恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 61 二十五丁裏 二十六丁表と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9
富田高至 編者
和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年
下 61 二十五丁裏 二十六丁表
二十五丁裏
◯をかし、男、頭巾まて赤裏をきて、数奇にいき
たりけるに、「是ハ色このむ数奇者」と簾のうち
なるのいひけるを聞く、
そめ物を きたらん人のいかてかハ
色になるてふ ことのなからん
二十六丁表
返し
名にしおハヾ 茶色こそあれ赤裏の
頭巾肩衣 きるをいふなり
『仁勢物語』和泉書院影印業刊
そめ物を きたらん人のいかてかハ
色になるてふ ことのなからん
返し
名にしおハヾ 茶色こそあれ赤裏の
頭巾肩衣 きるをいふなり
『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す
染河を わたらむ人のいかでかは
色になるてふ ことのなからん
女、返し
名にしおはば あだにぞあるべきたはれ島
浪の濡衣(ぬれぎぬ)きるといふなり
数奇(すき)
数奇、数寄
《「好き」と同語源。「数寄」「数奇」は当て字》
風流・風雅に心を寄せること。
また、茶の湯・生け花などの風流・風雅の道。「―者 (しゃ) 」
数奇者(すきしや すきしゃ)
是ハ色をこのむ数奇者
簾
(すだれ)
そめ物を きたらん人のいかてかハ
色になるてふ ことのなからん
染物の 着たらん人のいかでかは
色になるちょう 好む数奇者(好きもの 此処では好きものと読む方が良いと思う。)