井野瀬久美惠『興亡の世界史16 大英帝国という経験』(講談社、2007年4月)
この巻ではアメリカという広大な植民地を喪失したイギリスが、「自由貿易」と奴隷貿易の廃止などに見られる「博愛主義」を軸として世界に冠たる大英帝国を形成していく様子を中心に記述されています。
大英帝国形成の過程の中でアイルランド人が過酷な運命を辿ったことはよく知られていますが、自分達の王をイングランド王として送り込んだスコットランド人も負けず劣らず悲惨な運命を辿っていたんですね。名誉革命の際に、スコットランド北部の高地地方の人々(ハイランダー)は新国王のウィリアム3世・メアリ2世やその後継者たちに反旗を翻し、国王の地位を追われたジェイムズ2世とその子孫を支援。しかしイングランドとの戦いに敗れ、ハイランダーは当局より弾圧されることになります。
その後、スコットランド議会は出遅れた海外貿易競争の分野で巻き返しをはかるべく、海上交通の要所であるパナマ付近に植民地建設を計画。スコットランド人はこの時設立されたスコットランド会社に希望を託してなけなしの金を投資しますが、イングランドが非協力的なこともあって、植民地建設計画は無惨な失敗を遂げることになります。スコットランド人が投資した金も当然パーです。そして1707年、ニッチもサッチもいかなくなったスコットランド議会は自分達の主権を放棄する形でイングランドとの合併に応じることに…… 書いてて何だか泣けてきました(;´д⊂)
本書によると大英帝国の衰退が始まった頃にはローマ帝国の衰退に関する本(ギボンの『ローマ帝国衰亡史』など)がよく読まれたということですが、現在のところ大英帝国の衰退に関する本がさほど読まれていないということは、大英帝国に次ぐ帝国となったアメリカの覇権はまだまだ安泰ということなんでしょうか……
この巻ではアメリカという広大な植民地を喪失したイギリスが、「自由貿易」と奴隷貿易の廃止などに見られる「博愛主義」を軸として世界に冠たる大英帝国を形成していく様子を中心に記述されています。
大英帝国形成の過程の中でアイルランド人が過酷な運命を辿ったことはよく知られていますが、自分達の王をイングランド王として送り込んだスコットランド人も負けず劣らず悲惨な運命を辿っていたんですね。名誉革命の際に、スコットランド北部の高地地方の人々(ハイランダー)は新国王のウィリアム3世・メアリ2世やその後継者たちに反旗を翻し、国王の地位を追われたジェイムズ2世とその子孫を支援。しかしイングランドとの戦いに敗れ、ハイランダーは当局より弾圧されることになります。
その後、スコットランド議会は出遅れた海外貿易競争の分野で巻き返しをはかるべく、海上交通の要所であるパナマ付近に植民地建設を計画。スコットランド人はこの時設立されたスコットランド会社に希望を託してなけなしの金を投資しますが、イングランドが非協力的なこともあって、植民地建設計画は無惨な失敗を遂げることになります。スコットランド人が投資した金も当然パーです。そして1707年、ニッチもサッチもいかなくなったスコットランド議会は自分達の主権を放棄する形でイングランドとの合併に応じることに…… 書いてて何だか泣けてきました(;´д⊂)
本書によると大英帝国の衰退が始まった頃にはローマ帝国の衰退に関する本(ギボンの『ローマ帝国衰亡史』など)がよく読まれたということですが、現在のところ大英帝国の衰退に関する本がさほど読まれていないということは、大英帝国に次ぐ帝国となったアメリカの覇権はまだまだ安泰ということなんでしょうか……