博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2014年4月に読んだ本

2014年05月01日 | 読書メーター
旧約聖書の謎 - 隠されたメッセージ (中公新書)旧約聖書の謎 - 隠されたメッセージ (中公新書)感想
『聖書考古学』の続編というか補編。重複しているネタもあります。「旧約聖書の本文を、そのまま何の史料批判も経ずして一級の史料であるかのように扱う」「こうした態度で聖書を扱うとき、それが文献史学や考古学の成果と相容れない場合、聖書記述の歴史的信憑性を擁護することに躍起になってしまうことさえある。しかしそうすることによって、逆に聖書記述の文化的価値を貶める結果になっていはしないだろうか。」本書のこの一節は聖書に限らず、すべての古典研究にあてはまることだろう。
読了日:4月6日 著者:長谷川修一

慶應志木高校ライブ授業 漢文は本当につまらないのか(祥伝社新書)
慶應志木高校ライブ授業 漢文は本当につまらないのか(祥伝社新書)感想
高校の漢文の授業実践。オビにある『老子』の大器晩成など問題のある箇所も散見されるが(「大器免成」とあるのは前漢の馬王堆帛書本で、戦国時代の郭店楚簡本は「大器曼城」)、その都度参考文献を紹介している点には好感が持てる。
読了日:4月10日 著者:橋本陽介

近現代1 (岩波講座 日本歴史 第15巻)
近現代1 (岩波講座 日本歴史 第15巻)感想
幕末に絡むものが「戊辰戦争と廃藩置県」しか無いが、その他の事項は近世の最終巻で扱われるのだろうか?小笠原諸島を北海道・沖縄と対比させる「北海道・沖縄・小笠原諸島と近代日本」、僧侶による教員兼務など仏教と学校教育との関係に触れる「教育・教化政策と宗教」を面白く読んだ。
読了日:4月13日 著者:吉田裕,松尾正人,奥田晴樹,神山恒雄,松沢裕作,塩出浩之,鈴木淳,苅部直,谷川穣

漢文脈と近代日本―もう一つのことばの世界 (NHKブックス)
漢文脈と近代日本―もう一つのことばの世界 (NHKブックス)感想
明治人には漢文の素養があったとよく言われるが、その「漢文の素養」の実体とはいかなるものだったのかを論じた書。幕末あたりから「漢文」から漢文訓読調の和文が分離していくという話から始まり、近代日本の文学史は一般に言われているのとは異なり、「脱・漢文」「反・漢文」の歴史であったと話を広げていきます。森鴎外の「舞姫」が中国の才子佳人小説を思わせる要素があるとか、明治以後の中国との交流によって漢詩・漢文の位置づけが変わったという指摘が面白かった。
読了日:4月16日 著者:齋藤希史

漢字の成り立ち: 『説文解字』から最先端の研究まで (筑摩選書)
漢字の成り立ち: 『説文解字』から最先端の研究まで (筑摩選書)感想
加藤常賢・藤堂明保・白川静の研究の手法の特徴と問題点についてはよくまとめられている。特に白川静に関して、甲骨・金文の用例はよく参照しているが、それでも呪術儀礼を重んじるあまりに実際の用例を無視する傾向がある、研究成果や考古発掘成果のアップデートが1960年代あたりで止まっているといった指摘はその通り。しかし近年の中国での研究の進展はあまり把握していないようで残念。戦国竹簡の出土の増加により、30年間研究が止まっているどころか、ここ10年でパラダイムが変わったと言われるほど研究が進んでいるのだが…
読了日:4月20日 著者:落合淳思

五経入門―中国古典の世界 (研文選書)
五経入門―中国古典の世界 (研文選書)感想
平成の出典が偽古文の大禹謨であることについて前々から疑問に思っていたが、本書によると宋学では重要視される篇であるらしい。また第6章のコラムで『論語』に言及される管仲・晏嬰・子産ら賢人の具体的な事績は『春秋』には見えず、孔子は彼らの事績をどこから知ったのか、孔子の時に既に『左伝』のような文献があったのではないかという指摘も面白い。ただ、第2章で言及される易字の字源については、取っ手のある酒杯に酒を注ぐ(あるいは酒杯から酒を注ぐ)形を象っているというのが通説だが…
読了日:4月23日 著者:野間文史

中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史 (文春文庫)
中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史 (文春文庫)感想
以前に単行本の方を読んだが、文庫化を機に再読。北朝鮮は過去の日本の姿であると同時に未来の日本の姿にもなり得るという指摘には納得。
読了日:4月27日 著者:與那覇潤

黒田官兵衛 - 「天下を狙った軍師」の実像 (中公新書)
黒田官兵衛 - 「天下を狙った軍師」の実像 (中公新書)感想
大河ドラマの予習として読む。九州遠征などで失態を犯してもキリシタンを庇護し続けても厳罰を受けることなく秀吉に重用され続けたことから、当時の大物には違いなかったんだろうなと。本書で触れられている官兵衛のキリシタン大名としての姿や朝鮮出兵への関与、関ヶ原の合戦時の吉川広家への調略はドラマではどう描かれることになるのか。
読了日:4月28日 著者:諏訪勝則

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