在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Codex Seraphinianus by Luigi Serafini

2013-10-20 21:26:33 | 何故か突然アート
Codex Seraphinianus by Luigi Serafini



友人、ルイジ・セラフィーニLuigi Serafini氏の「コデックス・セラフィニアヌスCodex Seraphinianus」の新版が出た。
このところ、大変親しくさせていただいているが、彼に関しては驚きの連続である。
とにかく頭がいい。そして、切れる。アイデアが次から次に出る。そして、アイデアがどんどん変化する。単なる気まぐれではなく、アイデアが彼の頭の中で、生み出す作品の中で、どんどん進化していくのである。


コデックスの初版は、1981年。2冊からなっていて、現在はプレミアムもので、5000ユーロは下らない。ルイジの家にあるが、何度も何度も開いているので、製本が少しほどけ、さすがにこれを手に取るときは、かなり緊張する。その後、いくつかの国で、何度か発行されたが、2006年、Rizzoli社から、新しく10ページ近くが追加され出版。今回もさらに追加のページがあり、同じRizzoliから出版された。

Serafiniの作品のコレクター、Codexのコレクターは世界に結構いるというが、その気持ちがよくわかる。彼の作品は、作品にストーリー、連続性があり、ひとつの作品だけで満足することができないからだ。
たとえば、2006年発行のものと今回の新しい発行のものとを比べて見ると、表紙が非常に似ているのだが、違う。最後に、「イタリア語」(英語版は英語)で書いてあるが、テントウムシがさらに飛んでいるのである。これにもちゃんとストーリーがある。
そして、彼のマークの「点」が二つになり、「キングボット」が二つになり・・・

それだけではない。彼は新しいページを最初に追加しているが、つまり、「ページ番号」も、よく見ると違うのである。
数字さえも創造のものだから、変えなくても同じかと思うが、彼にとって、数字は数字なのである。なお、この数字に関してもエピソードがある。

こういう細かさ、緻密さは彼のすごさのひとつである。Codexを最初に見たとき、あまりの正確さ、緻密さの連続に驚いた。なんという忍耐力。そして、創造性もさることながら、動物から、植物、機械、建築、ありとあらゆる分野を描く才能。

ルイジの作品はプライベート所有が多いので、実際に彼の絵画や彫刻などの作品を見る機会はなかなかないかもしれないが、作品同士の関連性はすごい。Codexに出てくるサイは彫刻になり、卵もキングボットも他のいろいろな作品に登場している。今回の限定豪華版のTa-RocもCodexの中に出てくるカードを実現させたものである。

そして、ネーミングのアイデアのすごさ。TaroccoならぬTa-Rocもそうだが、Egg-centric、Lady DならぬLady C(ニンジン)、Carpe diem(ホラティウスの言葉、今を楽しめ)は二つのCarpa(鯉)、つまりCarpeになる。


また、ルナールの「博物誌Storie Naturali」は、普通版でも綺麗であるが(これはまだ手に入る)、限定版(もう手に入らない)の美しさとアイデア・・・とにかくすごいアーティストだと個人的に思っている。


私は彼の作品の大ファンなので、ルイジに会うたびに、作品の話をする。
この前驚いたのは、1984年に出版された「プルチネッラ図鑑Pulcinellopedia」。これがまた、緻密で愉快なイラストで、アイデアの宝庫。大好きな本である。

この本は共作となっているので、そのことについて聞いた。表紙をめくると二人のサインも入っている。
ルイジに、友達?と聞いたら、これはプルチネッラの苗字と名前だよ、と。プルチネッラにれっきとした苗字と名前があるとは知らなかったのだが、つまり、まるで共作に見せかけて実は彼だけの作品だったのだ。このサインはあなたがしたの?と聞いたら、そう、と。プルチネッラに敬意を表したかったので、共作にした、と言うのだが、誰がわざわざこんなことをするだろうか。そして、こういうところが、センチメンタルというか、とてもデリケートで、彼の人柄も尊敬している。


ところで、彼はローマとミラノにスタジオを持って、どちらもすごい。ミラノは殺伐としているが、広いので、大型の作品が迫力満点だし、ローマのスタジオはまるで美術館である。プライベートな空間なので難しいが、本当に彼の作品が好きな人の訪問は、喜んで受け入れている。

Terre Bianche: 4 vini

2013-10-19 00:42:12 | Liguria リグリア
Rossese di Dolceacqua 2012
Bricco Arcagna 2011
Pigato 2012
Arcana Bianco 2010


