ホテルを出て山陰線に乗り、嵯峨嵐山駅で下車。天龍寺の境内に入って、そこに加山又造の八方睨みの龍の天井画があることを知った。薄暗いお堂の天井に広がる雲龍図の龍の目はやけに大きいのだが、暗いのでそれほどの迫力は感じられない。テレビの画面の方が鮮明でおどろおどろしかった。
比叡山頂から京都の町方面を望む。一人旅なので、旅行最終日の行動は何も決まってなかった。京都に住んでいたのに登ったことのない比叡に行ってみよう。とて、電車、京福電鉄のケーブルカー、ロープウェイを乗り継ぎ、比叡山頂に着いたところで、案内の人から延暦寺西塔で史上初めての御開帳とかをやっていると聞き、バスに乗った。
延暦寺の釈迦堂で、33年ぶりにご開扉された、伝教大師最澄の手になる釈迦像にお目にかかった。何のてらいもない素朴な風情の木像だ。この日が公開の最終日。閉所恐怖症なので、薄暗く気味悪そうな内陣へは入らず。
山頂から琵琶湖を望む。古い友を探しに、高島や愛知(えち)川へ行ってくることもできただろうにと思う。
そうそう、京都に入った初日、京都府文化博物館で、木島(このしま)桜谷の資料展を閲覧した。彼は、漱石から不愉快な絵だと酷評された日本画家。彼が描いた動物、そして草花も自然もきわめて精緻で美しかった。見る者への優しさがあふれる絵だ。物事に疑り深い者の目には、確かに眩しすぎる。(2017.12.13)