在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Chianti Classico; San Casciano, Tavernelle, Barberino e Poggibonsi 9 vini キャンティ・クラシコ9種

2015-04-26 17:35:12 | Toscana トスカーナ
Chianti Classico; San Casciano, Tavernelle, Barberino e Poggibonsi
9 vini



Chianti Classico Albore 2012 Terre di Perseto テッレ・ディ・ペルセート
Chianti Classico 2012 Poggio Al Sole ポッジョ・アル・ソーレ
Chianti Classico 2012 Isole e Olena イゾーラ・エ・オレーナ
Chianti Classico Riserva 2012 Luiano ルイアーノ
Chianti Classico Villa Antinori Riserva 2012 Antinori nel Chianti Classico アンティノーリ
Chianti Classico 2011 Ormanni オルマンニ
Chianti Classico Riserva 2011 Castello della Paneretta カステッロ・デッラ・パネレッタ
Chianti Classico Riserva 2009 Villa del Cigliano ヴィッラ・デル・チリアーノ
Chianti Classico Il Poggio Riserva 2010 Castello di Monsanto カステッロ・ディ・モンサント

アルマンドのキャンティのコルソも大詰め。
あと1回、最終回はスーパータスカンを残すだけとなり、7回で全体の講義が終わった。
今回は「残り」の地域、サン・カッシャーノ、タヴェルネッレ、バルベリーノ、ポッジボンシを1度に。
試飲したワインは9種。
+++で、美味しい!というのが基準。


Chianti Classico Albore 2012 Terre di Perseto -San Casciano
強い個性は感じないが、悪くない。スミレ、赤い森の木の実、鉄分系の香り。酸がきれいで、最後アルコールがやや残る感があるが、持続性はまずまず。++(+)
Chianti Classico 2012 Poggio Al Sole -Tavernelle
香りはやや弱い感じがあるが、花、スパイス、リコリースなどがゆっくり出てくる。塩味がかなりあり、それに酸がプラスされる。味わいの方が香りより良い。+++
Chianti Classico 2012 Isole e Olena -Barberino
最初は結構閉じていて、香りが出てくるのにやや時間を要する。花、熟した森の木の実、バルサム臭、タバコ、スパイス、胡椒、カモミールなど、香りに奥行きがあり、エレガント。味のインパクトがかなりよく、タンニンが繊細で、持続性も申し分ない。個人的にも好み。++++


Chianti Classico Riserva 2012 Luiano -San Casciano
スミレの花に、鉄分系の香りが強いのだが、それほど奥行きは感じられない。タンニンがピリッとくる感じ。余韻はまずまず。++(+)
Chianti Classico Villa Antinori Riserva 2012 Antinori nel Chianti Classico -San Casciano
味のインパクトはやや甘いくらい。酸とタンニンのバランスがよいのだが、最後、余韻が消えてしまう感じがある。アンティノーリだと思って頑張って(何を?)飲めば美味しいのだが。。。++
Chianti Classico 2011 Ormanni -Barberino
エレガントでかなりきれい。スミレだけでなく、小さな花の花束、赤い小さな森の木の実など。味のインパクトがきれいで、酸が心地よく、持続性も良い。少し冷や気味でトマト味の魚介のブイヨンに、という話が出たが賛成。出しゃばらず、飽きずに、食事と美味しく飲めるタイプのキャンティ。+++(+)


Chianti Classico Riserva 2011 Castello della Paneretta -Barberino
柑橘系の香りのあるキャンティ。花は藤、ミルト、リコリース、胡椒など、香りは魅力的。しかし、味はややアルコールを感じるというか、エレガントさを期待するとちょっと違う。+++(+)
Chianti Classico Riserva 2009 Villa del Cigliano -San Casciano
スミレ、ローザ・カニーナ、フルーツのジェラティーナ、スパイスがきれい。塩味がちょっと強いが、エレガントで持続性も良い。個人的に好みのタイプ。++++
Chianti Classico Il Poggio Riserva 2010 Castello di Monsanto -Barberino
これも柑橘系のあるキャンティ。味のインパクトがよく、酸、タンニンがきれいで、余韻がとても心地よい。深く考えずに飲みたいワイン。一言、美味しい。++++++



