座敷ネズミの吉祥寺だより

吉祥寺って、ラッキーでハッピーなお寺ってこと?
中瀬の吉祥寺のあれこれをおしゃべり。

「坂の上の雲」

2024-11-09 | 読みました

以前 テレビで放送されていた「坂の上の雲」が

再放送されると知って、

予習のつもりで買ったのが『二百三高地』です。

(長南政義著、角川新書、2024.8.10、960円)

 

これが、「もう一冊」です。

 

 

 

          

 

 

 

この本、まだ読み途中なんですが、

なかなか読み終わりません。

 

噛み応えがありすぎて。

 

途中で別の本に浮気してみたりで、

ますます読み進みませんが、

ドラマが終わるころまでには

読み終わりたいものです(苦笑)。

 

 

 

ご存知、司馬遼太郎原作のドラマ「坂の上の雲」の

以前の放送の時には

面白そうだと思いながら、

続けて見られませんでした。

 

再放送が始まるというので、

ワクワクしていました。

 

そして、この本を買ったのです。

 

司馬遼太郎の原作そのものを読もうとしないのは、

う~~ん、何故でしょう?(笑)

 

 

 

 

 

そうして読み始めた『二百三高地』、

読めば読むほど、戦争はバカバカしいと思います。

 

日本軍が、バカだ、とも思います。

 

あれで勝っちゃったから、

後年の大きな失敗に繋がるのか、

とも思います。

 

でも、あれで負けて

ちゃんと反省して 為すべき改革をしたら

結果は また違ったものになってきたはずで。

 

歴史にタラレバを持ち込んで

さまざまに考えを巡らせても、

世界を見まわしてみると

どうやら 人は争いを止めそうもなくて。

 

人間は、愚かです。

 

 

 


『きのう何食べた?』

2023-12-17 | 読みました

テレビ東京のドラマ「きのう何食べた?」のシーズン2は、

来週最終回だそうです。

 

原作は よしながふみ のマンガです。

 

 

 

よしながふみ は、NHKのドラマ「大奥」の原作マンガも

描いていますが、

こちらも ドラマは 先日 最終回を迎えました。

 

奇想天外な大奥の設定には、ビックリさせられました。

 

 

 

「きのう何食べた」のシーズン2が始まると聞いて、

原作マンガを探しましたが、見当たりません。

 

確か、5~6冊あったはずですが、処分してしまったようです。

 

ついでに、『大奥』も処分してしまったらしいし。

 

 

 

そんな話をしたら、息子が「持ってる」と言い出しまして。

 

え~~!!! そんなら、貸して!

 

親子で趣味が一緒だと、良いよね(笑)。

 

(買った時点で教えてくれる親子関係では、

 残念ながら、ない。)

 

最近、22巻が出てるわよ、という

可愛くない発言をする母に 

息子は素直に21巻までをごっそり貸してくれて、

母は数日間 読みふけったのでした。

 

 

 

 

シーズン2になると、

シロさんもケンジも リッパな中年後期になって、

50歳になるシロさんは 

とうとう老眼鏡を使うようになり、

美容師のケンジは 髪の薄さが気になるように。

 

 

 

ケンジは父を亡くし、葬儀や納骨を済ませる。

 

ケンジの母は ひとりでやっていた美容院を

(ケンジの実家は、埼玉県!)

将来どうするか悩み、

美容室の店長を任されて 責任が重くなり。

 

 

 

シロさんの両親は 住まいを売って 

老人専用マンションに入ろうかと考えている。

 

シロさんの同級生が亡くなって、葬儀に参列する。

 

シロさんの、法律事務所での責任が

それまでとは比べようもなく重くなっていく。

 

 

 

 

だいたいが、

法律事務所でテキパキと仕事をこなした上で

キッカリ定時で退所して

スーパーで買い物をして マンションに帰って

夕食を作るのが シロさんの日常。

 

帰りが遅くなると、大変なのです。

 

そうして 安くて美味しい料理を、

レシピや注意点を明かしながら

調理していって 

一緒に暮らすパートナーのケンジと一緒に

「いただきます。」

と美味しく食べるのが この物語の基本。

 

