在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Casperia カスペリア その3 −オリーブオイル 畑と搾油所

2016-10-29 21:51:46 | オリーブ・オイル
サビーナはローマ近郊、非常に高品質なオリーブオイルを生産する地域。





サビーナのオイル、ラ・モーラLa Moraと言ったら、昔から有名なオリーブオイルである。
賞も取っているレベルである。
そのラ・モーラの畑の収穫を見学。



私が日本にいた頃は、オリーブオイルと言ったら黄色か茶色が普通だった。
イタリアに来たら黄色になり、たまに緑のがあると、おお、きれいな緑〜と思ったものだが、今は緑色が普通になっている。

と言っても、実際にオリーブオイルのテイスティングをする際に、実は色は見ないので、ある意味、色は品質には関係はない。

しかし、昔、茶色に近かったころのオリーブの収穫は12月や1月だったし、それがだんだんと早くなり、11月に収穫するところが出てきて、今は10月に収穫をするところも多くなっている。

これは非常に好ましい変化である。

緑の実がまだ多いくらいで収穫するので、色も黄色から緑色になる。

(初歩的な内容だが、緑の実と黒い実は、同じ品種である。最初は緑、それがだんだんと黒く色付いていくのであって、品種が違うのではない。)

カスペリア一日エクスカーションの最初の訪問はオリーブ畑の収穫から。

案内をしてくれたのは、23歳の時から、すでにうん十年オリーブオイルを作っているというイギリス人、ジョニー。

イタリアのオリーブオイルに関してイギリス人に教わる、というのはジョーダンみたいな話だが、実はイタリア人でも、オリーブオイルのことを知らない人が意外に多い。
ジョニーはイギリス人だが、オリーブオイルの国際的なパネルテストにも参加するという、知識と経験の非常に豊富な、素晴らしい人であった。

バスの中でオリーブオイルに関しての簡単な講義。

オリーブオイル・ソムリエ(オーバーな言い方なので個人的には好きではない。。。)の資格も持っているが、最近はちょっと離れているため、ちょうど良い復習。

ジョニーの講義は実に的確、簡潔。



さて、10月ですでに収穫をしているというラ・モーラのオリーブ畑は、見事に綺麗な畑だった。

収穫の模様を、撮影、取材、見学する。

そして、ラ・モーラのオイルも搾油している搾油所へ。

収穫の時期なので、フル稼働していた。
オリーブが運ばれてくる。



オリーブの周りをちらちらと飛んでいるのは憎きオリーブバエ。
温暖化もあるのだろうが、つまりハエにとってより生育しやすい気候になっているのかもしれないが、このところ被害が大きい。
以前は隔年で被害が出ると言われていたものだが、今では毎年のように被害を聞く。

オリーブはかなり丁寧に洗われる。
なお、最近、と言ってもここ15年程度で流行になっている「種無し」の方法はここはとっていない。

洗われたオリーブは潰され、捏ねる。

その後、固形分を分離(デカンタ)して、さらに、まだ残っている水分を分離する(セパレーター)。

同時にいくつもの生産者のオリーブを捏ねることができるシステムは初めて見たが、かなり高品質な搾油所だと見受けられた。



Flos Olei

2013-12-02 15:04:52 | オリーブ・オイル
Flos Olei



2日間、立て続けにローマのホテル・エクセルシオールで興味深い試飲会があった。
雑誌Cucina&Vini主催のSparkleとMarco Oreggia氏主催のFlos Olei。
Flosの方はワインではなく、オリーブ・オイルの試飲会である。
Marco Oreggia氏の発行するオリーブ・オイルの評価本のお披露目で、毎年、この時期に行われるようになり、うれしいことに入場無料である。
前日のSparkleはすごい人で、移動にちょっと苦労したが、オリーブ・オイルの方はさすがにまだ「試飲」しようという人はワインほどではなく、それでもこの種の試飲会としては大成功、かなりの盛況だったと言える。

