博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2014年6月に読んだ本

2014年07月01日 | 読書メーター
カムイ伝講義 (ちくま文庫)カムイ伝講義 (ちくま文庫)感想
白土三平の『カムイ伝』シリーズをテキストとして学ぶ江戸時代の身分制と生業。話は日本列島の内側にとどまらず、当時の世界の中での日本の立ち位置にまで及んでいく。劇画を用いた講義の試みとして注目したい。
読了日:6月1日 著者:田中優子

古代2 (岩波講座 日本歴史 第2巻)古代2 (岩波講座 日本歴史 第2巻)感想
今巻は継体朝から斉明・天智朝あたりまで。「六-八世紀の東アジアと東アジア世界論」は末尾で当今流行の「東部ユーラシア」に言及しつつも、なお西嶋定生以来の「東アジア世界」の枠組みがなお有効とする。「大王の朝廷と推古朝」で言及される蘇我系・非蘇我系の大王位継承争いについては、蘇我入鹿が非蘇我系とされる田村王子を支援するなどのねじれが見られ、個人的にはそんな枠組みは存在しなかったか、欽明の子世代までしか有効ではなかったのではないかと思う。月報に東野治之「史料と史実-天皇の和風諡号を例に」などがある。
読了日:6月2日 著者:

南朝の真実: 忠臣という幻想 (歴史文化ライブラリー)南朝の真実: 忠臣という幻想 (歴史文化ライブラリー)感想
楠木正成をはじめ忠臣揃いのように言われてきた南朝も実際には北朝と同じように内紛まみれであったことを論証する。『太平記』がかつての皇国史観の形成に強い影響を与えたことは承知しているが、それでも三国志ならともかく、戦後世代には一部のマニアを除いてほとんど忘れられかけている歴史物語としての『太平記』を俎上に挙げて史実とは異なると強調したところで、今となってはどれほどの意味があるのか疑問に思わないでもないが…
読了日:6月3日 著者:亀田俊和

アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)感想
朝ドラ『花子とアン』の原案ということで読んでみたが、やはり原案は原案、ドラマと実在の人物村岡花子の人生とは別物だなと感じた。特にクリスチャンとしての村岡花子、他の女性文学者との交流、婦人参政権運動との関わりはかなり端折られることになるのではないかと今から不安になってくるが……
読了日:6月8日 著者:村岡恵理

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)感想
文学部出身者としては、第3章の他学部に対する文学部の位置づけとか文学部卒業後の進路に関する話を面白く読んだ。かつては文学部卒というだけで一般企業での就職試験さえ受けられなかったり、卒業した学部によって入社後の配属が決まったりしていたんだなと。文学部の改編やいわゆる学部の「キラキラネーム化」が進んだ現在ではかなり状況は変わっているはずだが。
読了日:6月9日 著者:竹内洋

中世2 (岩波講座 日本歴史 第7巻)中世2 (岩波講座 日本歴史 第7巻)感想
今巻は鎌倉時代から南北朝あたりまで。桃崎論文「建武政権論」の最後、南北朝の内乱は南朝と幕府との戦争であったが、一方南朝朝廷が交渉相手として認めていたのは幕府ではなく北朝朝廷であり、幕府が主体となっては媾和の交渉に応じてもらえないと悟った義満が、媾和のために北朝朝廷の官位を欲し、左大臣すなわち事実上の北朝の首班となって南朝との媾和へと導いたという指摘が面白かった。月報に坂井榮八郎「ドイツ史と日本史のあいだを行き来した日々」があり、氏がドイツ滞在中に日本史に関する講義を行った体験を述べる。
読了日:6月18日 著者:

磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~ 1 (ジャンプコミックス)磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~ 1 (ジャンプコミックス)感想
もっと浮世絵っぽくてシュールな内容かと想像してたら、お江戸を舞台にした普通のギャグ漫画だった。が、これを連載させたジャンプはエライと思います。取り敢えずお犬様がかわいい。
読了日:6月18日 著者:仲間りょう

日本軍と日本兵 米軍報告書は語る (講談社現代新書)日本軍と日本兵 米軍報告書は語る (講談社現代新書)感想
米軍が内部用に発行していた広報誌を史料とする、アメリカ側から見た日本軍・日本兵の姿。日本兵の給料やその家族への生活援助はおそらく世界一低く、家族への援助は近隣住民と婦人・在郷軍人などの団体任せになっているという記述が印象的。老人介護などの福祉が実質家族頼りになっている今の日本の現状を思わせるものがあるなと。
読了日:6月18日 著者:一ノ瀬俊也

中国絵画入門 (岩波新書)中国絵画入門 (岩波新書)感想
漢代の画像石からはじめる中国絵画史というのは一般的なのかどうか知らないが、何の知識や素養もない状態でも読みやすい内容。個人的にはその序盤の、漢代の邸宅での宴会などを描いた画像石で上段・下段と別れているのは一階・二階を表しているのではなくて、邸宅の奥行きを表しているのではないかという指摘が最も面白いと感じたが。これが確かなら遠近法に繋がる画法ということになろう。
読了日:6月27日 著者:宇佐美文理

史料としての猫絵 (日本史リブレット)史料としての猫絵 (日本史リブレット)感想
第一章では歌川国芳の描く猫(本書カバー)は一体何を見つめているのかを取っ掛かりにして、江戸時代に猫絵がどういう役割を果たしていたのか?近代以前の絵画とはどういうものであったのか?ということに話が及んでいく。第二章は日本史における猫のあれこれ。江戸時代以前は現在とは逆に飼い猫に綱がつけられ、犬が放し飼いになっていたなど面白いトピックもあるが、話題が散漫な印象。
読了日:6月29日 著者:藤原重雄

コメント (2)
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