桃源鎮
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(写真は中国雲南省の麗江古城内。瓦職人さんが、手際よく屋根の部分を無いされていた。)
桃源鎮 SHANGRI-LA TOWN
感動度 ★★★★★
満足度 ★★★★★
話の展開 ★★★★★
映画の好きさ ★★★★★
お勧め度 好みによって★★★★★又は★☆☆☆☆
1996 中国
原作 チュー・シャオユイ『山風』
監督 ション・ユイ
川劇(四川劇)顧問 レン・ディーファン、ユー・ウェントン
出演 コー・チーチェン
レイ・ゴーシェン
トゥ・ニンリン
リ・ティン
ワン・ジャオパオ 他
この映画も何年か前に録画しておいた、好きな映画の一つです。
ひさしぶりに観ましたが、重厚なつくりで見ごたえがありました。
また中国に行きたくなる作品。『だから中国の景色や息吹に惹かれるのよね~』って感じの映画。但し映画の内容は、憬れるといった内容のものではありませんが・・・桃源鎮のたたずまいや屋根の形、石畳、人々の生活臭はやはり好きです・・・・・・
揚子江近くの四川省・桃源村。
あらすじはここでは省かせていただき、簡単な感想だけを記録したいと思います。
一見、いつの時代の話なのかの判然がつきにくいのですが、村長夫人の髪型や家の内装、ライバルの豆腐屋や親戚の茶店の女性の『市場主義』といった言葉から、文革以降。また、一人っ子政策前の一面も、豆腐や夫婦の言葉からうかがえる。
時の流れをわざと感じさせない舞台作りのこの映画は、『桃源鎮(桃源郷)』或いは『シャングリア・タウン(SHANGRI-LA TOWN)』といった言葉が良く似合う。洒落た作品だ。
この映画のポイントも先日観たところの『秋菊物語』と同様に無知。
揚子江を境に 隔離された電気も通らない田舎に住む 豆腐屋の金は、職人気質のまじめな男。豆腐一筋に生きたこの男。家族を守り、何とか村(桃源鎮)に店を構えたい。正直なだけがとりえの豆腐屋は、自分たちに日が当たることを願い、村のあちらこちらに取り繕う。ただ、隔離された彼の生活と彼自身の無知が災いして、村や世間の動向にはとんと疎い。豆腐屋はあちらに着き、こちらにつきするが、一向に真実が見えてこない。
村でたった一人、中国日報(新聞)をとっている、元は風呂で役人の背中を流していた老人の、
「見えないときは 中立の立場に立つこと。それが生きるすべだ。」
という言葉が印象深い。
豆腐屋の金は彼の言葉に従わず もがき、『日和見人間』とののしられる。
そんな時、賄賂で牢獄に入った夫の妻から、
「5000元は金さんが貸してくれたことにして・・・」
と頼まれる。村(桃源鎮)に豆腐屋を持たせてくれるといった甘い言葉も掛けられる。真に受けた豆腐屋。無知が、共産党の(映画の話です)権威主義の女の大それた願いを引き受けてしまう。そこには桃源鎮に対する大きな期待と純粋な憧れだけで、悪意などはもうとうない。
映画でもこのシーンは工夫を凝らされている。
大豆から 汗水たらして手作業で絞った豆乳。その煮えたぎった大なべ。鍋の上には豆乳色の湯気が 二人の気持ちが登りつめるように、立ち込める。そんな半端な色彩の中、アジア人色の女の手が 少しクリームがかった借用証書を差し出す。アジア人の色の豆腐屋の手がそれを受け取る。豆乳色の湯気が全てを許し、全てをあいまいにするかのように・・・美しかった・・・それは一瞬の出来事で、豆腐屋の無知で、物事を大きくとらえてない悪意の無さの象徴の場面でもあった。私の、この映画の一番好きな場面だ。
そして二人の工作は発覚、女は取り調べられる。
豆腐屋は意識を失ったように石畳の村を歩き、四川劇の『包公』のもとへふらふらとたどり着く・・・・・・
中国らしい秀作の一つ。素晴らしい作品だと思う。
乱さんは中国が好きですね、、
makiはどこがお好きですか?
乱さんはどこ?