イタリア映画の紹介 Noi e la Giulia 僕たちとジュリア

2015-04-25 20:56:13 | 何故か突然イタリア映画
Noi è la Giulia 僕たちとジュリア



とてもイタリア的な映画だと思った。
人気は上々、結構評判は良いよう。
確かに楽しめる。
同じコメディでも、「日曜日の映画」よりはるかによくできている。
(日曜日の映画とは、あー面白かった、で終わってしまって、心に残るものがない映画)

40代、人生に全く満足していない男3人がひょんなことで意気投合して、街を脱出、アグリトゥーリズムを始めることにする、というのが話の主旨。
ディエゴはしがない車のセールスマン。地味で真面目で、うまいセールストークが全然できない。
クラウディオは、代々続いた食料品店を自分の代で閉めてしまうことになった。おまけに妻は浮気しているようだし、離婚が目の前状態。
ファウストはテレビショッピングのトークマン。派手で贅沢な暮らしをしているが、借金も多い。
この3人が偶然知り合い、一緒にお買い得物件のオンボロ別荘を買い、アグリツーリズムを始めるために改装を始める。当然、そう簡単には行かない。
そこに、手助けをする50代、経験豊富、有能なセルジョが加わり、ただいま妊娠中、かなりイッテル感じの若い女性エリーザも料理担当として加わり、成功を収める。

と、これだけだといたって普通のストーリーなのだが、そこに、カモッラ(カンパーニア州のチンピラヤクザ)が、ショバ代を請求してくる、というところが重要な展開。
昔懐かしオンボロ車のジュリアでやってきたカモッラのヴィートを地下室に閉じ込めて、ジュリアは証拠隠しに土に埋めてしまう。ステレオを消し忘れたこのオンボロ車からは時々クラシック音楽が流れるのだが、つまり、土中から時々音楽が聞こえる不思議な現象が評判となって、これを聞きに宿泊客が訪れるようになる。
その後、最後は、カモッラの「(一応)ボス」に逆襲され、一旦、命あぶなしと逃げるのだが、これではいけない引き返そう、というところでエンド。

カモッラの話がスパイスを効かせたようになっていて面白いが、とにかく偶然と不思議のオンパレード。だからコメディなのだが、ちょっと疲れてしまうところはある。
偶然出会った三人が、お互いを知らないのに大枚叩いてオンボロ別荘を買うのも、土に埋めた車から音楽が聞こえるのも、音楽が勝手に流れるとか、一晩で車を埋めてしまうとか、開業前なのに突然客が訪れるとか、かなりの部分が、こんなこと有得ないよねー。

監督は、俳優でもあり、テレビショッピングのファウスト役の人。無理してカッコ付けてる役柄より、本物の方がはるかに素敵だった。
原作が気に入って、ただし、全部気に入ったわけではないので(正直!)それをちょっと変えて映画化したいと思った、とのこと。(原作者にはちゃんと許可を得たそう)
ちなみに、エリーザ役の女優は本当に妊娠中だった。(原作では妊娠していない設定)
頭をやわらかくしないと楽しめないが、やわらか~くすれば、すごくイタリア的、結構楽しめる映画。













アブルッツォワインの試飲会

2015-04-24 11:13:34 | Lazio, Abruzzo, Molise ラツィオ他
アブルッツォワインの試飲会






スペイン階段の一番上、広場を見下ろす角度、向かって右側に、ちょっと派手だが景色最高のカフェがある。
ソファのある、ゆったりしたオープンテラスになっていて、良い季節にはちょっと派手な着飾った人々で賑わっていることもある。
よく見ると入口もあり、そこからカフェだけでなく建物内に入ることもできるが、建物の下から入るには、地下鉄のスペイン広場駅と接続されている通路に入る手前、右側になる。
かなり小さな建物だし、下から入ると上がどことつながっているかよく分からない感じだが、一番上に出ると素晴らしい景色のあるおしゃれなカフェ、というロケーションである。


