acc-j茨城 山岳会日記

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山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

北アルプス・前穂北尾根、北穂東稜

2002年07月25日 14時49分20秒 | 山行速報(アルパイン)

2002/7下旬 北アルプス・前穂北尾根、北穂東稜

夏山の舞台 


強烈な陽射しとは裏腹に涼しい微風がさわやかな梓川のほとりから 夏山の舞台を見上げる

にぎやかな横尾までの道は起伏も少なく少々ウンザリと言いたい所だけれど これから始まる夏山休みを考えればそれすら少しの苦でもない 
ましてやこんな好天に恵まれたのはまさに天佑神助とも言うべきか、 普段の行いというべきか。

それなどまるで自信のないさかぼうはこれからの山行日程もあるので 念のため感謝しておく。「晴れ男、晴れ女の皆さんありがとう」

横尾から涸沢目指して横尾大橋を渡るといくらか山らしくなってきて 少しホッとすることができた。 

再会

バテバテだった 
老齢の紳士に次々と追い越されながら彼方にはためく鯉のぼりを目指す

涸沢ヒュッテについたときにはヘロヘロになっていた 
息を切らしながら「全くだらしねえなぁ」と嘆きつつ天を仰ぐ。 喉の渇きを憶えてきたそのとき、出会いは待っていた。 
疲労にゆがんださかぼうの顔に微笑みが戻った。

再会を祝って生ビ-ルで乾杯した。 
HeavenSite、安藤さんとの再会である 
ビ-ルは五臓六腑から手足はもとより頭髪の先々まで染み渡った。

出発 

午前四時 
空は暗くとも晴れ渡っているのが良くわかる。 生憎、明るい月が邪魔をして満天の星空は拝むことはできなかったが これからの好天を思うとココロは踊る。 
月明かりに導かれながら二人は歩き出した。

目指すは前穂・北尾根。 
昨年、北鎌に行ったときから次は北尾根を考えていた。 
偶然ではない。むしろ必然である。 
「なぜ?」と問われれば未だに笑って誤魔化すさかぼうだけれど 言葉にできない確信が其処に存在しているのは事実なのである。

雪渓の左、ガレの踏みあとを辿って5・6のコルへと向かう。 
半ばまで登ると朝焼けが穂高連峰を焦がしていた。 
そうして、さかぼうの夏は始まるのである。


羨望

5・6のコル。

さあ、ここからがお楽しみ。 
とっておきの宝物を最高のシュチュエ-ションで堪能できる。 
これほどの贅沢があって良いものであろうか。 
正直言って、自分自身にすら羨望の嫉妬心が湧き上がるくらい罪である。 
しかし、しかしだ。これを堪能せずして何が語れようか。 
乾いた岩稜に突き抜ける青空、たどたどしい踏跡に脆い岩々。 
すべては触れてこそ、それを語ることが許される。

さあ、一歩を踏み出そう、明日の自分を夢見て。

Ⅳ峰

Ⅴ峰はおおむね涸沢側を行く。 
岩稜フリ-クならば、さして困難はないであろうが、浮石には十分注意が 必要だ。

Ⅴ峰に立ってⅣ峰を拝する。 
なかなかどうして立派なものだ。 
そういえば長野県警遭対に北尾根の状況を確認した時、Ⅲ峰の核心よりも Ⅳ峰の「悪さ」に注意を促された。 
そんなことを思い出しながらコルまで降立つ。

いつもより時間をかけて道読みをしながら涸沢側を行く 
このあたりからグッと高度感は増してきて気分も爽快である 
程なく涸沢側は切れ落ち、稜線へと這い上がる。 
しばらく行くと奥又白側へ向いた矢印がペイントされている。 このル-ト、唯一のマ-キングだ。 
素直にしたがって奥又白側を行くと上方にスリングが垂れているのが見える。 基本に忠実に三点確保しながらそこまで行き、重なり合った岩々を 乗り越えるとⅣ峰はすぐそこだ。 