 

 

毎回登場する、美味しそうな料理の数々。

 

ああ、食べたい!(笑)

 

作って食べるのも悪くないけれど。

 

近年、作った事のある定番料理ばかりを

繰り返していて、

知らない料理は作らなくなっている私に、

誰か作ってくれないかなー、と

マンガを読んでいると、ドラマを見ていると、

いつも思うのでした。

 

あ、『きのう何食べた?』第22巻は、

無事に読み終わりました。

 

(息子が貸してくれました。)

 

 

 


ノンブル

2023-05-10 | 読みました

ノンブル。

っていうのは、

聞いた事あったけど、何の事だっけなー?

 

そうそう。

本 の ページ を表す数字( ページ 番号)のことです。

 

本のページの外隅に振ってある、あの数字です。

 

自分が書いた本に、

自分の身内が書いたノンブルを振ってもらった、

幸運な女性がいます。

 

その幸運の本が、これ。

 

         

 

 

 

24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)

(『傘のさし方がわからない』p71)

によると、著者の弟さん(ダウン症)は 

字が書けないはずだったのですが、

練習して 数字を書いて その数字を組み合わせて 

すべてのページのノンブルを振ってくれたのです。

 

奥付にちゃんと書いてあります、

「ノンブル文字 岸田良太」って。

 

          

 

 

 

そんな本を出版できるなんて、幸運じゃないでしょうか!?

 

涙なしには語れない、抱腹絶倒家族のエッセイ

「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」

(2020、小学館)です。

 

長いタイトルです(笑)。

 

この本は 最近 文庫になりました。

 

 

 

 

 

このエッセイが ドラマになるそうです。

 

プレミアムドラマ

「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」は

5月14日の日曜日 10時から 

BSプレミアムで放送されます。

 

楽しみです!

 

 

 

 

著者の岸田奈美という人は、

「100文字で済むことを2000文字で」書くそうで、

とても読みやすいので

こういう文章、私は好きです。

 

 

他の著書に『もうあかんわ日記』(2021、ライツ社)

『傘のさし方がわからない』(2021、小学館)

があり、これらの本、お貸しできます。

 

 

 


「殿、利息でござる!」

2020-05-20 | 読みました

あら、こんなのやってるわ、と思って

チャンネルを合わせたのは、確か、先々週の火曜日、

放送が始まってから。

 

映画「殿!利息でござる!」を

テレビ東京で 1時過ぎから放送していたのです。

 

          

           

 

 

 

あれですよ、羽生結弦クンが出演する、あれ。

 

と言っても、私も 映画のCMで見てただけなんですけどね。

 

 

          

 

 

 

ただ、私の好きな 磯田道史センセイが原作、という事で、

知ってはいました。

 

見たいな~、と思っていました。

 

磯田道史センセイと言えば、『武士の家計簿』の原作者ですが、

センセイは 歴史小説を書いたのではありません。

 

本物の史料を手にして読み解き、

「面白い!」と思った事を書き散らし、

それがまた普通の人々にとってもすごく面白いものになる、

稀有の人です。

 

最近 テレビでもよくお顔を拝見しますが、

あんなにちょっとしか口を開けないのに 

あれだけハッキリした口調で、しかもよどみなく、

しかも次々といろんな事をしゃべれる人も稀有かもしれません。

 

 

 

 

 

この映画は、

著書『無私の日本人』の中の、「穀田屋十三郎」が原作です。

 

これを(文庫で)読んで とても感動して、

そして映画を(テレビで)見て、

やっぱり感動して。

 

泣きました。

 

涙を流す事は、気持ちの良いものです。

 

「涙活(るいかつ)」という言葉ができてるくらいです。

 

うつうつとしていた私も、サッパリしました。

 

なんにしても、感情を表に出す、というのは

隠す事に比べて、ずっとずっと気持ちの良いもののようです。

 

 

 

羽生結弦クンが出てきたところで来客があって、

いったん スイッチを消したんですけどね。

 

 

 

 

 

          

 

 

 

 

 

私は この『無私の日本人』の中の「穀田屋十三郎」は

メモをとりながら読み進めていました。

 

登場人物が多くて、私のアタマでは、覚えられないのです!

