唄うのを諦めた日

　唄うのが好きだが、一人で歌うカラオケは苦手で、大勢で歌うのが大好きだ。
幼い頃にオーデションを受け海外にも紹介され、キングレコード専属の幼年合唱団
に「桑原豆歌手隊」に入っていた。何しろ幼稚園児ばかりで、どこでももてはやされ
その頃の新聞や雑誌などでも、随分紹介されていたようだ。
　ステージ体験も多く、無論独唱もしたし、レコード吹き込みなどの経験がある
私は、それは今でもハッキリ覚えている。声だけは多少恵まれているようで、先日
ある人に「あなたの声は30歳位若い」などと、おだてられてスッカリ良い気になった。
　
　大分以前は混声合唱団に入っていて、その発表会にも二度程出たこともあった。
そこで歌った曲は「モルダウ」「アメージンググレース」など、私好みの曲が多く
混声で歌うのは、ハーモニーがとてもステキで、本当に楽しかった。
　でも、来年の発表曲と配られた譜面は、ある地方の民謡で大変暗い曲だった。
それを一年間練習すると思ったら、我儘な私はどうしても我慢できず止めてしまった。
　その頃私が入団していた合唱団は、今ではもうないようだ。
それから色々探したが、なかなか見つからず何年か過ぎた。
　最近レベルが高く歌う曲はあまり好みではないが、でもここなら入団したいと思った
混声合唱団に巡り合った。ことにその「ヴォイストレーニング」とても素晴らしく、私が
過去に指導を受けたどの先生より良いと感銘した。でも結局練習時間があまりにも長く
とても続けられないと諦めた。

　話す事は私の職業だから「声の質」は大切な商売道具で、（無論毎日自分なりにレッスン
はしているが）昨日もあるコーラスの体験をしたが、そこは私はレベルが合わなかった。
　年齢とともに声はだんだん低くなるが、長年レッスンしているので、音域は若い人にも負け
ないくらい広いと思う。でも日時的な関係や、またあまり難しくてははついて行けないし・・・
　何年探してもなかなか巡り合えなかった。もう混成合唱団に入るのは諦めようと、つくづく
思った淋しい日だった。