このところリグリアのワインをよく飲む。
なんとなく、偶然である。
今回、たまたま時間があったので、ローマの老舗トリマーニで行われた試飲会に行ってみた。ワイナリーはTerre Bianche。よく知らないワイナリーであるが、どんなものか。
これが、良かった。非常に良かった。


赤から。
Rossese  還元臭がかなりある。しかし、香りが澄んできれいなため、気にならない。色もとてもきれいで、明るい色合いが魅力的。小さな木の実のフルーツにバナナの香りが混じり、メタル臭、月桂樹のようなふくよかな緑の香りが心地よく、インパクトがとても良い。酸がきれいに出ている。よくまとまっていて、心地よい。
Bricco  最初、やや閉じている。Rosseseよりだいぶ落ち着きが出て、フルーツよりスパイスが特徴的で、香草も混じる。より辛口、ボディも、アルコールも増している。しかし、タンニンは繊細で、重たさはなく、透き通った感じがエレガント。


白。
Pigato  小さな花や桃などのフルーツの香りに塩辛さが混じる。香りから、塩味があるだろうなぁ、と思うのだが、その通り、酸味もあり、同時に塩辛くもある。しかし、これが決して悪くなく、ワインにしっかりした味を与えて、かなり良い。
Arcana  落ち着きが出ていて、複雑性があり、とても良い。まったく疲れがなく、まだもう少し持つだろうと思わせる。ゴムの香りがほんの少し出始めて、数年後にはどうなっているだろうかと期待できそう。桃、熟した柑橘、花などにミネラル。塩味とまろやかさと酸のバランスが絶妙。


どのワインもきれい。自然で素直で、いかにも造った感がなく、大変好感が持てる。
とても良い発見。

Nero di Troia 5(+3)vini

2013-10-18 09:38:35 | Puglia プーリア
Masseria San Magno 2011
Vigna del Melograno 2010
Lui 2009
Vigna Pedale 2009 Torrevento
Pure Apulia 2007 Rivera


プーリア州は南の方がワインの生産としてもオリーブオイルの生産としても有名である。
アメリカでZinfandelとして知られているPrimitivo、もとはイタリアの品種で、アメリカの方でよく知られ、それが今、イタリアに戻ってきている、つまり昔のイタリア移民が戻っていたようだ、というのは、今回の試飲会の講師のジャーナリスト氏の言葉だが、そして、Negromaroは、イタリアにロックグループができるくらい、やはり有名になった品種である。その次に出てきたのがNero di Troia。Uva di Troiaとも言われるが、最近は、ネロの方に落ち着いてきたような気がする。



さて、正直に言って、Nero di Troiaは個人的に好きな品種ではない。正直に言って、飲むのは良いが、自分で買って人の家に持っていこうと思ったことはない。
以前、人の家に何度も持っていったが、自分で買ったものではないし、飲んだもらうことが宣伝になるので、某ワイナリーを宣伝してあげようと思って持っていっていたが、正直に言って、すごくおいしいとか、好きな品種とか思っていたわけではないことは、告白しておく。
その、ワイナリーLのNero di Troiaのイメージが強く、濃く、アルコールが強く、いかにも人工的に造ったところ、モダンなくせに田舎風のところが隠されていなくて、土っぽさの残るワインが、実はあまり好きではなかったのだが、今回、イメージが少し変わった。

講師で来たジャーナリスト氏の解説も非常によく、8つのワインを山側と低地のものの二つに分け試飲した。


低地のもの3本はまずまず。
最後のワインはブレンドで、いわゆるカッチェだが、カッチェはどうしても若いワインくささがあり個人的に好みではない。

印象に残った山のもの5つ。
San Magnoはちょっとご愛嬌。香りがよく、飲みやすく、一瞬受けるが、それ以上の深みがない。
Melgranoは対照的で、辛口の香りと味で、最初、コケの香りが混じり、一瞬欠陥かと思ったくらい。すごく深みがあるわけではないが、落ち着きの出ているワイン。
Luiは最も値段も高く、濃厚な感じがよく出て、それなりの風格はあるが、3-4%程度だが、サラッソ(地抜き)をしているとのこと。悪くないが、重たく、値段を考慮すると、かなり強気のワインだと思った。
Vigna Pedaleは、以前にも飲んだことがあった。エレガント。Nero di Troiaの良さが出ているが、重たくなく、土っぽい感じもなく、自然にさらっとよいワインに仕上げている。素朴、丁寧に造っていて、いいね~と。このあたりでNero di Troiaのイメージが変わってきた。
Puer Apluliaは、あの大量生産のRiveraが出しているとは思えないワインだった。Riveraのワインは、値段も手頃で悪くはないが、いたって普通のワインだと思っていたが、こんなによい物を出しているとは思わなかった。Pedaleとは違う雰囲気を持ち、同じくエレガントであるが、もう少し華やか。そして、2007年とは思えない。古いNero di Troiaはまだうちにも何本もあるし、何度も飲んだことがあるが、長くもつ品種だと思ったことはない。というより、ほとんどのワイナリーがもたないのであろうが、このRiveraは2007年のNeroとは絶対に思えないくらい、まだ、フレッシュさがきれいに残っていた。