 

今 残っていたメモを見ると、14人の名前が書かれています。

 

(もちろん、全部、漢字!)

 

この実話は、磯田センセイの書く物の中でも

特に登場人物が多くて、

そして「それって、誰だっけ?」状態で読んでも、

決して面白くないのですよ。

 

それが、映画だと、

見知った顔と声の俳優さん達が演じており、

しかも それぞれ かなりキャラが立っていて

「それって誰?」には ならないのです。

 

お話の中に どっぷりと漬かって見ていたのですね。

 

じわじわと感動が深くなるよい映画でした。

 

 

 

 

          

 

 

 

ところで、文庫本の良いところは、解説が付く、という事です。

 

もちろん、軽い(値段と、重さが)という事も大きいですが、

この「解説」が面白かったり 蛇足だったりします。

 

たいてい、余分、だけど、でも、面白い、という事が多いです。

 

 

 

『無私の日本人』の解説は、の藤原正彦氏が書いています。

 

藤原正彦氏は、私にとっては、数学者ではなく、

『国家の品格』の著者です。

 

そして、藤原正彦氏と言えば、新田次郎と藤原てい のご子息です。

 

藤原ていと言えば、『流れる星は生きている』です。

 

これは テレビドラマにもなりました。

 

関係ない話でした、スミマセン。

 

 

 

『国家の品格』の著者は、『無私の日本人』の解説の中で

磯田センセイを

「論理と情緒を兼ね備えた人」「虫の目と鳥の目をともに持っている」

と褒めたたえています。

 

また、

「著者ならではの鋭い洞察や歴史観が、

 本文のあちらこちらに挿入されていて、

 私などは大いに得した気分になる」

のだそうです。

 

なるほど~。

 

 

 

 

 

――公(おおやけ)

というものが、おのれの暮らしを守れなくなったとき、

人々は、どう生きればよいのか。(p.14)

 

国というものは、その根っこの土地土地に「わきまえた人々」がいなければ

成り立たない。(p.51)

 

江戸期の庶民は、

――親切、やさしさ

ということでは、この地球上のあらゆる文明が経験したことがないほどの

美しさをみせた。

倫理道徳において、一般人が、これほどまでに、

端然としていた時代もめずらしい。(p.87)

 

江戸という社会は、日本史上に存在したほかのいかなる社会とも違い、

――身分相応

の意識でもって保たれていた。(p.93)

 

――家意識

とは、家の永続、子々孫々の繁栄こそ最高の価値と考える一種の宗教である。

 

――廉恥

というものが、この国の隅々、庶民の端々にまで行き渡っており、

潔さは武士の専売特許ではなかった。

 

 

 

などなど、思わずページを繰る手をとめて

う~~ん、と考えこんでしまう言葉が 次々と出てくるのです。

 

『国家の品格』の著者が 解説を書いてくださるわけです。

 

 

この『無私の日本人』には、映画になった「穀田屋十三郎」の他に、

「中根東里」と「太田垣蓮月」が収められています。

(文春文庫、2015.6.10、590円)

 

すばらしい日本人がいたのだ、それを私は知らずに生きてきたのだ、

恥ずかしい、もったいない事をした、

などと思ってしまうのです。

 

 

 

 

やりたい事が たくさんあるのに、

どれも終わらせる事ができないまま

毎日が暮れていきます。

 

この日の午後は テレビを見て 午後は過ぎてしまいました。

 

それでも 少しも後悔しませんでした。

 

時間を無駄に過ごしたとは思わず、

「良い時間を過ごした」と思えたのでした。

 

 

気温の上がり下がりが激しい毎日です、

着るものや布団で調整して 風邪をひかないように

気をつけましょうね。

 

 

 


『村上海賊の娘』

2019-11-25 | 読みました

『村上海賊の娘』を読もうと思いました。

 

『のぼうの城』の 和田竜氏の書いた本だったからです。

 

でも、ちょっと読んでる暇がなくて、

文庫になってからでいいか・・・と。

 