もうずいぶん前、ここを本拠地にして、ローマ・インターナショナル・ワイン・アカデミーという、英語でも講義を行うワイン・アカデミーが設立された。当時、時々、興味深い、一般向けも含めた試飲会を時々やっていたが、いろいろ変遷があり、音沙汰のない時代を経て、最近また少しづつ、主催者は全く別だが、試飲会が開かれるようになっている。
参加ワイナリーの数がそう多くはなく、あまり派手な宣伝をしていないこともあり、訪れる人がそう多くはない。しかし、逆に、飲む方にとっては、ゆったりしていて、親しみやすい雰囲気でありがたい。

そこで、昨日、アブルッツォワインの試飲会があった。
参加ワイナリー数は悪くなかったのだが、今回は、各ワイナリーが1種しかワインを持ってきていないのがちょっと残念だった。
せめてトレッビアーノとモンテプルチャーノ、赤白1種づつとか、ステンレスと樽使いの2種とか持ってきて欲しかったのが本音である。
そんなわけでは、合間におしゃれなおつまみが数皿出るので、つまみながらさらっと試飲。


参加ワイナリーのリストは以下。
数は少ないが、質の良いワイナリーばかりで、カタルディ・マドンナを中心にして結構まとまっているというのが好印象。






イタリア映画の紹介 Latin lover ラテン・ラヴァー

2015-04-21 10:51:53 | 何故か突然イタリア映画
Latin lover ラテン・ラヴァー



イタリア映画会の銀幕を華々しく飾ったサヴェリオ・クリスポ(当然架空の人物)が亡くなって10年。出身地の南イタリア、プーリアの田舎町で、彼の功績を讃える記念セレモニーが行われることになった。彼の大きな田舎の邸宅に、セレモニーに出席するため、家族が世界中から集まってくる。
というのは、サヴェリオには5人の娘がいるのだが、母親が全員違うだけではなく、国籍も違う。イタリアに始まり、スペイン、フランス、スウェーデン、アメリカ。
女優をやっているフランスの娘には3人の子供がいるが、全部父親が違うとか、スペインの娘の旦那がスウェーデンの娘に手を出すとか、やって来た二人の未亡人の暖かくも冷ややかな会話、実は一番サヴェリオのことをよく知っている専属スタントマンだった人物の登場、最後に遅れてやってくる、一晩の恋でできたアメリカの娘とか、設定や会話が複雑すぎず、単純すぎず、テンポも非常に良い。

かっいいい映画のポスターに登場のサヴェリオは、生きている人物としては登場しないのだが、彼主演の映画(当然架空の作品)の名場面があちこち挟んであり、これも面白い。
しかし、これが、過去のイタリア映画好きならよくご存知の懐かしい名場面ばかりで、ラブストーリーあり、マカロニウェスタンあり。
一瞬、既存の映画のフィルムの一コマを使ったのかと思わせるくらいよくできていて、かなり楽しめる。
できるだけ真似て、撮影には結構苦労したのよーとは、監督クリスティーナ・コメンチーニの談。なお、台本は彼女ともう一人の協力者で執筆している。

イタリアのコメディには、残念ながらどうしようもないものが多いが、なかなか味のあるコメディ。日本には懐かしのイタリア映画ファンも多いので、日本で公開されても結構受けるのではないかと思った作品。



イタリア映画の紹介 Fango e Gloria 泥と栄光

2015-04-18 04:43:45 | 何故か突然イタリア映画
Fango e Gloria 泥と栄光


ワインそっちのけで映画の紹介。
毎週定期的にセレクトされた映画を見ているし、監督との会見もあり、日本でのイタリア映画の復活、発展に微力ながら協力。

さて、少し前に見たものでとても印象に残っている映画が1本ある。
地味な映画で、一般にはあまり受けなかったようだが、私たち某関係者の受けは非常に良かった。

監督のレオナルド・ティベーリ氏はドキュメンタリーに強い人で、ずっとその分野に関わっていたそう。
第二次世界大戦の資料やドキュメンタリー映画は数知れずあるが、第一次世界大戦のものはわずか。そこで現存している貴重なフィルムを使い、映画に仕立てた。
しかし、ドキュメンタリーを映像ただつなげただけでなく、ここにフィクションのラブストーリーをはさみ、これがかなりにくかった。

