博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『宮廷画師郎世寧』その2

2007年06月12日 | 中国歴史ドラマ
『宮廷画師郎世寧』第8~12話まで見ました。

郎世寧は康熙帝から紫禁城内で皇族の子弟らに西洋絵画を教えることを許可され、康熙帝のお気に入りの孫の弘暦(後の乾隆帝)も小弟らとともに教えを受けることになります。嫌がる宦官をモデルに仕立てて裸体図を描かせたり、康熙帝の愛娘の七格格(七番目の皇女の意)の姿をこっそりのぞき見しながらスケッチしたりとなかなか楽しい日々を送っている郎世寧ですが、そんな彼に二つの試練が降りかかります。

一つは七格格が西疆の河汗のもとに降嫁することになったこと。実は郎世寧は彼女に淡い恋心を抱いていたのです。彼は七格格が紫禁城を去る日に今まで描きためた彼女のスケッチを一枚一枚焼き捨てていきます……

二つめの試練は、康熙帝が崩御し、四阿哥(四番目の皇子の意)が雍正帝として即位すると、かつて郎世寧が新帝の同母弟の十四阿哥をモデルとして『出征図』を描いたことが問題とされます。この絵は十四阿哥が大将軍としてジュンガル部に出征する際に描かれたものですが、この時に十四阿哥が康熙帝より賜った金甲を着用していたのが僭越だというのです。

雍正帝はこの絵を口実として皇位継承のライバルであった十四阿哥と八阿哥(彼はこの『出征図』の所有者でした)を痛めつけようというハラです。そのとばっちりを受けて郎世寧も十四阿哥の皇位継承を支援した一味として投獄されてしまいます。雍正帝を演じているのは鍾鎮涛(ケニー・ビー)という俳優さんで、『神雕侠侶』で公孫止を演じていた人ですね。公孫止と同じくこのドラマの雍正帝もネチっこく人をいたぶるのが好きなようです(^^;) 

獄中で絵画が政治的に利用されることに疑問を抱く郎世寧ですが、皮肉にも彼が康熙帝らのお供をして避暑山荘に赴いた時に描いた『狩猟図』の政治性が認められて釈放されることになります。この絵は避暑山荘のお狩り場で雍正帝が虎を仕留め、弘暦が熊を射る場面を描いたものですが、これが雍正帝を経て弘暦に皇位を伝えたいという康熙帝の心願を描き表したものだというわけです。
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『大漢風』第36話ほか

2007年06月10日 | ドラマ『大漢風』
さっきまでNHKの『激流中国』を見てました。今回のテーマは中国での不足についてです。北京では経済発展・人口増加・オリンピックに向けての開発と様々な事情により水不足が深刻化しており、周辺の地域から本来農民が使用すべきダムを差し押さえて水を確保する一方で、市内でも専門の役所を置いて人々に節水を呼びかけたり、緑化・消防用の水道から水を盗む行為を監視しているといった内容でした。

地方では農業用水や生活用水が不足しているにも関わらず村の真ん前にあるダムの水が使えないという状況に対して、「何としてでもオリンピックを成功させなければならないので仕方ない」「我々が苦しい思いをしてでも北京に水を送らなければならない」と耐えているのが印象的でした。

で、今週の『大漢風』です。背水の陣を布き、陳余の軍を打ち破る韓信。次々と勲功をモノにする彼に劉邦から君姫という女性が贈られ、彼女と結婚することになります。

一方、恋人の月姫の方はここ数話でもの凄い転落人生を歩んでおります。まず韓信がまだ項羽のもとにいると信じて虞姫の侍女となることから始まり、彭城が劉邦に攻め落とされると虞姫や君児とともに宮殿から逃げ延びますが、「虞姫の居場所を教えてくれたら韓信と会わせてあげる」という呂雉の甘言に乗って彼女を虞姫の隠れ家に案内します。しかし着いた時には既に虞姫は姿を消しており、韓信と会わせてもらえるという約束はあっさりと反故に……

その後軍中の雑用係として漢軍の中に潜り込むものの、前回の第35話で心ならずも漢の武将の囲われ者にされてしまいます。今回の第36話ではいよいよ韓信の陣に到着しますが、韓信は月姫がすぐ側まで来ているのに気付かずに君姫との結婚を承諾。それで悲しみのあまり兵士達に混じってヤケ酒を飲んでいるうちに彼らの慰み者にされてしまう始末……