それが文庫になってからも、横目で見ながら素通りしてたのですが、

いよいよ読もう、と思ったら、

なんと、4冊もあったので、大いにガッカリというか、ビックリ、

いや、ハッキリ言って、ショックでした(苦笑)。

 

 

          

 

意を決して まず2冊買って、

それらを読み終えてから 残りの2冊を購入。

 

 

 

海賊、といっても 「パイレーツ・オブ・カリビアン」ではなく、

日本の海賊というのは、

なんとなく、浪漫がある気がして、興味を掻き立てられます。

 

だって、その子孫が、日本には 

あちらこちらに住んでいるわけでしょう?

 

実際に、いたんですよね?

 

おとぎ話じゃなくて。

 

ちょっと 浪漫があるじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

時代は 毛利元就が亡くなった後で、

生きた織田信長が登場する場面もあります。

 

大柄で 顔の濃い女性が主人公、という体ですが、

海上を舞台にした戦国のやりとりが中心の

男っぽい小説です。

 

これでもか! というほど残酷なシーンがあり、

とても映像化されそうな予感はありません。

(ゲームにならなできるかな?)

 

 

青い海。

 

小さくても早く動ける船。

 

びっくりするほど大きな船。

 

島々が連なる瀬戸内の海の 緩やかな瀬、荒れる海流の中を

主人公たちを乗せた船が走る。

 

空は きっといつも晴れている、

と思ってしまう本でした。

 

 

 


『明日のカルタ』

2014-03-05 | 読みました
住職が へんてこな本を買って来ました。

「ことば絵本 明日のカルタ」 という本です。



      
       
   

倉本美津留(くらもと みつる)という人が イラストを描き、
「あ」から「わ」まで 言葉を紡いでいます。






                                    


明日は明るい日。

明日の明日はもっと明るい日。

だから未来はすごく明るい。




それから、著者のコメントが付きます。



「明日」は「明るい日」って書くって事、気づいてた?
明日の明日は明るい明るい日。
明日の明日の明日は明るい明るい明るい日。
どんどん明るくなっていく。
  











信じる。

まず自分を。




もし自分を信じなかったら、
自分が信じているすべてのものが台無しになる。
だって、信用できない自分が信じているもの・・・・・・って何?!
自信を持とう!
自分を信じるところから すべてが始まる。




    









   

まだやらなくていいか、
のままご臨終。
チーン。


今すぐスタートしよう。
幸いキミはまだ生きている!







私の好きなタイプの絵ではないのですが、
この絵だと 不思議と 押しつけがましさを感じません。(笑)

生きていれば、なんとかなる。

生きてさえいれば、何かができる。

生きていれば、まるもうけ?






発行所:日本図書センター

発行年月日:2013年6月15日

定価:1300円+税



すべての漢字にルビが振ってあるので、
子供にも読めちゃう。

絵が書いてあるので、子供でも言ってる事が理解でき、
そして 考え込む事ができる本です。



もちろん、大人でも、考え込むと、う~~~ん、大変です!



この本の良さ、伝わったかなぁ?


             

やなせたかしさんの訃報

2013-10-22 | 読みました
台風の影響による雨が上がった 強風の朝、
新聞の一面を見て アッと思いました。

やなせたかしさんが 94歳で亡くなりました。

今年の初夏の頃には コンサートに出演なさっていたので
まだまだ大丈夫? と思っていました。

「やなせたかしとアンパンマンコンサート」 2013年5月5日、三越劇場

そして ちょうど やなせたかしさんについて
記事にしようと思っていたところだったのです。

→→→ウィキペディア「やなせたかし」



               
               やなせたかしコンサート開催!in三越劇場


肝臓や膀胱の癌との闘病。

ご病気さえなければ 
もっと面白い事を 世の中に仕掛けてくださったのではないか、
などと考えてしまいますが。

ご冥福をお祈りします。






新聞にもありましたが、
やなせたかしさんの仕事の陰には、
「徴兵され 中国で 薄いおかゆだけの日々に苦しみ、
 特攻隊員に志願した弟も亡くした戦争体験」
があったそうです。