参加は、スペインからのベスト・オイルが7社、その他、数社の外国勢、あとは、イタリアの中南部が大勢を占め70社以上の参加だった。
パンも置いてあるので食べることはできるが、よくあるようにパンにオイルをつけて食べてオイルの味見をするのではなく、ちゃんと小さなプラスチックのコップが用意され、試飲(試食?味見?)できるようになっている。
リンゴもふんだんに置かれ、食べられるようになっていて、これもうれしかった。
ワインの試飲会でのオリーブ・オイルの試飲は、たいていパンにつけて「食べる」ようになっていて、これではオイルの良し悪しはわからない。
また、ワインと違って、オイルとオイルの間には水ではなく、パンでもなく、リンゴが一番いい。リンゴは、きれいにオイルの味を消せるし、オイルの味を損ねない。

参加の中に、今年は日本のオリーブ園の参加があった。天草オリーブ園。
さすがに日本からの参加ということで、珍しく、みんな興味があったのか、早くに試飲できるボトルが全て終わってしまって、味見はできなかったが、日本からの参加とはうれしいものである。

以前はオリーブ・オイルというと欠陥のある、それもいくつもの欠陥のあるオイルがかなり見られたが、非常に良くなっている。
それほどたくさんのオイルを試飲したわけではないが、どれも欠陥はなく、あとは味の好みの違いと言える。もちろん、バランスがより取れているもの、そうでないもの、苦味がかなり強いもの、かなりピリッとするものなどあるが、そういうタイプのオイルが好きな人もいる。


個人的に好きなオイルは、いくつかあるのだが、とにかくひとつだけ紹介したい。
カラブリアのLibrandi。
品質と比べて値段が安いこともあるが、とにかく透き通るようにきれいなオイルを造る。南のオイルにしてはかなり軽めであるが、野菜中心の食生活にはぴったりである。
日本では、素晴らしく魅力的な友人Tinaが輸出しているので手に入る。(ただし、すぐに売り切れになるよう)軽めで、料理を邪魔しない味わいは、日本の食生活にもぴったりだと思うのでお勧めする。
写真のオレンジは、ビオのオレンジも作っているんです、といただいたもので、オレンジ型のオイルの容器ではない。(念のため。。。)

そして、参考までに写真の1から10、58から69が今年選ばれたベスト20オイルである。(ちなみに20以上あり)
若干「政治的」側面が見られると思うので、このベスト20だけが良いわけではないが、参考まで。


Flos Oleri Tour in Rome by Marco Oreggia

2012-12-17 19:46:02 | オリーブ・オイル
フロス・オレイ -マルコ・オレッジャ氏によるオリーブオイル試飲会



マルコ・オレッジャ氏発行の本Flor Oleiの発表会、試飲会(オイルですが、飲むので試飲会です)がローマで行われた。
さすがマルコ、と思うのは、貧弱なことはしない。やるならやる、と、豪華にローマのど真ん中の高級ホテルで。そういえば、日本の某映画の某場面もここれ撮影されたなぁ。3日間の撮影は、300人以上が床に寝そべってばかりで(そういうストーリーだった)結構きつかった。

さて、試飲会。ベスト20を含む合計70社程度が参加。
ワインと違って残念なのは、たくさん飲めないこと。後が怖いので、興味があるところもちょっとパスして、まあまあ口直しにワインも飲んでみた。
ところで、オリーブオイルの試飲会と称して、パンにつけたオリーブオイルを試飲(試食)させるところが多く残念だが、ちゃんと小さなプラスチックコップが用意されていた。ただ、パンと水はあるが、リンゴがなかったのは残念。

オイルに関しては、尊敬する友人ササキ氏の話では、搾油技術が上がって、品種の特徴が失われているということだが、確かに賛成。
もちろん、良いものを作れば値段が高くても売れる、という意識を軸に、高品質のものを作るところが増えてきている。
以前は、品質以前に欠陥がないかどうかを探す、というか、欠陥があることが多く、これはなんの欠陥か、どうしてこうなるのか、と論議するのが普通だったというか、ある意味楽しかった。品質に関して普通に論議が出来るようになったということは飛躍だと思う。
また、流行は去ったのだろうが、デノッチョラート(種を取る)もじわっと増えてきている。以前のデノッチョラートは、どうしても軽めの印象があった。今はそんなことはなくなってきて、非常にきれい、透明感のある、そしてはっきりした味と香りのものになっている。

