10月18日に始まった「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が、10月29日っつうか、30日未明に「名古屋議定書」を採択して閉幕しました。
始まる前には、主に先進国と発展途上国と間の溝が埋まる気配がなさそうで、「いったいどうなることやら…」と思っていましたが、無事に「全会一致」で議定書が採択されてよかった、よかった…。
名古屋議定書の要旨は、共同通信によると、こういったものらしいです。
一、遺伝資源の利用で生じた利益を公平に配分するのが目的。
一、遺伝資源と並び、遺伝資源に関連した先住民の伝統的知識も利益配分の対象とする。
一、利益には金銭的利益と非金銭的利益を含み、配分は互いに合意した条件に沿って行う。
一、遺伝資源の入手には、資源の提供国から事前の同意を得ることが必要。
一、多国間の利益配分の仕組みの創設を検討する。
一、人の健康上の緊急事態に備えた病原体の入手に際しては、早急なアクセスと利益配分の実施に配慮する。
一、各国は必要な法的な措置を取り、企業や研究機関が入手した遺伝資源を不正利用していないか、各国がチェックする
素人目には、なにやら要領を得ない感じなのですが、新聞各紙はどのように評価しているのかを、社説から探ってみましょう。
高い評価から順番に並べてみました。
議長国・日本の「正面突破」が功を奏した。多様な生き物を守りつつ持続的に利用することをめざす「名古屋議定書」の採択は、自然の価値を再認識する歴史的な一歩だ。
途上国と先進国の利益配分をめぐる堂々巡りの議論には、ぜひとも終止符を打つ必要があった。困難な局面を議長提案で乗り切ったことは評価できる。各国がそれぞれの思惑を超えて合意する強い意志を示した意義は大きい。 (毎日)
生物多様性条約の会議で採択された「名古屋議定書」である。温暖化の京都議定書に続き、議長国日本が誇りにできる成果だ。久しぶりに笑顔と拍手で終わった環境会議でもあった。(朝日)
動植物を利用し開発した薬や食品の利益をどう配分するか。動植物をはぐくむ生態系をどう守るか。この問題で、名古屋市で開いた生物多様性条約の締約国会議は、歴史的な成果をあげた。これを基点に対立しがちな先進国と途上国の利害の調整という課題に取り組むべきだ。(日経)
2020年に向けた生態系保全の共通目標「愛知ターゲット」もまとまった。先進国と途上国の利害の鋭い対立で、COP10での議定書採択は困難視されていたことを考えれば、大きな前進と受け止めたい。(産経)
会議での採択は全会一致が原則だが、190を超える加盟国・地域のすべてが満足する結論を得るのは困難だ。それを考えれば、議定書などの採択にこぎ着けたことで、日本は議長国として一定の責務を果たしたといえる。(読売)
なんともビミョーな並び方ですが、「これじゃダメだ
」とか「大失敗
」などというものはなくて、一応、右から左まで
、ある程度の評価を得られる決着だったようです。
松本環境大臣も、環境省の方々も、胃に穴が開くような日々だったでしょうけれど、いやはやお疲れ様でした。
日本の議長国としての役割も、MISIAの国連名誉大使の任期も、あと2年あります。
この2年間で、着実に生物多様性の確保・回復が進んで、胸を張ってCOP11開催国のインドにバトンを渡せることを願っています。