最近、北のワインばかり飲んでいるが、南のシンプルワインも少し見なおした。


Taurasi Serpico Piano di Montevergine 2001 2007 2008 2009 Feudi

2013-10-03 12:38:36 | Campania カンパーニア
Feudi di San Gregorio
Taurasi Serpico Piano di Montevergine
2001 2007 2008 2009


久々、実に久々にFeudi、それもアリアニコを飲んだ。昔は良く試飲したし、レストランでも割と頻繁に頼んだものだが、ワイナリーの数が星の数ほど増え、昔はどこにでもあったFeudiのワインを置いているところも若干少なくなり。。。(いまだに置いているところはたくさんあるので、レストランの数が増えたこともあるだろう)


ワインは全部で12。
TaurasiとSerpico とPiano di Montevergine
2001年、2007年、2008年、2009年

2001年とその他の年の間には大きな開きがあるが、まあそれは良しとしよう。

2001年
Taurasi 色はいまだに濃く、華やかで、熟したフルーツからコンフィにかけての香り、甘いスパイスの香りがきれいでインパクトがかなりある。タンニン完全にまろやか、酸がほんのりで飲みやすくてよいのだが、持続性は。。。ない。(あまり、と言う意味)そして、20分たたないうちに、香りが消えてしまっていた。
Serpico 最初、やや閉じていているが、フルーツにタバコ、カフェなど交じり、Taurasiよりインターナショナルな感じ。酸がきれいだが、同じくタンニンは完全にまろやか、香りにも出ているが、ブラッドオレンジが後味にも残る。そして、30分後には、やはりかなり消えていた。。。
Piano 最初かなりの時間閉じていたが、出てくると、ミント風の緑の香りとミネラルが奥の奥にベースになり、とても良い。スパイスの香りが複雑で、バルサミコ、カカオなど、エレガントで香りが長い。味のほうもエレガントで、酸とタンニンのバランスがよく、持続性もかなりある。きれいに熟したアリアニコ。

2007年
Taurasi インパクトよく華やか。ある意味、インパクト良すぎ。。。フルーツ、花、甘いスパイス。。。誰にでも受ける香り。酸がきれいでタンニンがかなり繊細。持続性もよく、かなり良くできている。
Serpico 最初やや閉じていると思ったのだが、いや、全体に香りが弱い。アルコールが、他よりやや強く上がってくる。味の持続性は中くらい。
Serpicoに関して、実はずっと昔、一番最初に飲んだとき、裏のラベル(表は名前だけ)がイタリア語ではなく、ドイツ語だったような記憶がある。そうか、イタリアより外国で受けるワイン、と思ったのを覚えている。個人的には、3つもアリアニコを造らず、2つに絞ったほうが良いのに、と思うのだが、わけはちゃんとある。試飲会の最後で出た質問に関連した回答:アメリカで一番売れるのは、Serpico。まさに!
Piano 個人的には、Pianoがまじめで控えめで、しかし、主張があり、好きである。ヨード、複雑なスパイス、メープルの木など。理解するのにちょっとかかるかもしれないが、エレガントと荘厳さがある。

2008年
Taurasi ふくよかで、あいかわらず印象が良い。受ける。フルーツ、花。若干アニマルがあるが、そういう感じもかえってよい感じ。タンニンはまろやかで、繊細、酸も程よく、しかし、持続性は、中の上くらい。
Serpico 全体に香りがやや弱いが、フレッシュなサクランボ、プラム、梅風、ミント、タバコなど、心地良い。
Piano かなり閉じている。しかし、出てくると複雑でエレガント、ミネラルがベースに感じられ、持続性も良い。

2009年
Taurasi 言うことなし。すでにまろやか、受ける。
Serpico まろやか~。香り良し、華やか、完全にインターナショナル。パーカー93点、なるほど。まさに。アメリカ人が好きだろうと思える味と香り。個人的にはこの手は好きではないが、ワインをあまり飲み込んでいない人には絶対に受けるタイプ。
Piano これまたかなり閉じているのだが、上がってきた香りは、ふくよかで、やや木が出ていて、だいぶモダンな感じに変わっている。うーん。。。ちょっとがっかり。これから、このスタイルになるのだろうか。。。