを紹介


これがある章の目次 ページの数も読めない(笑)



実に「詳しい」解説が豊富な百科事典(笑)


Codex Seraphinianus
クリエーター情報なし
Rizzoli

Balthus @Scuderie del Quirinale

2015-12-19 23:12:35 | 何故か突然アート
バルトュス展
クイリナーレのスクーデリエにて



クイリナーレ、正確にはスクデリーエつまりクイリナーレ宮殿(現大統領官邸)の元厩舎となる建物で、10月からバルトュスの展覧会が開かれている。
クイリナーレで行われる展覧会はかなり質が良い。場所もゆったりしているし、見応えがあるものが多いので有名である。
実はこの展覧会は2カ所に分かれての展示というのが触れ込みで、もう1箇所はローマのメディチ家の別荘、つまりスペイン階段の上からすぐのところ、現在のフランス・アカデミーとなっている建物。
こちらはまだ行っていないので、終わるまでに行かなくては。
ちなみに、ヴィッラ・メディチのフランス・アカデミーはバルトュスが生前所長を務めていたというところでもある。

ローマでこれだけ大々的なバルトュスの展覧会が開かれたのは初めてではないかと思う。
バルトュスは、フランスの画家として知られているが(と思っていた)父親はポーランドの貴族、母親はロシアのユダヤ人らしい。
そして、日本と馴染みがあるのは、日本の女性と結婚していたということかもしれない。
50代で20歳の女性と出会い結婚、子供(娘)もいて、年の差婚のハシリらしいが、2001年、夫の死後も夫人はまだ健在。

クイリナーレは10のテーマに分かれ、見応え十分。
ルーブル美術館でほとんど独学で絵を模写していたというバルトュスの、マサッチョ、ピエロ・デッラ・フランチェスカのコピーから作品が展示されている。
さらっと写した作風がいい。
「道」は、1929年と33年の2枚があり、面白い比較ができる。何人かの登場人物は同じで、脇役に結構な変化が見られ、興味深い。
そして、今回のポスターにもなっている「忍耐」。圧巻。

いよいよ猫の登場。「猫の王様」「地中海の猫」、そして、ポルノか少女愛か、と思わせる作品多数、デッサン、習作も多く展示されている。
風景画も多数あり、色の使い方が心に安定を、静寂が心に響く。
浴室での裸の少女。決していやらしくはない。
イギリス風の縦線の壁紙、ソファー、鏡、窓などがキーワードか。
登場する人物は概して頭が大きく、上半身が小さく、足が長いところから、マンガチックと思えなくはないのだが、違う。これが均整取れている人物であるなら印象が全く違ってくる。一瞬デフォルメされている、しかし、その色使い、そして、遠近法はとても正確で安心して見られるところなど、天才、の文字が頭に浮かぶ。

少女が片足を折ってソファーに座っている絵など、足元から見ればパンツ丸見えだが、ポルノではない。
地面に肘をついて四つん這いになっている少女も、同じ角度から見ればやはりパンツが見えそうだが、いやらしくはない。
この年頃ならパンツが見えることなんて気にしない、だから、堂々とこんな格好ができてしまうし、そういえば私も、何も考えずにしていたかもしれない、と思ったり。

ただし、今ならスカートを履かない少女も多いと思うので、ズボンやジーンズでは絵にならないよね、と思ったり。うーん、きっと魅力半減。(それ以前に絵にならない?)
ある意味、少女も含む女性が、スカートを捨てズボンを履き始めたというのは、アート的に取り返しのつかない大きな損害かも知れないと思ったり。
2016年1月31日まで。ぜひ。






Tre baci di Hayez

2015-11-23 15:35:16 | 何故か突然アート
Tre il bacio di Hayez
三つの接吻 アイエツ



ミラノで待望のアイエツの展覧会が始まった。スカラ座前の広場にあるギャラリー・イタリアにて2月までの開催である。アイエツに絞った展覧会は初めての開催とのことで、嬉しいことにかなりの入り。
アイエツは日本ではほとんど知られていないと思うが、イタリアではまずまず、ミラノではかなり根強い人気のある画家である。

(なお、アイエツには「三つの接吻」という作品はないので悪しからず)

1791年、ベニスのあまり裕福ではない家庭の5人兄弟の末っ子に生まれ、裕福な叔父夫婦のところに里子に出された。叔父の趣味が美術品収集、彼自身も絵の才能に恵まれ、絵画を勉強、アカデミーに入学、18歳(1809年)でコンテストに入賞したという経歴を持つ。
その後は、ミラノのブレラ絵画館のディレクターを務めたこともあり(1850年)、生涯のほとんどをミラノで過ごした。1882年、91歳で没。

そのアイエツの作品が、間仕切りで作った部屋も含め、10の部屋に分かれて展示されている。これだけの作品が一堂に会したというのは迫力があり、感動ものである。
展示の目玉は3つの「接吻」。しかし、その他の作品も素晴らしい。
アイエツは、面白いことに、似たような作品、関連した作品を残しているが、それが一堂に見られるというのは美術好きにとっては至福である。
くだんの「接吻」もそうだが、「ロミオとジュリエット」、「接吻」と「抱擁」と、10年の違い(接吻が1823年、抱擁が33年)で描かれたものが隣に並んでいる。



「復讐の誓い」と「密告の手紙」も。復讐の方は、よくわからないと思うが、黒いベールがまあそれは本物のようで綺麗。人物の心理描写が半端ではなくうまい。



なお、まるで3Dかと思ったのはヴィーナスのお尻。女の私でも触りたくなるくらい。


しかし、そこまで当時の人を魅了したアイエツも、いくらコンクールの入賞するほどの腕があったとはいえ、初期の作品はちょっとかわいい。うーん、若干人体のバランスが悪いかも?と思う作品もある。

