新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

東博の平常展は秋真っ盛り (その5:完結編)

2010-11-19 07:44:52 | 美術館・博物館・アート

東博の平常展は秋真っ盛り (その4)」のつづきです。


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101119_1_2 今、東京国立博物館(東博)本館(日本ギャラリー)の1階16室では、特集陳列「東京国立博物館の模写・模造-平家納経-」が観られます(今月28日まで)。


東博は、上のリンク先にもありますように、「明治5年(1872)の創立・開館以来、展示品の拡充や調査研究などの目的で、さまざまな模写・模造品を制作・収集してきました」です。
なんだ、模写・摸造か…」なんてそっぽを向かないでください(私も以前は「そのくち」でした)。
東博の「模写・摸造コレクション」は、相当なものなんです。
私は、去年秋に開催された「皇室の名宝 -日本美の華」(記事はこちら)に関連して展示されていた「正倉院宝物の模造制作活動-伝統技術の継承と保護」を観て、そのすさまじさを痛感しました。
今年の「正倉院展」の目玉だった(と勝手に想像)「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の摸造を目の当たりにしたときなんぞは、はぁ~~っとため息をつくしかありませんでした。


精巧な模造品をつくるということは、オリジナルを分析して、同じ材料を集めて、当時と同じ手法で再現するということ。以前もこのブログで書いたと思いますが、技術は着実に進化するとしても、技能と感性は「その人」一代限りです。摸造に携わった人たちは、どんな思いで摸造作業に取り組んだのか、オリジナルをつくった人たちに対してどんな感慨を持ったのか…。


   


前置きが長くなりました。この日、展示されていたものをご紹介しましょう。


まず、国宝「平家納経」の模本です。大正時代に厳島神社が依頼し、益田鈍翁らの援助により田中親美が模写・制作したものだそうな。

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そして、同じ「平家納経」模本の別の部分の裏側です。

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そして、平清盛の署名の記された「願文」の冒頭部分

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摸造は、を真似るだけではなく、文字も真似なければならないし、紙(料紙)だってそうです。
自分の感性と個性を殺して、ひたすらオリジナルを再現する。。。。。

想像するだけでも、大変な仕事だと思います。


こちらは博物館草創期の明治10年代に長命晏春らが模写した「厳島経巻」の模本。

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この見事な模本を見ながら、ふと伊勢神宮の式年遷宮のことを思い出しました。


よく知られているとおり、伊勢神宮は原則として20年ごとにすべての社殿を建て直しています。


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この時、建物だけでなく、装束や神宝も作り替えます。
現在、2013年10月の遷御(せんぎょ)に向けて、着々と事業が進んでいるようで、式年遷宮のHPでは、「御装束・神宝の調製」の状況が紹介されています。こちらの記述によれば、


御装束は、社殿の装飾や衣服・服飾品で、神宝は殿内に奉安する調度品。内宮・外宮をはじめ14の別宮に御装束は525種1,085点神宝は189種491点が納められる。調製はその道の第一級の技術を持つ職人が手がけてきた。


だそうです。20年ごとに「その道の第一級の技術を持つ職人」ら建物を建て替え、調度品を作り替えることで、その技術と技能が引き継がれていくわけですなぁ。後継者の育成という点でも、20年という期間は絶妙な気がします。


   


平常展で見つけた今回一番の「逸品」はこちら。

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銅水滴」とあります。墨を擦るときに使う水差しですな。
それぞれが3~5cmほどの小さなものですが、どの作品も意匠・題材・細工が見事です。
真ん中の「犬の親子」を拡大してみましょう。


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なんともおしゃれな文房具です。


次に東博に行くときはどんな「逸品」にあえるのか、楽しみ


最後に、東博から上野駅に戻る途中で見かけた東京スカイツリーの写真を載せます。


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だいぶ大きくなりましたなぁ(今年5月中旬の眺めはこちら)。

コメント
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