ストーリーは、一組の若者のカップルに男性の親友がいて、3人とても仲がいい。カップルの男性の名前はマリオ。
そこに戦争が始まり、それぞれ戦地に駆り出され、彼女も軍事工場で働くことになる。
戦時中とはいえ、たまの休みには故郷に帰り3人で会うこともあるのだが、いよいよもうすぐで戦争も終わりそうな頃、マリオが戦死。
いろいろあり、身元がわかるものを持っていなかったため、マリオの遺体は身元不明戦死者となってしまう。

という内容の間にかなりの量のドキュメンタリー映像(本物と、戦後直後に作られたドキュメンタリー)をはさみ、途中、ちょっと退屈する場面もあったのだが。。。

さて、話は変わって、ローマの中心ヴェネチア広場にヴィットリオ・エマヌエル2世の記念堂がある。
イタリアの統一記念堂だが、第一次世界大戦の無名戦士の墓も兼ねている。
ここに収められている遺体は1体。
この1体を選ぶのには歴史的ストーリーがある。
北イタリアにアクイレイアという町があり、そこに大聖堂があるのだが、そこに戦後、身元不明の若者の遺体が11体集められた。
マリオの母のように、息子の遺体が帰ってこないベルガマスのマリアという女性が、その中からローマへ運ぶ1体を選ぶ役を遣わされた。
大聖堂に入り、11の棺を前にして前に進む。1つ目の棺の前でも大粒の涙を流し、2つ目。崩れ落ちて、もう先に進むことができず、2つ目の棺が選ばれることになった。
それをマリオに掛け合わせたのである。

台本作家の案だそう。
ゆっくりゆっくり3日かけてマリオの棺の乗った列車がローマへ向けて走り、各地で大勢の人に迎えられる。
マリオが乗っているとは知らない父も母も、彼女も親友も一目列車を見に沿道に詰めかける。それを天国で見ているマリオのナレーション。

戦争ドキュメンタリー映画と聞いていたのでハンカチの用意はなし。今度からはどんな映画でもハンカチを用意しようと後悔した1作。




イタリア映画の紹介 Hungry hearts 飢えた心

2015-04-17 18:35:07 | 何故か突然イタリア映画
Hungary Hearts 飢えた心



続けてイタリア映画の紹介。
数週間前に見た映画だが、今でも印象に残っている。
映画監督は、イタリアでは超有名司会者マウリッツィオ・コスタンツォの息子のサヴェリオ氏。
主役女優はイタリア人で、主役男優はアメリカ人、舞台はニューヨーク、そして、海外での配給も視野に入れてだろう、全部英語で、イタリア語の字幕スーパー入り。
監督曰く、舞台は、自分も住んだことのあるニューヨークがすぐに念頭に浮かび、そうなると英語での会話の方が自然だった、とのこと。
主役女優はVergine giurataと同じ、アルバ・ロシュワッシャー(とでも発音するのか??)で、とにかくうまい。先の映画ではアルバニア、男になった女を演じていたので、髪を黒く染めて、ばさっと短く切っていたが、こちらでは若い年齢の女性役なので、長い髪での演技。ある意味正反対の役を、どちらも抜群の演技力でこなしている。


ストーリーはヴェジタリアンならぬヴェーガンの話。
ひょんなところで知り合ったミーナとジェードが結婚し、男の子が生まれた。
ミーナは自分の子供を清く、全ての汚いものから守ろうし決心し、実践する。家のテラスが野菜の栽培だらけになり、離乳食が始まっても肉を決してあげない。
定期検査にも夫のジェードがやっと連れて行くような状態で、子供の微熱が下がらないとか、成長も非常に悪く、肉の摂取は絶対に必要です、と医者に言われた。
そこで、ジェードは、子供を散歩に連れ出した際に、隠れて肉の離乳食をあげることを決心。
子供の吐いたものから、夫が隠れて肉をあげていることに気がついたミーナは、今度は、不浄なものを体から出すというわけのわからないオイルを、これも隠れて子供に飲ませる始末。まるでイタチごっこ。
結局、あまりの極端な育て方に母親失格の烙印を押され、子供はジェードのお母さんが育てることに役所が決定。しかし、それを取り返したミーナ。
このままでは、子供が死んでしまう、と最後は殺人事件に発展する。