対してワインは。。。オリーブオイルを作るところの一緒の出展だったが、前夜に飲んだDarmagi2000との差があまりに激しかった。。。。

Flos Olei Tour in Rome
Un evento organizzato dal sig. Marco Oreggia per la presentazione del suo libro.
Credevo che ci fossero solo gli oli invece c’erano tanti prodotti alimentari di altissimo livello e dei vini.
Un’ottimo pomeriggio dell’enogastronomia.


オリーブオイル考

2007-06-15 06:08:46 | オリーブ・オイル
オリーブ・オイルのテイスティングは簡単なようで難しい。でも、難しいようでいて簡単でもある。
つい、ワインのテイスティングを比べてしまうが、とにかく、オリーブオイルのテイスティングで大切なのは欠点があるかを見る(利く)こと。
ワインも、きっとかつてはそうだっただろうと思うが、昨今、欠点のあるものが少なくなった。イタリアのスーパーで見られる紙パック入りのでも、適当に、うまいと思う味に造っている。そう、そういう風に造っているのであり、修正しているのであって(色や酸やタンニンを)、自然の恵みで出来た訳ではない。でも、ブラインドテイスティングでは、まさか1リットル1ユーロちょっととは思わない人も出てくるだろう。
しかし、オリーブオイルにはまだ欠点が多い。発酵臭、酸化臭、澱臭、メタル臭、そして、オリーブバエ臭などなど、実に多くの欠点が見られる(利かれる)。まず、これら、欠点があるかを探すことから始まるのがオリーブオイルのテイスティングである。微妙な香りの場合、よくわからなかったり、勘違いしたり、意見が大きく食い違ったりしてくる。簡単なようで難しいのはこの辺にある。
そして、その後、香り、味の強さ別にわけ、見ていく。ワインほど複雑ではないので、この辺りはそれほど難しくない。香りの強いオイルに評価を高くしたり、デリケートなオイルの評価を低く下げたりしないことも大切である。
数が多くなってくると、いくら吐き出しても、どうしてもお腹に溜まる。そして、トイレに駆け込む回数が増えるのオリーブオイルテイスティングのは困った点である。


古代ローマ時代のオリーブ・オイルのカテゴリー

2007-06-03 06:19:10 | オリーブ・オイル
 オリーブ・オイルの起源は西アジアと言われているが、紀元前6-5世紀にはギリシャの島々、植民地、北アフリカ、南イタリアに広がり、栽培、生産がされていたと言う。
 ローマ時代には既にオリーブ・オイルが食され、また、人々に愛されたオイルと言われているが、その当時のオリーブ・オイルのカテゴリーがちょっと面白い。

1 oleum ex albis ulivis : 最高級品。緑のオリーブで作られたもの。
2 viride : 黒くなり始めたオリーブで作られたもの。
3 maturum : 熟したオリーブで作られたもの。
4 caducum : 地面に落ちたオリーブで作られたもの。
5 cibarium : 傷んだオリーブで作られたもので奴隷の消費用。

 今とはカテゴリー分けは違うが、品質の良し悪しに準じて既にカテゴリーが存在していたとはかなりすごい。それも、なるほど、痛いところを突いている。つまり、例えば、まだ緑色のオリーブの実を絞ったものは、香りが非常に良いので、今でも高評価を得る。地面に落ちたオリーブの実で作ったものは、今でも、少しでも搾油量を増やそうとでも思って混ぜると、当然オイルは良いものにならない。そこに傷んだ実を入れたりしたら、それこそ酸度が上がり、食用ではなく、いわゆるランプ用lampanteとなってしまう。おそらく、それに準ずるものを食していたとは、奴隷がかわいそうだが。