さて、目玉の3つの「接吻」。「キス」とも呼べるが古式豊かに「接吻」と呼びたい。
ブレラ絵画館の最後の方の目玉作品であるが、それが3つあるとは知らなかった。なるほど調べると2つまでは出てくるが、3つは出てこない。
見比べると面白い。さて、まず、青い服と白い服のバージョンがある。
ちなみに、アイエツがこれらを描いたのはほとんど70歳で、若者が描いたものではない。おじいさんが描いたものである。おじいさんがこれだけロマンチックな、ロマンチシズムの代表作を描くのは信じられないとも思えるが、これだけ高名なアーティストであったということは相当持てただろうし、本人も年齢よりかなり若かったはず。
しかし、さらには政治的な意味も含まれているとのこと。
最初に描かれた(ブレラの作品)のは1859年はイタリア独立戦争の真っ最中で、フランス(青い服の女性)とイタリア(赤い服の男性)の密約を描いたものとのこと。
1861年版は女性の服が白に変わっているが、イタリア王国が成立し、国旗(白と赤、緑は、男性の袖口など)を暗示したものだそうだ。
67年版は再び女性の服が青になっているが、ドレスのでスカートのデザインが若干違うからか、微妙にバランスが変わってきているし、階段には白い布が落ちている。
もちろん影も違うし、左にいる人物の影も違う。



上から 1861年、1859年、1867年

どれが一番良いか、好きか。うーん、困るのだが、一番最初のブレラのものがいちばん緊張感があるような気もする。




Codex Seraphinianus by Luigi Serafini

2013-10-20 21:26:33 | 何故か突然アート
Codex Seraphinianus by Luigi Serafini



友人、ルイジ・セラフィーニLuigi Serafini氏の「コデックス・セラフィニアヌスCodex Seraphinianus」の新版が出た。
このところ、大変親しくさせていただいているが、彼に関しては驚きの連続である。
とにかく頭がいい。そして、切れる。アイデアが次から次に出る。そして、アイデアがどんどん変化する。単なる気まぐれではなく、アイデアが彼の頭の中で、生み出す作品の中で、どんどん進化していくのである。


コデックスの初版は、1981年。2冊からなっていて、現在はプレミアムもので、5000ユーロは下らない。ルイジの家にあるが、何度も何度も開いているので、製本が少しほどけ、さすがにこれを手に取るときは、かなり緊張する。その後、いくつかの国で、何度か発行されたが、2006年、Rizzoli社から、新しく10ページ近くが追加され出版。今回もさらに追加のページがあり、同じRizzoliから出版された。

Serafiniの作品のコレクター、Codexのコレクターは世界に結構いるというが、その気持ちがよくわかる。彼の作品は、作品にストーリー、連続性があり、ひとつの作品だけで満足することができないからだ。
たとえば、2006年発行のものと今回の新しい発行のものとを比べて見ると、表紙が非常に似ているのだが、違う。最後に、「イタリア語」(英語版は英語)で書いてあるが、テントウムシがさらに飛んでいるのである。これにもちゃんとストーリーがある。
そして、彼のマークの「点」が二つになり、「キングボット」が二つになり・・・

それだけではない。彼は新しいページを最初に追加しているが、つまり、「ページ番号」も、よく見ると違うのである。
数字さえも創造のものだから、変えなくても同じかと思うが、彼にとって、数字は数字なのである。なお、この数字に関してもエピソードがある。

こういう細かさ、緻密さは彼のすごさのひとつである。Codexを最初に見たとき、あまりの正確さ、緻密さの連続に驚いた。なんという忍耐力。そして、創造性もさることながら、動物から、植物、機械、建築、ありとあらゆる分野を描く才能。

ルイジの作品はプライベート所有が多いので、実際に彼の絵画や彫刻などの作品を見る機会はなかなかないかもしれないが、作品同士の関連性はすごい。Codexに出てくるサイは彫刻になり、卵もキングボットも他のいろいろな作品に登場している。今回の限定豪華版のTa-RocもCodexの中に出てくるカードを実現させたものである。

そして、ネーミングのアイデアのすごさ。TaroccoならぬTa-Rocもそうだが、Egg-centric、Lady DならぬLady C(ニンジン)、Carpe diem(ホラティウスの言葉、今を楽しめ)は二つのCarpa(鯉)、つまりCarpeになる。


また、ルナールの「博物誌Storie Naturali」は、普通版でも綺麗であるが(これはまだ手に入る)、限定版(もう手に入らない)の美しさとアイデア・・・とにかくすごいアーティストだと個人的に思っている。


私は彼の作品の大ファンなので、ルイジに会うたびに、作品の話をする。
この前驚いたのは、1984年に出版された「プルチネッラ図鑑Pulcinellopedia」。これがまた、緻密で愉快なイラストで、アイデアの宝庫。大好きな本である。

この本は共作となっているので、そのことについて聞いた。表紙をめくると二人のサインも入っている。
ルイジに、友達?と聞いたら、これはプルチネッラの苗字と名前だよ、と。プルチネッラにれっきとした苗字と名前があるとは知らなかったのだが、つまり、まるで共作に見せかけて実は彼だけの作品だったのだ。このサインはあなたがしたの?と聞いたら、そう、と。プルチネッラに敬意を表したかったので、共作にした、と言うのだが、誰がわざわざこんなことをするだろうか。そして、こういうところが、センチメンタルというか、とてもデリケートで、彼の人柄も尊敬している。


ところで、彼はローマとミラノにスタジオを持って、どちらもすごい。ミラノは殺伐としているが、広いので、大型の作品が迫力満点だし、ローマのスタジオはまるで美術館である。プライベートな空間なので難しいが、本当に彼の作品が好きな人の訪問は、喜んで受け入れている。