あらすじだけ読むと、へえ、と思うだけかもしれないが、この頭のちょっと狂った若い母親をアルバが見事に演じ、自然に、こうなるしかなかったねぇ、と思わせる方向に持って行く。
夫役のアダム・ドライバーも好演技。
ドラマなのだが、かなり心理ホラーの域に入っていて、所々で背筋がゾクっと来る。カメラワークも一役買っていて、かなり面白い。「ブラック・スワン」か「ローズマリーの赤ちゃん」をふっと思い出した。これも高評価の1本。










イタリア映画の紹介 Vergine giurata 誓われた処女

2015-04-16 22:35:48 | 何故か突然イタリア映画
Vergine giurata 誓われた処女



打って変わって、なぜか突然イタリア映画の紹介。
今年に入ってから、理由ありでイタリア映画を毎週見ている。
映画の上映後、監督とのインタヴュー会見という、とても貴重なおまけも付いている。
それも人数がそれほど多くないので、比較的気軽に質問できる雰囲気で、映画そのものもだが、特に上映後の会見が非常に興味深い。

そうこうしているうちに、昨今のイタリア映画、イタリア映画事情を紹介しないのはもったいないと思うようになった。
残念ながら往年の勢いはないが、珠玉の作品が幾つもある。
もしかして、見た映画のいくつかがそのうち日本に上陸するかもしれないと期待。

見ているのは、昨年の製作の映画で、今現在、一般公開されているものもある。
今週の映画は、アルバニアを背景にした映画。
監督はラウラ・ビスプーリという女性で、3本短い作品を撮った後の、初めての長編作だそう。まだ若く、街で出会っても、まさか映画監督とは絶対にわからない雰囲気の気さくな女性だが、自分のやりたいことは何かがわかっている、非常に頭の切れるタイプ。これから期待できそう。

ストーリーは、同タイトルの本からインスピレーションを得たということだが、本当にある話がベースになっている。

孤児だったハナが引き取られたファミリーには、年の違わない女の子、リラがいた。
仲良く育つのだが、大きくなって、リラにはボーイフレンドができ、二人で故郷を去るという選択をした。
一方ハナは、男尊女卑の風習を嫌って、男になる選択をする。12人の村の男性の前で宣誓をし、長かった髪をばさっと切る。
その後、一人の男、マークとして生きるのだが、養父が亡くなり、養母も他界し、イタリアで生活しているリラの元へ行く選択をする。
結婚して家庭を持っているリラには年頃の娘がいて、シンクロをやっている。全く違う世界に身を置いて、彼女に付いてスイミングクラブに通っているうちに、女性に戻る決心をする。
映画はその微妙な心の過程で終わるが、終わり方も悪くない。

モデルがいる実話ではないが、アルバニアの山奥では、まだ極端な男尊女卑が残っていて、幾つかの理由で、女を捨て、男になる選択をする人がいるという。
監督の話だと、今でも50人か100人程度はいるらしく(正確な実態はわからず)、男になる理由は、自由の全くない立場の女でいることが嫌とか、男と同じ自由が欲しいとか、または、結婚生活が上手くいかなく別れるために、という人も例外でいるらしい。
そして、このストーリーのように、「女性に戻る」選択をした人も僅かだがいるという話。

アルバニアの山奥の景色がまるで山水画のようにきれいで、ハナがまだ少女のアルバニアでのストーリーと、一人の男であるイタリアでのストーリーがモザイクのように交錯し、会話はアルバニア語(英語の字幕スーパー)であることもあり、最初は理解にちょっと苦労した。
しかし、主人公のハナ(つまりマーク)を演じているアルバ・ロスワシャー(と発音するのだろうか。。。ドイツ語名)がとにかくうまい。他の映画でもそうだが、彼女の演技の上手さは半端ではない。あまりに自然なアルバニア語は1ヶ月ほどの勉強の成果だというし、ちょっと一方の肩を引きずる(というような表現はあり?)ような男の演技など、それは素晴らしい。