Ⅲ峰

Ⅲ峰はもう、そこに立ちはだかっていた 
ガイドで何度も何度も見た姿、そのものであった 
3・4のコルで登攀具を身に付け安藤さんとロ-プを結んだ。

1ピッチ目のトップは安藤さん。 
奥又白側から廻り込むようにザイルは伸びる。 ザイルなしでは緊張を強いられるであろう傾斜の斜面をトラバ-スして行く 
2ピッチ目はさかぼう。 
まずは稜線へと上がり、岩溝をひとつ左に見送りクランク気味に チョックスト-ンのチムニ-を行く。登り切った所に支点をとった。 
3ピッチ目は安藤さん。 
チムニ-に続いてジェ-ドルを行く。 狭い岩溝に登山靴を突っ込んみ、フットジャムでグイグイ登れる。 
ここからしばらくコンテで進み、Ⅲ峰直下を涸沢側から頂に出る。 少しの緊張を強いられるが、ココは焦らず時間をかければ問題はなかろう。 


Ⅳ峰を登る安藤氏 奥穂をバックにⅣ峰の頂にて 確保体勢に入るさかぼう Ⅲ峰・ジェ-ドルを行く Ⅱ峰から前穂を望む Ⅱ峰の下り Ⅱ峰をクライムダウン 前穂高岳にて

Ⅱ峰まで来ると横に長い前穂高の頂と登山者が見えた。 
視線が我々にそそがれているのが良く判る。ついつい口元も緩む。 ここまできたら後はのんびりだ。 
最後のⅡ峰の下りをじっくり観察してからクライムダウン。 
ホ-ルド、スタンスともにしっかりしており懸垂下降するまでもないであろう

あとは前穂高への登りを噛み締めながら登って行く 
最後は安藤さんと肩を組んで頂への最後の一歩を記した 

北尾根

前穂高岳からは吊尾根を奥穂高岳へと進み、 ザイテングラ-トを涸沢へ駆け降りる。

吊尾根の登り返しでバテたり、奥穂山荘への道中、 引率パ-ティ-と帯同を余儀なくされたりしたけれども 登攀の充実の余韻を愉しみ、冗談など言いながらの歩行は 意外と苦にはならなかった。


前穂から北尾根をふりかえる

北尾根に登るのに理由などなかった。 
しかし、私はこの道を選択した。

それは一言でいえば「ココロに響いた」から。 ただそれだけだ。 
言ってみれば「恋」である。まあ、そう言うことだと思う。 
自身もその「恋」に明確な理由を見出すことができない。

果たして恋は叶ったのかどうか。 
その答えを深追いするのは野暮というものだ。 
登り終えた後の充実と爽快感をもって良い想い出としたい。


情報 
涸沢から北穂沢の向こうに超然と岩稜が聳える。 
ギザギザしたその形状にすぐそれとわかる。 
北穂高岳から派生する東稜である。 
核心はゴジラの背といわれる岩稜の通過だ。 
切れ落ちた鋸歯の稜線は最高の高度感を演出してくれる。 
また、最低のコル付近は知られざる穂高連峰の展望台でもある。

山行前、さかぼうは少し違う所の情報に気を配っていた。 
涸沢から、最低コルまでのアプロ-チである。 
調べる限り技術的には問題ない。むしろ取り付きまでの道読みが困難そう であることに警戒していた。

幸い前穂・北尾根登攀前日、東稜を歩いてきていた安藤さんから 情報を得ることができた。 
さかぼうは何度も何度も東稜を見つめながら予習に余念がなかった。 

分岐

前日の疲れも程よく解消され、モチ入りのス-プを朝食とした。 
雨具とスリング、ヘルメットと水、行動食をザックに積めこんで おもむろに歩き出す。 
道すがらオコジョが朝の挨拶をしてくれた。 
なんだか良い日になりそうだ。

東稜への分岐は登山道が南稜へと折れたガレ場である。 
これ以上登山道通りに進むと東稜に背を向ける格好になるので 
そこが分岐であろうとアタリをつけた。 

ルンゼ

分岐でヘルメットを装着して一休みをしたら登山道と反対方向へと進路を取る。 
ガレを渡り、北穂沢の雪渓を渡るが意外と締まった雪に難儀をした。 
アイスハンマ-をベ-スに置いてきたのを後悔したが、後の祭。 腰が引けながら慎重にステップを刻む姿は、 我ながらカッコ悪いと容易に想像できた。

