「東博の平常展は秋真っ盛り (その3)」のつづきです。
東京国立博物館(東博)の本館(日本ギャラリー)での平常展、1階はジャンル別、2階は時代別の展示になっています。
1階の「ジャンル別展示」の最初(11室)は「彫刻」で、11月28日まではこちらの作品が来訪者をお出迎えしてくれます。
初っぱなから重要文化財、「伝源頼朝坐像」(鎌倉時代)です。
東博のHPの解説によりますと、
鎌倉時代以後に流行した武士の俗体形の肖像彫刻の一例です。鎌倉鶴岡八幡宮に伝来したもので,江戸時代には源頼朝とされていました。最近,神護寺の国宝源頼朝画像が実は足利直義の像であるという新説が議論を呼んでいますが,それでは,この像はいったい誰でしょう?
と、無責任というかなんというか…。
私が日本史を学んだ頃は、神護寺の「伝源頼朝像」は「源頼朝像」だとされていました。それが、いつのまにやら、「伝」がついてしまいました。「源頼朝像」に限らず、昔の定説にどんどんと異論が出てきて、私が「古い人間」になってしまったようで、結構、寂しい…
が、きょうの記事のテーマは、「これは誰の肖像?」ということではありません。
注目したいのは、頼朝さんだと伝えられているこの像の座り方です。
足の裏を向かい合わせるこの座り方、お公家さんの礼法では「楽坐(らくざ)」と呼ぶのだそうです。
こちらのサイトの説明によれば、
装束を着用しての坐法の基本となるものです。あぐらをかくように座りますが、足を組まずに足の裏と裏を密着させるように座ります。膝が左右に張って非常に威儀を感じさせるものです。古い貴人の肖像画などをご覧になれば、まずこの坐法によっているものとわかるでしょう。慣れないと内股の筋肉が痛くなりますが、慣れてしまえば苦になりません。
とありますが、試しに「楽坐」してみますと、かなり窮屈で(私は幼少のみぎりから体が固い)、全然「楽」ではありません
昔の貴人の方々は柔らかい股関節をお持ちだったのでしょうか?
この隣の部屋(12室)に、意表を突く小さな仏像が展示されていました。
平安時代(12世紀)の勢至菩薩坐像です。
正座しています。
正座している仏像って、めったに見られないのではないでしょうか?
少なくとも、私は初めて見ました。
ちょっと調べてみますと、松岡正剛さんのサイトに、こんなページを発見
そして、
アジアの風習を渡ってきたのだから当たり前のことだが、仏像にも正座は少ない。如来は結跏趺坐(けっかふざ)が多く、菩薩や座禅は半跏趺坐(はんかふざ)が多い。
だそうです。
やはりねぇ~。正座している勢至菩薩坐像を観た私の違和感はそれほどおかしなものではないようです
でも、京都・三千院の観音菩薩坐像と勢至菩薩坐像は「正座」なんですかぁ。
と、三千院のHPに気になる記述が…。引用します。
脇侍(きょうじ)の両観音は膝を少し開き、上半身を前屈みにしています。大和坐りと言われる珍しいものです。
んん? 「大和坐り」ですと? 「膝を少し開き、上半身を前屈み」ですと?
確かに、三千院の両菩薩さまは、そういう坐り方をされていて、膝をつける現代の「正座」とは微妙に違います。
そして、東博の勢至菩薩坐像も、
膝が開いています 背中はスッと伸びていますが…。
う~む…。大和坐り…。初耳です…。
彫刻の座り方なんぞというdeepな話はこの辺にしまして、先々週末の東博で観たステキな仏像を続けざまに紹介することにします。
まず、奈良時代(8世紀)の十一面観音菩薩立像。
後ろ姿もいいなぁ~と思います。
次は、京都・三十三間堂(蓮華王院)の千手観音立像…
なのですが、こちらは撮影禁止でしたので、影だけです。
三十三間堂には2回行き、千手観音さまたちも2回拝観しましたけれど、横&斜め後ろから拝見したのは、これが初めてでした。「横&斜め後ろ」から拝見しますと、腕の背面が妙に平面で、正面or斜め前から拝見するのと比べて、かなり見劣りすることは新発見でした。
三十三間堂の千手観音菩薩立像群は、「横&斜め後ろ」からだけ拝観することをお薦めいたします。
きょう最後は、
京都・浄瑠璃寺の国宝「四天王立像 広目天」(平安時代・12世紀)です。
広目天さまの視線の先から見上げてみました。
睨まれて、ははぁ~っm(_ _)mって感じです。
浄瑠璃寺には、高校の修学旅行の時に訪れました。
ところが、池を前にした本堂の落ち着いた佇まいこそ記憶に残っているものの、拝観したはずの仏像のイメージはさっぱり…です。
ここで、書き忘れていたことを思い出しました。
東大寺の大仏さまって、どんな座り方をしていらっしゃるかご存じですか?
先日、米国・オバマ大統領が久しぶりに訪れたというので話題になった鎌倉の大仏さまは、左右対称の佇まいからして「楽坐」っぽいですが(確信なし)、東大寺の大仏さまは、
「安坐」、つまり「あぐら」です。
この記事を書くまで、大仏さまの座り方なんぞ、まったく気にとめたことはありませんでした。
これって、トリビアと言ってもいいんじゃありませんか?
んん? 「あぐら」ではなく、「結跏趺坐」か?
いやいや、右足の状態がよく見えませんので、「半跏趺坐」の可能性もありますなぁ。
今度東大寺に行く機会がありましたら、この目で確かめて期待と思います。
ということで、きょうはこれまで