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2015.7.29 『化雲岳』(1,954m)~『トムラウシ山』(2,141m)



 Hiromiが天人峡温泉登山口から、『トムラウシ山』を日帰りで踏破した!

歩行距離35.5km、獲得標高差2,240m、総行程13時間30分


これまで男性ではこのルートを日帰り踏破したという話しを2、3耳にしている。
しかし女性では皆無だろう。
日帰り踏破という発想すら出てこないと思う。
もはやHiromiは単に「女性健脚者」にあらず、立派な健脚者である。


 

私は山中泊を好まず、それ故に人が1泊ないし2泊の山中泊を経なければ登ってこられない山に、日帰りで登ってきた。
例えば、

 ・「旭岳温泉」~「天人峡温泉」~『化雲岳』~『忠別岳』~「白雲岳避難小屋」~『北海岳』~『旭岳』~「旭岳温泉」
  (14時間)

 ・『コイカクシュサツナイ岳』~『ヤオロマップ岳』~『1839m峰』(13時間50分)

 ・『幌尻岳』~『戸蔦別岳』(9時間40分)

 ・『北戸蔦別岳』~『戸蔦別岳』~『幌尻岳』(11時間20分)

 ・『北戸蔦別岳』~『1967m峰』(10時間30分)

 ・『カムイエクウチカウシ山』(8時間30分)   

 ・『エサオマントッタベツ岳』(エサオマントッタベツ川、9時間30分)

 ・『札内岳』(ピリカペタヌ沢、8時間30分)  等。


 
山中泊を好まぬ理由は、重い荷物を背負って機動力が鈍ることを嫌うだけではなく、何よりも汗をかいたままシュラフに潜り込むことが耐えられない。
学生の頃はそんなこともしたが、今は下山して温泉で汗を流し、すっきりした状態で車中「かんぱ~いっ!!」をすることにこそ、心からの喜びを感ずる。
そんな私と2年前の山中で知り合い、『ミニ山の会』のメンバーとして同行することになったHiromiは、私が実践するスピード登山に即のめり込んだ。



そして休日はともにトレーニング登山をし、ウィークデーは終業後体育館でのランニングに励み、心肺機能を強化してきた。
そんな努力の結果がこの日の快挙をもたらした。



 29日3時起床。
3時40分、天人峡登山口をスタートした。
私はこのルートを過去に2度日帰りで往復している。



そして2度とも12時間30分(全行程)を要している。
それで今回はHiromiの足で14時間と想定した。
従って日の長い時期でなければならず、6月からチャンスを伺ってきた。



しかし、こういうように心身ともにギリギリのことをするために狙う時の「チャンス」というのは、そう簡単に訪れるものではない。
心身ともに充実することに加え、天候が味方せねば失敗する。
そんなことで延び延びになってきた。



 夏の暑い時期、飲料水は私が4リットル、Hiromiは3リットルを背負った。
第一公園までの退屈な長い登りを終えたところで、飲料水を一部デポ。
若干身軽になって公園を進む。



第一公園は木道の距離が長くなって歩きやすくなったが、第二公園は相変わらずドロドロ状態だ。
そのドロドロに加え、前夜の雨で草木が多量に雨水を含んでいる。
第二公園を抜けたところで二人とも全身ずぶ濡れ。
着替えを済ませて第2ラウンド開始だ。
『小化雲岳』の裾を過ぎるあたりからお花畑が広がり、まだまだ美しい。



  8時10分、登山口より4時間30分で『化雲岳』着。
この『化雲岳』に5時間以内で登りつけなれれば撤退するつもりでいた。
上々の出だしである。



ところがその後状況は若干下降ぎみ。
『化雲岳』までは11.5kmという長い道のりの中、緩やかに高度を上げる。
ところが『化雲岳』から『トムラウシ山』までの5kmは深いアップダウンの連続だ。
Hiromiはふだんから平坦地の歩行が速い。
それで今回このルートに挑戦させようと思ったのだが、いつも急登となると極端にスピードが鈍る通り、ここでもガクッとスピードが落ちた。
そして辛そう。



それでもこれまでやってきたことに間違いはなく、10時40分、登山口より7時間ちょうどで『トムラウシ山』の頂上に立った。
「おめでとう!」と言いたいが、周りに人がいるし、何やら本州から来たらしいネコ連れの若者がつまらない自慢話しを披露していたので、パッと写真だけ撮り、少し離れたところまで戻って昼食にした。
このときHiromiは空腹で低血糖症状だった。
ロングランにおける空腹管理がまだできない。



 さて下山だが、これがまた長い。
登山口までたっぷり18km近くある。
更に、『化雲岳』までの激しいアップダウンを経なければならない。



しかし空腹を満たしたHiromiの元気さが活力になる。
それにしても往路できつかったアップダウンは、復路だと何倍もの負荷を感ずる。
なんだかヘロヘロ状態で『化雲岳』に戻った気がする。



けれど登山口までまだ残り11.5km。
アホなことは言っていられない。

 

その後は淡々と、ただただ淡々と下る。
第二公園に入ろうとするあたりで、男性の単独行者とすれ違った。
そしてその男性が声をかけてきた。



(前方の小化雲岳を指差し)「あれを越えたらヒサゴかい?」、(はあ!?)と思いつつ「いやいやヒサゴはまだたまだ先」と答える私。
「ええーっ!? まいったなあ。あと何時間くらいかかるの?」。
山を歩いていてこの手の質問が一番困る。
何時間て、その人のスピードがこちらにはわからない。



「ここまでどのくらいかかったの?」と、私。
(時計を見ながら)「6時間? いや、7時間??」、(はあ!? それじゃあナジャよりずうっと遅いじゃん!)
「ここまでそんなにかかったのなら、まだ3時間はかかる」と言って別れた。
いったいどんな知識と自信をもって入山して来たのか、首をかしげずにはいられない人物であった。



 その後第一公園の入口にデポした飲料を回収。
Hiromiはザック内の飲料をとっくに飲み干していたので、グビグビ飲む。
ホッとしたところで雨が降り出した。
それからの5kmは、ただただ濡れて歩いた。
私は登りの途中で履き替えたソックスが合わず、Hiromiもこれまでに経験したことのないロングランのため。お互い登山靴内の足に何かしらトラブルを抱えて痛む。
従ってこの下りは長かった。



5時10分、登山口着。
総行程13時間30分。
Hiromi、よくやったなあ!
踏破できると確信したからこそ挑戦させはしたものの、正直緊張の連続だった。
ホッとした。



下山後美瑛町の銭湯で汗を流し、『十勝岳』の麓にて「カンパーイっ!! Hiromi、おめでとーっ!!」
標高約1,000mの車中泊地は、涼しくて快適であった。

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