最低コルへはガレの大きく張り出したルンゼへと進む。 
踏み後は無数につけられ、少しでも外れれば不安定な岩礫に足元をすくわれる。 
安藤さんの情報どおり、ルンゼ左を意識して進むと無駄がない。 
上部雪渓も左コンタクトラインにル-トをとって行く。

さらにルンゼ上部に分岐がある。 
しばらく逡巡したが、「左」を脳裏に刻んでいた事もあり左へと進む。 
しかし、コルへのひと登りが厄介であった。 
ゆったりとした最低コルで槍・穂の展望を仰ぎながら 概念図で確認するとそこは右が正解らしかった。

さあ、これから東稜の稜線歩きである。 
トラバ-スル-トを見送り凹凸の激しい岩場を登って行く。 

ゴジラの背 

稜線の岩はおおむね安定しており、気持ち良く体を引き上げることができる。 
一ヶ所、切れ落ちた北穂側を5mほど登るところがある。 
ココで落ちれば真っ逆さま。おそらく命はない。 
技術的には困難はないものの、ここでは確保がない。 確保されていた北尾根より格段に緊張する。 
登り終えた時には異常な喉の渇きを覚えた。 コルへの下り

 核心のゴジラの背は聞きしに勝るナイフエッジだがスタンスとホ-ルドは豊富であり 爽快な刃渡りを楽しめる。 
さかぼうは北穂沢側のスタンスを拾って通過した。

やがて稜線は東稜コル目掛けてグッと切れ落ちて行く。 
最後の下りに懸垂下降を使うなどとガイドには書かれているが、 クライムダウンで充分である。 
このコルまで来ると東稜のお楽しみはもう終わりといっても過言ではない。 
後はひたすら北穂目指してダラダラ登って行く。

北穂高岳 

淡々と歩を進める。 
まだまだだろうと思っていたが岩峰を右から巻き気味に通過をすると 
ひょっこり北穂小屋が現れた。

すこし驚いて見上げているとテラスで休憩している青年と目が合った。 小屋に近づくにつれ彼は歓迎の笑顔を投げかけてくれていることに気づいた。 テラスにつくと、「ゴジラの背ですか?すごいですね」とねぎらいの言葉を 頂戴した。

特ににすごいことはなかったのではあるが、名も知らぬ彼の言葉が なんだか妙に嬉しかった。 
感謝の意味もかねて「ありがとう」と微笑み返した。 定番の一枚

北穂高岳の頂はまだ人もまばらであった。 
最高の天候に恵まれ、名だたる槍穂の山々から裏銀、立山、白馬まで 
北アの全容を望むことができる。

もう、思い残すことはなかった。 
山をはじめてからいままで最高の好天だ 
半日ここでグタグタするのも楽しそうではあったが そろそろ里心が芽生えはじめたので、最後に360度展望を拝して下山とする。 

撤収 

コロコロと涸沢まで下ったら、重そうなものから次々と胃袋に詰め込む。 
予定では明日まで滞在予定であったが、家で留守番している幼少の子供たちが恋しくなって 早々下山とした。 
これを親馬鹿というか、子煩悩というか、ホ-ムシックというか。

撤収を済ませて、やや軽くなったザックを背負ったら涸沢パノラマとも お別れだ。


穂高三昧 

横尾から上高地へと木漏れ日の中をとぼとぼと歩く。 
意外と人は少なく気兼ねなく歩けた反面、行きの時よりずいぶん長く感じた。

思えば、好天の三日間。これぞ穂高三昧である。 
岩稜のクラシックル-ト、前穂高岳・北尾根。 
爽快な槍穂の展望岩稜、北穂高岳・東稜。 
・・・・・・。 
あれ?一昧足りない。

今回ザイルを組んだ安藤さんはこれらに西穂-奥穂の縦走路を加え、 
名実ともに「三昧」を堪能していた。 
・・・つっ、吊尾根? 
ここまできてそんなオチでは若手芸人として失格である。

いや、芸人じゃあないんですけど・・・。 
ということで、お待たせいたしました 三昧目っ! 
それはもう、堪能させていただきました。ご馳走さま。


sak


谷川連峰・馬蹄形縦走

2002年07月15日 14時45分55秒 | 山行速報(登山・ハイキング)

2002/7中旬 谷川連峰・馬蹄形縦走

いざ 
もはや季節は夏。夏といえば毎年恒例となりつつある 「夏山休み」が控えている 
一時の独身気分にくわえて冷涼な高山の風。 
この時をなくしてなんのために仕事などするものか。