「一方的な<正義>への疑問から、
 <最も単純な正義は 生活が安定して 飢えないこと>
 と考えた」
そうです。

そうして生まれたのが、自分の顔を犠牲にして
お腹がすいた人を助ける、アンパンマン。



確かに、人は お腹がすいていると 怒りっぽくなりますね。

世界の平和のためには
飢えない事が 一番大事なのではないかな? と思います。






私は 若い頃に 「詩とメルヘン」という雑誌が大好きでした。

絵も 詩も 紙質も、素晴らしい、上質なものでした。

『詩とメルヘン』に触れてから、
やなせたかしさんを 尊敬するようになっていました。



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最近読んだのは、『オイドル絵ッセイ 人生、90歳からおもしろい!』という文庫本です。

平成24年9月1日に発行されています。(新潮文庫、550円)

挿絵もたくさん収録。

ファンには嬉しい文庫本です!



「ぼくは 老いてますます盛ん という頑健老人ではない。

 座業生活五十年、持病の腰痛 プラス加齢による 各種の病気。

 たてばヨロヨロ 座ればバタン。

 心だけが思春期で チグハグなのが奇怪である。

 奇々怪々!」(p41)



なるほどなぁ。

そんな感じの人だったよなぁ。




「人生というのは 後半の方がおもしろい。

 年取ってから解ることが多い。

 童話も 年とってから読むとおもしろいよ。

 そうだったのかと解る。

 グリムでも アンデルセンでも 日本昔話でも みんな奥が深い。


 若い時 夢中になって読んだ小説が
 青くさくて幼稚み見えてくることもある。」(p54)


だから、自殺なんかしては駄目だ、とおっしゃっています。

人生は 後半の方がおもしろいのだから、もったいない事だ、と。



「ぼくは 基本的には 含羞の人である。

 極端な恥ずかしがり屋で、人前にでるのを好まない。

 ところが、加齢するにつれて だんだん軽薄になり、
 紅顔の少年は 厚顔無恥の爺さんになったのだから、
 人生は恐ろしい。

 予測できない、
 ま、そこがおもしろいといえばおもしろいところなんですけども。」(p62)


老人学という学問がありますが、
この人に学べば、間違いナシ! と思いませんか?






こんなふうに、この本は  軽妙なエッセイとイラストに
ユーモアと 語呂合わせと ダジャレと 照れ隠し、
そんなものを まぶして できています。



けれど、この本の199ページからの「回天」、ここだけは違いました。

横山秀夫原作、市川海老蔵主演の映画「出口のない海」を
ご覧になった時のお話です。

映画のテーマは、もちろん、特殊潜航艇「回天」。

感想を依頼されて ご覧になった。

原作は読んでないし、依頼されなければ この映画を見る事は
決してなかったはずだ、と 書いてあります。

試写室へ行くのがおっくうだ、眼も耳も老化している、
そして、「戦争映画そのものが嫌いなのである」。

「自分が戦争を体験してからは 心の底から戦争が大嫌いになった。」

気が進まないまま見始めた「出口のない海」。

「だが 背骨に熱い戦慄が走って たちまち映画の中に引き込まれた。」

やなせさんは 戦争で 弟さんを失っていらっしゃいます。







「亡弟の千尋(ちひろ)が この映画を ぼくに見せていると思った。

 こんなことを言うと 笑われるかもしれないが、
 心霊が呼ぶということは あるような気がする。」

「ぼくは既に 人生の晩年に達したが、
 最近しきりに亡弟千尋のことが偲ばれる。

 あいつが生きていればと 残念でたまらない。

 そこへ この映画である。

 海軍の秘密兵器であった人間魚雷「回天」の秘話なのだ。

 そして 弟は まさにこの回天に乗っていたのだ。」



「しかし 回天とは どんな兵器か、
 この映画を見るまで ぼくは知らなかった。 

 また 知るための努力もしなかった。

 戦争のことは すべて忘れてしまいたかった。」



「兄貴、俺が訓練をうけて乗っていたのはこれだぜ、よく見てくれ。

 弟の声が聞こえた気がした。」






昨日の10月21日は 学徒出陣から70年だったそうです。

(戦争が 泥沼化していった頃だと思います。)

ならば、こうして今頃 私が 戦争に関してブログを綴る事にも
少しは 意味があるのでしょうか?