心に残る映画の1本。現在配給の
各国でかなりの高評価。




Barbera d'Alba Vigneto Gallina1999 La Spinetta ラ・スピネッタ

2015-04-03 10:39:44 | Piemonte ピエモンテ
Barbera d’Alba Vigneto Gallina 1999 La Spinetta ラ・スピネッタ
@ merendina pasquale presso Il Vinaietto



いつもサービスしてくれたり、おごってくれたり、心からの感謝の意を込めて時々ワインを持参している。
普通のワインを持って行ったらタダで持ち込みになり、営業妨害になるところなので、かなり古いヴィンテージの、興味深い、勉強、経験になるワインを持っていく。
昨日の「復活祭のオヤツ」と称した集まりの際に、La Spinettaの1999年を持参した。

日本人なら、復活祭で田舎に帰る人も多いから、挨拶がてら集まろうよ、となるだけだが、「復活祭のオヤツ」というネーミングまで作ってしまうところがイタリア人の才能。
金曜日、仕事を終えてすぐに出発する人が多いので、集まりは木曜日の夜。復活祭は日曜日なので、オヤツはなんの関係もない。

今は星の数ほどワイナリーがある。
昔も、ワインを造っている人たちは星の数ほどいたわけだが、ワイナリーの数としては、つまり、自分たちでボトル詰めしたり、ラベルをちゃんと作ったり、流通させたりしていたワイナリーは今よりだいぶ少なかったと思う。
それがだんだん増えてきた80年代、90年代、ラ・スピネッタは、時代を反映するワイナリーの一つだった。
モダンで、万人に受け易く、香り良く飲みやすい、華やかなワインを早くから造っていた。
バリックが流行りで、バリックを使っていないと最高のワインは造れないと思われていた頃、豪快に波に乗っていた。

これを開けよう、と思ったわけではないのだが、ワインクーラーを見回して、ふっと目にして、いいかも、と思い持参。ダメになっている確率が無きにしもあらず、と思ったのだが、かなり意外な結果だった。

とにかくびっくりするほど色が若い。冗談ではなく、まだルビー色がかなり残っている。16年経ってこの色は、いままで見たことがないと言っていいくらい、知らないと絶対にまだ5年経ったか経たないかくらいのワインにしか思えないくらいの明るい色。
もちろん、中心はやや暗めだが、暗いというより、濃い、という方が正しいくらい、本当にびっくりするくらいの色だった。
香りは、最初は、出てくるのだがまだまだという感じで、それが徐々に徐々に上がってきた。バルベーラだと知らないと絶対にわからない香り。ブラックチェリーや黒い森の木の実が熟してコンフィになっている。バリックからくる甘い香りもかなりある。
今は、同じバルベーラでも、バリックではない、ステンレスだけか、大樽のみ使用のものが個人的には好みだが、昔はこういうワインを良く飲んだし、買ったよね、と懐かしい。
流行が反転して、バリック仕様より大樽仕様の方に人気がある今、好きではない、という人もいた。(10人程度で、ブラインドで試飲。ワインを知っていたのは持参した私だけ)
しかし、個人の好みとワインの評価は必ずしも一致しないし、好きなワインだけを飲んでいたのでは正当な評価ができるわけなく、いろいろなワインを機会あるごとに飲めれば嬉しい。

味は、当然モダンなインパクト。タンニンはまろやかなのだが、まだまだ勢いがある。やや粉っぽさが残る感じがなきにしもあらず。香りに若干アルコールが上がっていたが、しっかりしたボディ。酸味はまろやかであるが、全体の味の中で特徴的で、ここでやっと、もしかしたらバルベーラ?と感じられるようになる。余韻は、短いのではなく、インパクトがある分、それがしばらく続き、あるところでふっと消えそうになるが、その後は細く続く。
好みはともかく、かなり興味深いワインだった。
そして、最後、まだ余っていたのをちびちびと飲み、さらに1時間後には、香りが開き、どんどん変化し、深みが増し、素晴らしいワインになっていた。
最初 ++++
1時間後 +++++