しかし、なんとなくだらだらと締りのない生活に準備不足は否めない。 
さかぼうは確信が欲しかった。 
「まだまだ若い者には負けない」と思える心と体を。 
そして始まるのだった。さかぼうの 「とてもながい日」が

第一関門の白毛門は土合から一気に1000m登りである。

馬蹄形縦走路 
 土合から白毛門、清水峠、蓬峠、一ノ倉岳、谷川岳、そして土合へとつづく路は ル-ト図で見ると馬の蹄鉄に似ていることから 「谷川岳・馬蹄形縦走路」と いわれる。 
通常、一泊二日のコ-スではあるが、良いトレ-ニングコ-スであり、 どうにか日帰りもできそうであった。 
以前、身を置いていた山岳会でも高レベルの山岳ランナ-ならば10時間を 切ったタイムで下りてくるらしいことも聞いていた。 
しかし、凡人のさかぼうに天才になれといっても土台無理な話。 ヘッテン覚悟で”完走”を目指した。

第二関門は朝日岳までの登下降である 
降りて登ってを繰り返し、ようやくここで1/3である。 
しかし、お花畑や涼しい風に慰められ、禁欲的トレ-ニングというよりは 快楽トレ-ニングというべきか。

爽快感

思いつきも急であれば 実行も急だった 
前夜、一泊二日の研修参加を済ませ、帰宅後仮眠。 
午前0時の予定が寝過ごして午前1時半の出発となった。

朝日岳からは下りとなる。巻機山への分岐(ジャンクションピ-ク)を右に見て 清水峠、蓬峠への道はゆったりとした笹の草原が風に揺れ、なんともいえない 爽快感を演出する癒しの区間である。

 

ヤマ場

蓬峠からようやく後半戦となる。 
峠から武能岳へ200m登って200m下る。そしてそこから茂倉岳へ400m登り返す。 
さかぼうはこの第三関門が 踏ん張りどころであると考えていた。 
後半のヤマ場である。

息の上がらないように歩幅を小さくしペ-スを落とした。 しかし、息は荒くなるばかりである。 
思うように足が上がらなくなってきたのは疲労を呈してきた証拠だ。 
さかぼうは自分に言い聞かせた。 
これはタイムトライアルではなく完走が目標であることを。 
ここではたっぷりと時間を使った。 
息が上がるたび、時間にかかわらず小休止した。

焦り

一歩、また一歩。 
地味に歩を進めると茂倉の頂がようやく見えてきた。 
マラソンでいえばこのあたりが35km地点というところだ。

茂倉岳への登りを終え、谷川のネコミミを拝した時にさかぼうは思った。 
谷川岳まで、あと一時間チョットの散歩道。 今思えばすこし甘い計算をしていた。 
事は5年前に遡る。谷川岳から茂倉岳へ縦走した時の記憶の中に は稜線漫歩のイメ-ジが強く刻まれていたからである。 
マラソンは35kmからが勝負所であることなどスッカリ頭になかった。

魔の第四関門。 
この一時間、やけに長く感じた。 
時計と景色が思うほど進まない為、焦りが生じた。 
茂倉岳で水を切らしたのもその一端であろう。 ペ-スが崩れ、一気に脈が速くなる。 
典型的なバテ・パタ-ンだ。 
もはやこの時、気持ちは天神尾根へと傾きつつあった。


西黒尾根 
ようやくの思いで肩の小屋に辿りつく。 
思いのほか時間がかかってしまった。 
しかし、湯檜曽川を挟んで連なるあの山々を歩いてきたと思えば 良くもまあ頑張っちゃったものだなあと、まずは 自分に敬意を評したい。

さて、もうひと踏ん張り。 
「ここまできたらこっちへ来いよ。」 夕陽に輝く西黒尾根がそう言っていた。

駐車場について自宅へ無事下山の連絡をした。 
下山時のお約束、スカッとさわやか飲料を傾けながら。 
・・・・・! 
しまった!忘れていた。 
今日は娘の誕生日だった。パ-ティ-の準備も整い、 もう待ちかねているとの事だった。 
・・・・・。 
さかぼうのながい日はまだまだ終わらない。


sak