令和4年2月25日(金)
歌詠鳥 : うぐいす
日本で人に最も親しまれ、古来から詩歌にもよく詠まれている
代表的な春の鳴禽である。
ウグイス科に属し、雀大で身体は細く暗緑褐色(鶯色)をし、
「梅に鶯」とも言われ、春の代表的な花と鳥を組み合わせた、
縁起の良さを願う言葉である。
姿よりも声音の称揚される鳥で、その鳴き声は地鳴きの「笹鳴」
(冬の季語)に始まり、梅の咲く頃にホーホケキョと春を告げ、
「春告鳥」、二月の第一声を「初音」と称して珍重するが次第
に整って三月頃が最も美しい声音といわれる。
巣や縄張り近くに外敵が現れると「ケキョケキョ」と何度も繰
返すのが「鶯の谷渡り」で、春を過ぎる頃は「老鶯」という。
繁殖期を過ぎ、地鳴き」に戻るのを「鶯音を入る」(夏の季語)
俳人の夏井さつきさんの著書「絶滅寸前季語辞典」に「歌詠鳥」
が記載されていたので紹介したい。
歌詠鳥(うたよみどり) 三春、鶯の副題
古来、詩歌に多く詠まれてきた鳥あることからの命名か。
あるいは歌を詠むが如くに鳴くという鳴き声に対するネーミング
か、そこのところはよく判らないが、いずれにしろこれだけ沢山
の季語、バリエーションがある鶏は鶯以外にないだろう。
冬の間は「笹鳴」と愛でて貰い、春先に聞こえてくる第一声は、
「初音」と大喜びされ、夏になったらなったで「老鶯」と慈しん
でもらえるのだからシアワセな話だ。
同じ副題でも、「春告鳥」「花見鳥」は季節の気分が伝わってく
るし、「経読鳥」はホーホケキョと法華経の語呂合わせだろうと
想像はつくが、「黄粉鳥」なんて呼び名」まであるのには驚いた。
なんで餅に付ける黄粉と一緒にされなくてはいけないのかと、鶯
に代って憤ってやりたくなる。
それにしても「歌詠鳥」と「黄粉鳥」が同じ」ものを指している
なんて発想は、なかなか大胆。
このギャップあるネーミングを面白がるのが俳人の習性であり、
自分こそがこのギャップを詠みわけてみよう、なんて思うのが、
カナシクも俗な俳人根性である。
今日の1句(俳人の名句)
さしのべて歌詠鳥の山河かな 夏井いつき
黄粉鳥とはワタクシのことですか 夏井いつき
(夏木いつき著:絶滅寸前季語辞典より、引用しました。)