やなせたかしさんが 終生 忘れる事のできなかった心の痛みには
弟さんの死も 関係していました。

その心が 自らを犠牲にして 飢えた人を救ってくれる
アンパンマンに昇華していったのです。

そして 弟さんの死には 人間魚雷「回天」が関わっていました。



私達は 回天に関わった方を 少なくとも おひとり、知っています。

亡くなりましたが。

直接 お声を聞く事はできなくなりましたが、
だから忘れていい、とは言えません。

いえ、忘れてはいけないから、
こうして度々(パプアニューギニアの87歳の男性など)
「回天」アンテナに 引っかかってくるのだと思います。



戦争関連の報道の多くは 夏の暑い時期になされますが
秋にも 思いださせていただきました。






やなせたかしさんの絵ッセイには 
たくさんの含蓄のある言葉がちりばめられています。

人間が生きていく上で 忘れてはならない事が たくさん書いてあります。

そして やなせたかしさんの優しさが
数々の苦しみや悲しみと共に 深く身に沁みてきたものだったのかと
私は 想像しています。



もう少し 回天に関する事を 考え続けてみたいと思います。



『ぞうきん』

2013-07-02 | 読みました
『ぞうきん』は 河野進さんの詩集です。

(幻灯社、2013年2月15日、875円)




こまった時に思い出され

用がすめば すぐ忘れられる

ぞうきん

台所のすみに小さくなり

むくいを知らず

朝も夜もよろこんで仕える

ぞうきんになりたい



これが、「ぞうきん」という詩です。(p44~45)





著者の河野進(こうの すすむ)さんは
1904年に生まれ、1990年に亡くなっています。

「玉島の良寛さま」と呼ばれていたそうです。

とても素晴らしい方だったようです。





ベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』
(幻灯社、2,012年4月25日、952円)
の著者の渡辺和子さんが
その本の中で紹介していました。

『ぞうきん』のあとがきによると、
河野さんの甥に当たる方に 渡辺和子さんから 
幻灯社の企画として 河野さんの詩集を再編したいという
電話があったという事です。



『置かれた場所で咲きなさい』には、
八木重吉さんの詩についても書かれていますが、

八木重吉さんの詩集よりも 河野進さんの詩集の方がレアなんですね。

渡辺さんは 
もっと大勢の人に 河野さんを知って欲しい、と思ったでしょうし、
大勢の人が 渡辺さんの著書を読んで、
河野さんの事を もっと知りたい、
河野さんの詩を もっと読みたい、と思った事でしょう。

そう、私もそのひとりです(笑)。

それまで 河野さんのお名前を 知りませんでした。



出版社としては、渡辺さんの著書が売れたし、
河野さんに関する問い合わせが 
おそらくかなり舞い込んだ事でしょうから、
今出せば売れる! と踏んだのでしょう(笑)。



かくて、軽くて、小さくて、字数が少なくて、字と字の間が広くて、
ひらがなもたっぷりの、
私の好きなタイプの詩集が 出版されたのです(笑)。

そうして、『置かれた場所で咲きなさい』で感動して
『ぞうきん』にしみじみしている私がいるのです(笑)。



皆さんも ぜひ一度 手にとってご覧になってください。



この本、両方とも お貸しできます。



       かわる

  あたえて
  
  あたえて

  もうなくなっても

  感謝は両手にいっぱい

  残っています

  それがまた

  あたえるものに

  かわるから不思議です



『蠅の帝国』

2013-03-23 | 読みました
22日の夕刊(3面)に
林家永吉さんという元スペイン大使の方が
「オレがやらねば誰がやる」と題して 寄稿していらっしゃいます。

1941年に 外務省の留学生試験に
「徴兵されなかったら」という条件付きで合格なさった方だそうです。



恐る恐る出頭した徴兵検査で 徴兵官は

「おまえは スペインへ留学することになっているんだね。
 
 お国のために尽くす途には変りはない。

 しっかり勉強してこい」

と言って、「第3乙種」にしてくれたとか。

(「第3乙種」は すぐには兵士として徴集されないそうです。

 林家少年は 思わず涙が出たそうです。)



90歳を超えた今も、徴兵官の顔を思い出し、
「いまやらねば いつできる」と机に向かい、
「オレがやらねば 誰がやる」と気力を振り絞っていらっしゃる
というお話でした。

偉い方ですね~!

