活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

校正ゲラとの格闘

2008-06-29 04:57:39 | 活版印刷のふるさと紀行
 活版印刷での本作りや雑誌づくりの場合、面倒だったのは「校正」でした。
単行本のときは、16ページや32ページ単位で右肩をコヨリで綴じて、「初校」とか「再校」とか赤いスタンプが押された校正刷りの束が印刷所の営業マンやお使いさんによって届けられます。

 初校のときは、「ゲタ」を履いている箇所がたくさんあると、紙面が点々と黒くなっていて、「さあ、来い」と、挑戦されているようでした。その箇所は該当する活字が見つからなくて、とりあえず二の字型で埋めてあるわけです。

 レイアウトマンや校正マンが「割付」や「校正」を専門に引き受けて編集作業を進行するようになるまでは、この厄介なふたつの作業が編集者の社内ワークの大半でした。
とくに、雑誌の場合は、自分が割り付けた通りに誌面が組まれて出てくれば、ホッとするのですが、収まりきらなかった原稿が欄外にコボレテいるのをみると、自分の割付の下手さ加減が口惜しかったものでした。

 校正は編集者だけで済ますケースはほとんどありません。下見にあたる「内校」
をすませると、自分で著者に届けに行かねばなりません。
著者によっては、訂正、加筆を、これでもか、これでもかとする人がいて、編集者泣かせ、印刷所泣かせでした。私の経験では、高名な人ほどその傾向があったように思います。

 なかには、最初、赤インクで校正しておいて、さらに、そのうえに青インクで
再訂正をするような芸当をする著者もいるのですから受け取って泣けてきました。私にとって「校正」は「格闘技」でありました。


コメント
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