普通ならあまりにあまりな展開に泣けてしまうところなんでしょうけど、躊躇もなくあっさり主人を裏切るところを見せたりしてあんまり同情できなくするあたりがこのドラマらしいといえばらしいですね(^^;) 彼女と韓信との再会は韓信の没落後ということになるんでしょうか。

その頃、劉邦の方は項羽の軍師の范増を除くために離間の計を仕掛けます。この計略に乗り気な劉邦と陳平をよそに、張良だけが何やら浮かない顔をしておりますが……
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『夜宴』

2007年06月09日 | 映画
『女帝 エンペラー』を見てきました。いろんな所で散々言われていることですが、この邦題は酷いです。原題の『夜宴』ではいまいちパッとしないというのはわかりますし、『女帝』というタイトルもストーリーと合っていて悪くはないと思うのですが、なぜ素直に「エンプレス」という読みにしなかったのでしょうか。理解に苦しみます……

内容の方は中華版『ハムレット』という触れ込みでしたが、『HERO』なんかと同じくストーリーよりは映像美を楽しむべき作品ですね。私も時々世界の名作・古典やベストセラー小説を武侠小説の世界に置き換えたらどうなるだろうと妄想することがありますが、この映画は「シェークスピアの悲劇を武侠物に仕立て直したらこんなん出来ちゃったぜ!」という興奮というか、いい意味での悪ノリ感が欠けていると思います。 

時代設定は五代十国時代ということになっていますけど、弟が兄帝を殺し、兄帝の子をさしおいて皇帝となったという設定はむしろ五代の後の宋の太祖と太宗の関係を思わせますね。

映画を見た後は久しぶりに難波の上海新天地に行ってみました。例の七階から一階に移ってきた書籍・CD・DVD売り場ですが、予想通り売り場は狭いものの品揃えはぼちぼちという状態になってました(^^;) で、バリー・ウォン監督の『雪山飛狐』をゲット。いわゆる圧縮DVDで1枚あたり7~8話分を詰め込んだものですが、全44話合わせて2100円という値段の安さにつられて買ってしまいました。
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『包青天之八 画中話』

2007年06月07日 | 中国古典小説ドラマ
『画中話』(全6話)を鑑賞。

今回のエピソードの主役は盲目の女性呉玉貞と、その娘の呉中怡、そして障害を負った息子の三人家族です。呉玉貞は武芸の大家の娘として生まれ、父親の一番弟子の段平に嫁いで二人の子供に恵まれた。しかし段平の二人の弟弟子は彼が呉玉貞と結婚して一門の秘伝「剣雨飛花」を師から授けられたことを妬み、段平を殺害したうえに兄弟子一家が暮らしていた三義堂に放火した。呉玉貞はそのショックで盲目となってしまう。

それから十八年。呉中怡と弟は開封の街中で三義堂が燃やされた絵を売る毎日を送っていた。この絵を人目に触れさせることにより、消息を絶った二人の仇敵をおびき出し、父親の仇を討とうというのである。街の慈善家の息子の林平川は呉中怡に恋心を抱き、何かと一家の世話を焼こうとするが、何を隠そう彼の父親林書善と義理の叔父の方文山こそが呉中怡らが探し求めていた一家の仇であった……

門派内の対立や仇討ちがメインテーマとなっており、これもかなり武侠色の強いエピソードとなっています。呉玉貞は盲目というハンデを負っていますが武芸の腕は一流で、針を暗器として使い、仇の片割れの方文山と酒場で大立ち回りを繰り広げます。で、やっぱり包拯と展昭の存在感が少し薄くなってますね。展昭は昔呉玉貞の父親から武芸を習ったことがあるということで彼女たちを助けようとしますが、一家からはどうも適当にあしらわれているような感じです(^^;) 

展昭は味方側に武芸ができるゲストキャラが登場すると、途端に影が薄くなるような気がしますね。
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『興亡の世界史16 大英帝国という経験』

2007年06月05日 | 世界史書籍
井野瀬久美惠『興亡の世界史16 大英帝国という経験』(講談社、2007年4月)

この巻ではアメリカという広大な植民地を喪失したイギリスが、「自由貿易」と奴隷貿易の廃止などに見られる「博愛主義」を軸として世界に冠たる大英帝国を形成していく様子を中心に記述されています。

