仕事をリタイアして5ヶ月、父しゃんにはこれといって家庭内ミッションがあるわけではない。それどころか、家の居間のソファー、食卓の椅子、ソファーの上のクッション、寝室のベッド、押入れの布団、食卓のおかず、冷蔵庫に入っている一番美味い魚、爪研ぎ用にしている家中の絨毯マット、父しゃんと母しゃんの自由時間と眠っている時間、父しゃんの手など、要するにこの家と時間は全部、席取り・はなと母しゃんのもの。
その上、はなが母しゃんを意のままに操っているので、父しゃんの出る幕はもちろん、持ち物さえ何一つない。でも考えようによっては、ノン・ミッションとは自由だということ。そういえば父しゃんは在職中、窓際が好きだった。目に見えないけど、退屈な自由には大きな可能性が秘められていて、父しゃんにとってそれ自体が大事なミッションなのだ。インポッシブルであればあるほど、父しゃんのミッションは燦然とスカスカ輝く。(2017.12.9)