一昨日と昨日は、「江戸しぐさとは何か」および「江戸しぐさの背景」について述べてきましたので、今日からは、江戸の段階的養育法についてご紹介したいと思います。
江戸期の商家では、創業者がしっかりとした基礎を築いた後は、その存続が至上命題となりました。家を継承するためには、経営手腕を発揮できる後継者を育てることが不可欠です。江戸しぐさに、「三つ心、六つ躾(しつけ)、九つ言葉、文(ふみ)十二、理(ことわり)十五で末決まる」という子育てしぐさがありますが、段階的養育法である子育てしぐさは、そうした要請のうえに生まれたものと解釈できるのではないでしょうか。
江戸の町衆たちは、人間は頭と体と心の三つから成っていると考え、心を、頭と体を結び付けるマリオネットの操り糸のようなものと考えていたそうです。「三つ心」とは、数え年の三歳までに、まだ頭が柔らかく海綿が水を吸うようにさまざまなことを理解していく時期のうちに、この見えない糸をしっかりと張らせなさいということです。
糸は一日一本として、三年で約千本になります。心の糸は目に見えませんが、目つきや表情、ものの言い方や身のこなしなど、自分からしぐさになって出るものは心のありようが表れます。すべてのしぐさは、心の糸がコントロールするのだということを子どもに悟らせるわけです。
その方法は、言葉で教え込むのではなく、親や大人のしぐさを見取らせました。見取りとは、見習わせることであり、見よう見まねでさせることです。子どものおままごとを見ていると、夫婦の会話や子どもへの叱り方などドキッとする場面に出くわすことがありますが、それは子どもが遊びの中でも家庭の姿を見取ったありのままを表現しているからです。親や大人の心のありようは、しぐさになって表れ、それを見ている子どもに刷り込まれていきますので、私たちも日頃から心の糸をコントロールする責任がありますよね。
また、江戸の人々は心を大事にしていたので、「お忙しいですね」と言わずに、「ご精が出ますね」と言ったそうです。「忙」という字は、心を表すりっしん編に滅ぼすと書きます。忙しいとは、心を滅ぼすことですから、忙しいですねと言われることは、心がないと言われるのと同じだと考えたからです。「忘れた」も心を亡くすと書きますので、同じ意味で嫌われたようです。
私も、心を集中して精を出して励んでいる人をねぎらう言葉としてと、「ご精が出ますね」を使いたいと思います。
(To Be Continued)
*記述の一部は、NPO法人江戸しぐさ理事長越川禮子さんの著書を参照させていただきました。
江戸期の商家では、創業者がしっかりとした基礎を築いた後は、その存続が至上命題となりました。家を継承するためには、経営手腕を発揮できる後継者を育てることが不可欠です。江戸しぐさに、「三つ心、六つ躾(しつけ)、九つ言葉、文(ふみ)十二、理(ことわり)十五で末決まる」という子育てしぐさがありますが、段階的養育法である子育てしぐさは、そうした要請のうえに生まれたものと解釈できるのではないでしょうか。
江戸の町衆たちは、人間は頭と体と心の三つから成っていると考え、心を、頭と体を結び付けるマリオネットの操り糸のようなものと考えていたそうです。「三つ心」とは、数え年の三歳までに、まだ頭が柔らかく海綿が水を吸うようにさまざまなことを理解していく時期のうちに、この見えない糸をしっかりと張らせなさいということです。
糸は一日一本として、三年で約千本になります。心の糸は目に見えませんが、目つきや表情、ものの言い方や身のこなしなど、自分からしぐさになって出るものは心のありようが表れます。すべてのしぐさは、心の糸がコントロールするのだということを子どもに悟らせるわけです。
その方法は、言葉で教え込むのではなく、親や大人のしぐさを見取らせました。見取りとは、見習わせることであり、見よう見まねでさせることです。子どものおままごとを見ていると、夫婦の会話や子どもへの叱り方などドキッとする場面に出くわすことがありますが、それは子どもが遊びの中でも家庭の姿を見取ったありのままを表現しているからです。親や大人の心のありようは、しぐさになって表れ、それを見ている子どもに刷り込まれていきますので、私たちも日頃から心の糸をコントロールする責任がありますよね。
また、江戸の人々は心を大事にしていたので、「お忙しいですね」と言わずに、「ご精が出ますね」と言ったそうです。「忙」という字は、心を表すりっしん編に滅ぼすと書きます。忙しいとは、心を滅ぼすことですから、忙しいですねと言われることは、心がないと言われるのと同じだと考えたからです。「忘れた」も心を亡くすと書きますので、同じ意味で嫌われたようです。
私も、心を集中して精を出して励んでいる人をねぎらう言葉としてと、「ご精が出ますね」を使いたいと思います。
(To Be Continued)
*記述の一部は、NPO法人江戸しぐさ理事長越川禮子さんの著書を参照させていただきました。