私とは、対極にいらっしゃる方です。

最近、「じゃあ、いつやるか? 今でしょう!」
という予備校教師の言葉がウケていますが、
紙面のお話は もっともっと 重みのあるお言葉でした。






さて、本日、私は この拙いブログの読者の皆さまに 
お詫びしなければなりません。

『蠅の帝国』について、です。



「次回は、その『蠅の帝国』について 書こうと思います。」
と書いたのは、去年の夏。

暑い、暑い、8月の事でした。

(覚えていらっしゃいましたか? 大汗)

その後 ひと言も 『蠅の帝国』に触れないまま、
今になってしまったのです(泣)。

読書の秋を過ぎ、年末を過ぎ、三が日を過ぎ。

松も取れ、節分を迎え、お彼岸真っ最中の現在。

バカ陽気になったり、肌寒さを覚えたり。

ソメイヨシノが咲き初めた今日この頃。

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?(滝汗)



先日、ようやく読み終わりました、『蠅の帝国』(嬉泣)。

(『蠅の帝国――軍医たちの黙示録』帚木蓬生著、新潮社、2011.7.20)













この本は 
戦場に赴いた 
名もなき軍医15人の戦争体験が、
「私」という一人称で語られる本です。

その15人の中に 
徴兵検査にまわされた 軍医殿の話があります。

(「徴兵検査」p.85~)

先の 林家さんに当たった徴兵官とは 違う人のようです(笑)。



その話によると、軍医はすべて将校、とう軍規があるのだそうです。

医師は残らず軍医として使う、
という下心も 見てとれないことはない、と書いてあります。

苦労(?)して 甲種合格を免れた彼は、中尉の二等級。

お給料は、
本棒は 月85円、
動員部隊なので2割の加棒、
居残り料やなんやかやが入って、
食費なんぞを引かれて、百円余り、らしいです。

下宿代は二食付きで 月25円。

日用品と小遣いで25円近く使っても、
月給の半分は 丸々残ったそうです。



しかも、徴兵検査の旅行中は、
生活費は出張旅費でまかなうから、
月給は丸残り。

その給料で この軍医殿は 電蓄とレコードを買いました。

シューベルトの<未完成>、
ストラビンスキーの<春の祭典>、
ベートーベンの<第八>、
モーツァアルトの<小夜曲>など。

<未完成>は ブルーノ・ワルターの指揮のもの、
福山の店にはなく、大阪から取り寄せたとか。

凝り症の方なんですね~(笑)。



その他にも、いろいろ 楽しい事があったようです(笑)。

ですが、
軍医殿にとっては、この徴兵検査が青春の終わりだったそうです。

そして 規定では 軍医生活は2年だそうですが、
「何年にもわたる軍医生活が待っていた」
と この章は終っています。






それはそれは、いろんな方のお話が並んでいます。

皆さん、それぞれに 壮絶な体験をしてらっしゃいます。

ただ一人、乗馬の自慢ばかりしている人の章がありまして。

なんなんだ、こいつは! と腹立たしく読んでいましたら、
最後に 馬と別れて 南方に赴く、
というところで 終っていました。

外地に行ってからの その方の体験は そこには
ほとんど記されていません。

最後の一文は
「そしてタイ、ビルマと西進し、
 インパール作戦に参加、全滅した。」
となっています。






前にも書きましたが、
医師たちは「軍医補充制度」というもので召集されました。

「ほとんどすべての医師が 根こそぎ、動員された」
と著者 帚木蓬生氏(精神科医でもある)は語っています。



「体験そのものが 医学医療の枠内におさまらず、
 しかも敗戦であったために、忘却されるのも早かった。

 加えて、その体験は、 戦争の荒波に翻弄されているだけに、
 正当な医療とはかけ離れた 苦渋に満ちたものになった。

 後世に伝えるよりは、胸の内に秘める道を、
 多くの軍医は 選んだのではなかったか。」(あとがき)



