奥利根・刃物ケ崎山
刃物ケ崎山の話を聞いたのは、数年前。ガストンさんからだ。
興味をひかれたのはその特徴的な山名と未登を残したという東壁。
マイナ-好みの嗜好にもあてはまった。
何度か計画はあったものの悪天候で見送られた。
そして今回ようやく実行されることとなった。
当初、2日目の登頂を想定していたものの、ラッシュで初日登頂の計画。
2日目は天気が下るという予報であったためだ。
4/9
8:15 自宅出発
10:00 ガストン邸出発
4/10
0:25 須田貝ダム電力館跡
2:30 起床
3:15 電力館跡出発
須田貝ダムの近くにある電力館は今は閉館となっていた。
しかし、駐車場は閉鎖されていないようなので利用させていただく。
湖岸道のゲ-トを越え、矢木沢ダムまではダム管理上十分な除雪がされていて歩きやすい。
山側からの落雪に注意は必要だが、今日は月明かりに助けられ、ヘッデンなしでも十分に歩ける。
途中、矢木沢ダムの職員寮脇で水を汲む。
5:20 矢木沢ダム
凍っているのか、雪が湖上を覆っているのか湖面の白い奥利根湖。
関東の水瓶とか利根川源流とかこのダム湖を表現する言葉は多い。
湖面の向こうに奥利根の白き山々が連なる。
奥利根湖を望む駐車場手前、沢的にいえば右岸尾根を行く。
尾根をひと登りでアンテナ小屋がある。
しばらくはひたすら登る。
時期によっては薮に苦難するらしいが、今日はそこそこに雪がある。
ときに踏み抜き、それはそれで苦労させられるが、薮よりは楽だろう。
小さな上り下りを繰り返して、1300m付近の平坦地が幕営予定地。
泊りの装備を根明穴にデポ。
ここから家ノ串山への急登がはじまる。
9:12 家ノ串山西峰
家ノ串山は東峰と西峰がある。
三角点は東峰にあるが、一本入れるには断然西峰がいい。
行先の刃物ケ崎山はもちろん、尾瀬、奥利根、上越の山々が一望できるからだ。
ここから見る刃物ケ崎は異彩を放つ。
たおやかにシルクのような雪をまとった奥利根の山々にあって東壁の黒々と鋭い岩肌を露出する姿は独特だ。
「奥利根の異端児」とは成程と膝を打つ。
西峰からコルまで一旦下り、刃物ケ崎山へと登り返す。
登るにしたがって傾斜は増す。きれいな雪稜から、次第に右のハモン沢側が切れ落ちる。
このあたりがナイフリッジなのだろうが、所によりシュルントに雪が乗り踏み抜けば数メ-トル落ち込むわ、
リッジのキノコ雪乗り越しには難儀するわでなかなか快適なリッジとはいかない。
で、リッジを回り込むと締りのないスカスカの雪質に苦労させられたりもする。
しかし、振り返ればなかなか見栄えのするリッジを来たことに満足感。
最後は山頂へ抜ける雪壁と雪庇の乗り越し。
正面はとてつもなく大きな雪庇に行く手を阻まれる。
右は急斜面の後に小さな雪庇、左にトラバ-ス気味に行けばほぼ雪庇はない弱点が1か所。
ここはスピ-ド重視で左にトラバ-ス。
12:40 刃物ケ崎山
同ル-ト下降も考えたが、リッジの状態が良くないので、南西に進んで雪庇の切れた斜面を下り東南稜にトラバ-スする。
トラバ-ス上部には大きな雪庇を蓄えているので慎重な判断が必要。
また、ところどころにシュルントが隠れている。
東南稜に戻れば、まずは一安心。
今日の天候は安定しており、往路の踏み跡を忠実に戻る。
14:28 家ノ串山西峰
刃物ケ崎、上越、奥利根、尾瀬の山々。
改めて山深さを実感する。
15:30 デポ地
当初、ここで幕として明日下山の予定であった。
・・・が、
sakの都合上、今日下山をすることとなった。
(ガストンさん無理言ってすいません。)
デポした荷物を詰め込むが、不思議と往路より重く感じるのは気のせいか。
最後の下りだが、往路のラッセル跡がさらに緩んでいて難渋する。
次第に左股関節痛がひどくなり左足が上がらない。
バランスも悪く静荷重歩行が機能しない。
踏んばりどころだが、ここは自分でなんとかするほかない。
ダムまで行けばあとは舗装路であることを励みに地味に高度を下げる。
17:10 矢木沢ダム
あとは舗装路をボトボト歩く。
洞元湖の景色も初めはいいが、変化がなく飽きがくる。
湖岸道を「最初の核心にして、最後の核心」とは言い得たものだ。
疲れもあってが行きよりも帰りの方が、やや辛い。
「雪崩注意」の看板が16からカウントダウンしていくのがこの業の心の拠り所。
唯一のトンネルを抜けると下方にゲ-トの灯りが見える。ここまでくればあとわずかだ。
18:55 須田貝ダム電力館跡
すっかり暗くなった頃、電力館跡。
日が沈むとひどく冷え込む。
寒風の中、着替えと荷造りを済ませて車に乗り込む。
帰りはさすがに睡魔との戦い。
関越と北関東道を夜間割引で。
22:50 ガストン邸
4/11
0:00 自宅着
さながら「実録・猛烈山行24時!」といったところか。
1日24時間、16時間行動はともかく、2時間睡眠というのは我ながら驚きだ。
時として、山行は天国的なときもあれば、地獄的なこともある。
まあ、それは実体験している当人次第。
どちらにしろ強い印象に裏付けられる。
刃物ケ崎は実に印象に残る山となった。
sak