はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

橘玲著『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』

2022年12月26日 | 
2022/12/26


橘玲さんの『スピリチュアルズ』を読んでいます。

とても興味深い本ですが
ここではある箇所を読んで感じたことを
取り上げてみたいと思います。


 

橘氏は進化心理学や遺伝と環境について
多く書いてきていますね。

私は昔、児童学を学びましたが
「子どもの成長に与える遺伝と環境の比率はどのくらいか」
という課題が出たことがあり
一生懸命に調べた記憶があります。


大まかに言ってしまえば
遺伝と環境の比率は
一卵性双生児の研究などから
約50%づつではないかと言われています。


橘氏の本から引用してみたいと思います。

・・・・・・・


性格や才能、認知能力から精神疾患に至るまで
人生すべての領域に遺伝が関わり
その影響は一般に思われているよりもかなり大きい
(p.328)

リベラルな社会では、遺伝の影響を語ることは
〈ナチスの優生学と同じ〉と徹底的に忌避され
子育てや家庭環境の影響が過剰に強調されている。

一部の恵まれた母親が
「自分はいかにして子育てで成功したのか」
を得々と語り、その陰で
子どもの問題はすべて「親が悪い」
とされることになった。(p.329)


子どもの人生は子育ての巧拙で決まると
世界中で信じられている。
行動遺伝学では、この常識が疑わしい
との膨大な知見を積み上げてきた。
ほとんどの研究でパーソナリティにおける
家庭環境の影響はものすごく小さいのだ。(p.330) 


・・・・・・・・・・・・・・・・・


遺伝の影響の大きさが書かれています。

とても興味深いのですが
「家庭環境の影響はものすごく小さい」
とまでは言えないかなと
私自身は思ってしまいます。

遺伝と環境がそれぞれ50%だとすると
その50%が大きいか、それとも小さいか
どのように捉えるかでも
変わってくる気がしているのですが・・。


しかし、これらの文章を引用したのは
遺伝と環境の比率について論じるためではなく
この文章が女性、特に母親たちにとって
救いとなるのではないだろうかと
感じたのです。


少子化といわれて久しい今の日本。
出生数がずっと伸び悩んでいるのは
子育て環境が整備されていないというより

いまだに子育てが母親の役割であり
子どもがよい子に育つか否かは
母親の責任にかかっているという社会通念が
支配しているからではないかと感じています。

立派な大人にまで育てあげる荷の重さが
子どもを産むことをためらわせていると
私には思われたのです。


少し前にNHKのクローズアップ現代で
「母親の後悔」というのをやっていました


橘氏の本からはやや話が逸れてしまいますが
子育てに対する母親たちの苦悩が
語られています。

湊かなえさんの言葉。
「母性という言葉の上に
ぜんぶ放り投げて個人に背負わせているので
追い詰められているんじゃないかなと思います。」

「時代が進化しているのに
母性像が変わっていなくて
ほんとうは追い詰められなくていい人まで
追い詰めてしまっている。」


なぜ、子どもを育てることが
母親ひとりの責任になってしまうのでしょう。

子どもは好きだし
産んでよかったと思っている母親は多いと
番組内でも言っていました。

しかし現代の子育ての苦しさ。

しばらく前の日本では祖父母と同居で
3世代家族が多かったから
子どもは母親だけに育てられるものでは
ありませんでした。

子育ての負担も責任の大きさも
母親ひとりが背負うことは
そんなになかったのです。



橘氏の書いている「ほとんどの研究で
パーソナリティにおける家庭環境の
影響はものすごく小さいのだ。」とすると

どんな育て方をしたって
遺伝の影響のほうが大きいのなら
社会的成功者にする、立派な人格に育てる
などという親の責任論が変わっていき
子育てが少し楽に感じるかもしれません。



コメント
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