今朝方も、しつこく雪が舞っていた。春の雪という言葉の響きは大変心地よいのだが、雪そのものは薄汚れてみすぼらしい。かすかな風に吹かれてうろうろする様子は、地上近くまでやって来たものの、どこにも着地点を見つけられず、引き返すわけにもいかず、弱り果てているような感じがする。傍らで見ている者は、早く降ってしまえとイライラさせられる。
二週間前だったらぜんぜん違っていた。今交通止めの中山峠がちょうど圧雪アイスバーンだったので、支笏湖の南岸を走る国道二七六号線を帰り道に通った。夕方四時ころだったろうか。曇り空の中を支笏湖を過ぎ、千歳方面に向かう山道はほとんど車がなく、しんとしていた。道の両側の山林の景観は狭まったり広がったりしながら延々と続く。山々は、日中降った雪によってすっかり冬景色になっていた。そのとき、葉を落とした広葉樹とその間に混じる細身の針葉樹の姿が、突然変化した。枝という枝、幹という幹すべてが、ごく薄いピンク色に染まって輝き始めた。ちょうど陽が後方の山の端から、今日最後の光をわずかに送ってきているのだ。現実とは思えない景色だった。日本画に描かれた幻想的な世界に溶け込むかのような錯覚さえおぼえた。
今朝のグレーな雪模様の中にも、クワァクワァと鳴きながら飛ぶ渡り鳥の一隊があった。今日の天気はそれほど崩れないのだろう。(2013.4.12)