大英帝国形成の過程の中でアイルランド人が過酷な運命を辿ったことはよく知られていますが、自分達の王をイングランド王として送り込んだスコットランド人も負けず劣らず悲惨な運命を辿っていたんですね。名誉革命の際に、スコットランド北部の高地地方の人々(ハイランダー)は新国王のウィリアム3世・メアリ2世やその後継者たちに反旗を翻し、国王の地位を追われたジェイムズ2世とその子孫を支援。しかしイングランドとの戦いに敗れ、ハイランダーは当局より弾圧されることになります。

その後、スコットランド議会は出遅れた海外貿易競争の分野で巻き返しをはかるべく、海上交通の要所であるパナマ付近に植民地建設を計画。スコットランド人はこの時設立されたスコットランド会社に希望を託してなけなしの金を投資しますが、イングランドが非協力的なこともあって、植民地建設計画は無惨な失敗を遂げることになります。スコットランド人が投資した金も当然パーです。そして1707年、ニッチもサッチもいかなくなったスコットランド議会は自分達の主権を放棄する形でイングランドとの合併に応じることに…… 書いてて何だか泣けてきました(;´д⊂)

本書によると大英帝国の衰退が始まった頃にはローマ帝国の衰退に関する本(ギボンの『ローマ帝国衰亡史』など)がよく読まれたということですが、現在のところ大英帝国の衰退に関する本がさほど読まれていないということは、大英帝国に次ぐ帝国となったアメリカの覇権はまだまだ安泰ということなんでしょうか……
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『大漢風』第35話ほか

2007年06月03日 | ドラマ『大漢風』
昨日放映の『テレサ・テン物語』をぼちぼちと見てました。今回初めて知ったのですが、テレサ・テンの一家は台湾の外省人だったんですね。いつか故郷である大陸に両親を連れて帰りたいと思いつつも、天安門事件がきっかけで大陸が故郷とすることを拒絶するようになるという話の展開でした。

で、本題の『大漢風』です。冒頭で虞姫が流産した我が子の四十九日を弔ってますが、この時代に四十九日の風習なんてあったのでしょうか。このドラマ、『史記』などに見えるエピソードや設定は割と丁寧に話の中に織り込んでいるのですが、このあたりの風俗考証となるとグダグダですなあ(^^;) あと、劉邦と張良が殷周式の青銅器で茶を飲んでいるシーンももの凄くミスマッチです……

はてさて項羽側に拘禁されている呂雉ですが、范増の進言によって処刑されてしまうかもしれないという瀬戸際に追い込まれますが、これを知った虞姫が呂雉の助命を嘆願し、処刑を沙汰止みに…… 虞姫のおかげで助かっても「感謝などするものかっ!」という捨て台詞を吐く呂雉に痺れました(^^;)
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麻疹で休講

2007年06月03日 | 雑記
うちの大学でも麻疹の罹患者が出てしまい、今日から6/15まで二週間全学休講となってしまいました。

やはり三人ほど罹患者が出た某K大は平常通りにやっているのに、うちの大学がこんなに長期間休講にする必要があるのかとか色々言いたいことはありますけど、ここで愚痴ったところでどうしようもないよなあ(-_-;) 

休講期間中は図書館も閉まっているというのが何よりも痛いです……
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『笑傲江湖』文庫版と武侠ドラマ23新作

2007年06月01日 | 小説
『笑傲江湖』文庫版第1巻が発売になりました。

オビに田中芳樹氏による推薦の辞が載ってますが、ひょっとして最終巻の解説も田中氏が書かれるんでしょうか。個人的にそれだけは勘弁していただきたいのですが(^^;) 武田泰淳『十三妹』文庫版の悪夢が甦ってきそうです…… ちなみに今回もドラマ版DVDプレゼントありです。

それとチャンネルNECOの武侠ドラマ枠ですが、今日から放映の『連城訣』が終了した後は古龍原作『大旗英雄伝』を放映予定とのこと。例の撮影スタッフによる景観破壊が問題になった作品ですな(^^;) 

ちなみにこのドラマはまだ日本語版DVDが発売になっていないとのことです。詳しくはチャンネルNECO武侠ドラマ23のお知らせブログを参照のこと。↓
http://neco.boxerblog.com/bukyou/2007/06/23_38b0.html
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