活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

想説/活版印刷人あれこれ26

2010-02-17 09:24:02 | 活版印刷のふるさと紀行
私は想像します。己の生死を賭けて遣唐船で唐に赴いた
留学生や留学僧は「学ぶこと」に想像以上に貪欲であったと思
われます。彼らが「印刷術」に興味を示さなかった筈がありま
せん。

 むしろ明にしても唐にしても技術流出を恐れて日本人留学僧
に印刷された経本は手渡しても、印刷ノウハウは教えなかった
のではないでしょうか。
しかし、滞在年数が長い留学僧にとって見よう見まねで「印
刷」を自分たちのものにすることは可能だったはずです。

 やがて、その留学僧たちが五山など出身寺に戻ってきて、
彼らが持ちかえった経本の復刻を志すのは当然の成り行きです。

 ヴァリニャーノの指示で日本での印刷開始にそなえて準備を
進めている留守部隊には、まだ、西洋式の活版印刷の知識はわ
ずかしかありません。来日修道士たちから伝え聞いただけで
なかなか具体的なイメージはつかめなかったと思われます。

 そこえゆくと、唐わたりの「印刷」は現実味を帯びたもので
より身近に感じることができたでありましょう。
活字版を うえじー植字と呼び、書写によらずに文字を同時に
大量に複製できることが知られ始めたのがこのころだったので
しょうか。とにかく、日本文字、仮名や漢字の版下づくりが唐わ
たりの影響下で着々と進められたものと考えます。






コメント (1)
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想説/活版印刷人あれこれ25

2010-02-16 15:42:06 | 活版印刷のふるさと紀行
 寄り道してしまったので、このへんで、また、「活版印刷」の話に
戻ることにしましょう。

 前回、上海博物館の紙幣印刷に触れましたが、なんといっても紙に
版を使って印刷するテクニックを最初に発明したのは6世紀末の中国
で、明の時代の中ごろから活字版が盛んに用いられたといいます。
ちなみに木版に関していえば中国に現存する一番古い印刷物『金剛経』
が印刷されたのは868年とされております。

 明の時代は日本の室町時代にあたりますが、その頃から日本と中国の
間には勘合貿易がされておりましたし、その前の時代には、遣隋使や遣
唐使の行き来がありました。しかし、これらを利用して印刷術が日本に
もたらされた記録を私は見たことはありません。
 私たちの先祖は印刷した経本を競って手に入れたがったのに、それを
生み出した「印刷術」というハードウェアはほしがらなかったのでしょ
うか

 同じ頃、中国に負けず劣らず朝鮮でも活字版は多用されていました。
室町幕府はわざわざ使節を派遣して『大蔵経』を無心したほどです。
けれども、実際に活字を使った印刷術は豊臣秀吉のときまで日本に
伝わってきていません。いささか不思議な話です。

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上海博物館で4

2010-02-12 12:19:03 | 活版印刷のふるさと紀行
 贋札といえばおもしろい話があります。
中国のある地方では葬式のとき死者が冥土で使うように多額の紙幣を棺桶に
入れる風習があり、「紙銭」といって売られているそうです。

 そういえば、日本でも三途の川の渡し賃というので、死者の首に真っ白の
ズダ袋をかけ、硬貨を入れる地方があったようです。

 ところで、中国の昔の紙幣はサイズが大きく、たとえば、1375年に発行
された「大明通行宝抄」はたてが40センチ、横が22センチもあったといいます。
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上海博物館で3

2010-02-12 11:01:49 | 活版印刷のふるさと紀行
 中国が紙でも紙幣の印刷でも世界で尖端をきったことは
よく知られております。麻の布屑や樹皮を臼で粉砕して、
水に溶かして、すのこで漉く方法でつくった紙に銅凸版で
プレスして紙幣を作りました。

 時代的には北宋地代、997年に蜀の国、現在の四川省
成都で作られた紙幣が最初とされています。(鈴木拓也氏
『中国と紙幣の歴史』)

 ところで最近中国では贋札が横行しているらしいのです。
とくに百元や五十元札に多いようで、買い物のとき、鑑別器
で真偽を確かめる店もありました。
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上海博物館で2

2010-02-12 10:19:54 | 活版印刷のふるさと紀行
 2階で景徳鎮の逸品に目を奪われたり、3階で昔、書道で
ご厄介になった王義之や王献之の拓本に感心したりして、4
階に歩を進めると、「手をふれるな」という注意カードが
のっかった鉄製の小型のプレス機とみまがう器械が通路の片隅
に置いてありました。
 
 よくよく観ると出土された金属貨幣の鋳造器だと説明がある。
そういえば、4階の1ブースは中国歴代の貨幣の展示でうずま
っていて、その一画にこれが鎮座しているというわけです。

 写真の注意カードの下のハンドル上状になっている部分を回すと
心棒がおりて、銅の金属に刻印をほどこして金属貨幣を作り出す
仕組み荷っています。

 とにかく中国歴代、各地方の貨幣となれば膨大な数です。観て
回るのもいさいさかウンザリです。
「よし、これなら紙に印刷を施した「紙幣」もあるのではないだ
ろうか。それがあったのである。
中国ではマルコポーロの時代に紙幣が流通していて、「東方見聞録」
にその記述があったように記憶します。1200年代だったでしょうか。
 
 

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上海博物館で1

2010-02-11 22:30:57 | 活版印刷のふるさと紀行
 旅先なので簡単に紹介しましょう。
2月の某日、「上海博物館」を訪ねました。いまから15年ほど前に
人民広場に建てられた新館で、中国古美術のコレクションが主体で
す。

 正門の両側に4体の唐獅子を配した建物は「天円地方」すなわち
天は円く、地は方形という説から方形を土台にした円柱形で立派で
す。

 所蔵品は百万点?近くあるといいますが、そのうち重要文化財が
13万点で、特に青銅器・陶磁器・書画が自慢のコレクションと
聞きました。
 
 確かに、玉器、象牙、漆、家具、甲骨、印章、中国各民族の伝統
工芸品が21部門に分類整理され見やすいのが特徴です。
 中国5千年の文化展示のなかにひょっとして「印刷関連」の品も
あるのではと目を皿のようにして歩きまわった私でした。
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