多くの事を考えさせられる本でした。






これも以前にも書きましたが、
この本、手に持つのも重く、バッグに入れるのも大変で
なかなか読めませんでした。

私の手首には 負担になるのです。



本の内容、これがまた重く、
眠れぬ夜に読んでいて 余計に眠れなくなった事もありました。

ようやく読み終えて ホッとしています(苦笑)。

この本、お貸しできます。






この本の続編があります。

『蛍の航跡』という本です。

やはり 大きくて 重くて 字が小さくて、 
そして 挿絵がありません!(涙)

そしてそして、2100円もします!

早く、文庫にならないかしらね?(笑)



「楽しみは」

2013-02-12 | 読みました
去年末、私は 『楽しみは――橘曙覧・独楽吟の世界――』
という本を読みました。

(新井満 自由訳・編・著、講談社、2008年11月27日)

橘曙覧(たちばなの あけみ)(1812~1868)という、
江戸時代末期の歌人が詠んだ、
独楽吟と題された和歌が 52首、収められています。

連作だそうです。


全部の和歌が、「たのしみは」で始まり、「する時」で終ります。

こういうのは、異色中の異色だそうです。






「たのしみは 

 朝おきいでて 

 昨日まで

 無かりし花の

 咲ける見る時」



これは 天皇訪米(平成6年)の際に、
当時の大統領・クリントンが
スピーチで引用した一首ですが、
私も大好きです。

たまに、庭に出て 
「あ! 咲いてる!」と気づくと、
思わずにんまりしてしまうものです。



It is a pleasure
When,rising in the morning
I go outside and
Find that a flower has bloomed
That was no there yesuterdy
(ドナルド・キーン訳、本書p104)



あと ちょっとだけ有名なものに

「たのしみは まれに魚烹て 児等皆が うましうましと いひて食う時」

といのがあり、これも大好きです。






これら52種が
「孤独平安を楽しむ」「家族団欒を楽しむ」「食を楽しむ」
「貧乏生活を楽しむ」「読書を楽しむ」「書画と歌を楽しむ」
「買い物を楽しむ」「友との交流を楽しむ」
「日本国に生れたことを楽しむ「ささやかな変化を楽しむ」
「野山歩きを楽しむ」
の11章にわけてあります。

それらすべてに 
「千の風になって」の新井満氏の ≪自由訳≫が付けられています。

新井満ホームページ「マンダーランド通信」


新井満氏の自由訳は 本書で8冊目だそうです。






新井氏は 『独楽吟』を
前書きの中で “幸福へのガイドブック” と称し、

本書末尾の「『独楽吟』の世界を探検してみよう」の中で

  「生きている。
   ただそれだけで、
   ありがたい。

   幸福の原点は、これなのである。」

と書いています。

『独楽吟』とは、いのちの賛歌だと思う、と言っています。



そして曙覧のまねをして作ったという一首を 紹介しています。

  たのしみは 朝起きいでて 呼吸をして
  まだ生きてゐたのだと 思ひをる時






思わず 私も 一首ひねってみたくなりました(笑)。

でも 私が作ったのは「しあわせは」で始まるものでした。

  しあわせは 味噌汁作りて 味見して
  うましといひて 頷ける時

オソマツ(笑)。





橘曙覧は、貧乏、「それも超一流の貧乏」だったそうです(p2)。

加えて、
幼くして 母と死別したり 母の実家に預けられたり、
15歳の時に 父を亡くしたりしています。

そして 結婚後に生れた3人の女の子達は 
次々と亡くなっています。

そんな曙覧の歌には
『独楽吟』以外にも 秀逸なものがあるようです。

新井氏に紹介された数首だけでも 興味を引かれます。



この本、お貸しできます。