本日の日経朝刊29面経済教室に,福井秀夫「弁護士などの資格制度~能力示す情報,徹底開示を」がある。資格制度解放論者である福井教授が,久々の登場である。また,相変わらずの論調である。
「資格は、それを持つ者のサービス品質をある程度保証することによって、情報の非対称を防ぐ一助にはなる・・・情報の非対称対策としては、サービス提供者に仕事を依頼した時点での十分な能力情報が依頼者に提供されることこそ必要である・・・依頼者が十分な品質情報を得たうえで納得して、資格はなくとも信頼のおける者に頼むことについて、国家や業界団体が邪魔する根拠は薄い・・・合格者が増えて、仮に合格者の下限の質が下がっても、その「質」の中身を依頼者が理解し、納得さえしていれば、誰も迷惑を被らずサービス市場の崩壊も起こらない」
資格者に関する能力情報が,正確,かつ,十分に提供されることは,理想的であるが,誰が評価し,また誰が提供するのであろうか?
依頼者は,依頼をする前に,能力情報を必ずチェックするであろうか?
依頼者が「品質情報」を取得したとして,それを十分に理解することができるのであろうか?
結局,誰にでもわかりやすい能力情報の提供制度として,資格制度が存在を肯定することに回帰するのである。
また,「資格などなくても優れた資質を持つ人材は,どの分野にも多数いる。彼らの活用可能性を一律に閉ざす理由はない」との主張もあるが,資格者代理人は,法令及び実務に精通しているのはもちろんであるが,職業専門家としての職責を自覚し,かつ,高度な倫理観を保持することも要求されている。素質という意味で優れた人材は,もちろん多数いるだろうし,実務能力に長けたという意味では,事務員として豊富に経験を積めば,生半可な資格者よりも優秀であることもあるであろう。しかし,依頼者の真の利益に適うために,ときに後見的関与が要求される法律サービス提供者においては,単に「依頼されたことを実現する」だけで足りるわけではなく,「職業専門家としての職責を自覚し,かつ,高度な倫理観を保持する」立場から,違法又は不当な依頼に対しては,NOを言うことも必要なのである。
さらに,資格者団体は,業務に関する制度改善に向けて,適時に,かつ,適切に発言することにより,当該制度の発展に大いに寄与しているが,業務独占を廃止し(強制入会制度の廃止につながる。),自由競争に委ねたのでは,私益のみに走り,公益を顧慮しない「サービス提供者」ばかりとなるは必至である。
福井教授は,司法試験の合格者を年間5000人以上にすることを提案しているが,3000人計画がありながら,2000人余りの数字に止まっている現状をご存じないのだろうか。ご存じでありながらの提案であるとすれば,やはり資格制度撤廃論なのであろう。いやはや。