2005/5月上旬 会越・毛猛山~未丈ケ岳縦走
やぶこぎ 【藪漕ぎ】
木・竹・草などが一杯生えているところを分け開き前進すること。
体の自由を奪われ苦痛であることが多く一般的には忌み嫌われる反面、特異な人々に愛される登山における行為。
六十里越の国道は例年にない多雪で未だ開通の目途が立たず、JR只見線、田子倉駅から除雪途中の国道をしばらく歩く
国境トンネル入り口、湖側の斜面をひとのぼりでロボット雨量計のある峠に立つ。
エメラルド色美しい田子倉の湖面を愛でつつ、しばらくは雪堤を拾う
多雪とはいえ前毛猛まではまだまだ標高が低く、藪漕ぎに従事する場面も多い
健気に咲くカタクリの姿がようやく来た春を感じさせる
しんりょく 【新緑】
晩春・初夏の若葉の緑。「-がまぶしい」
春山における魅力の一つ。若々しいエネルギ-に満ち満ちた姿に「まだまだ自分だって」と背伸びをしたくなることも。
前毛猛に立ってようやくこの山旅の全容が眼前に広がる
毛猛山~未丈ケ岳。その前衛の頂にあって毛猛ですら春霞にかすむ
見下ろせば新緑美しいブナの木立にホッとし、午前の瀟洒な陽に輝く湖面の向こうに村杉半島
今日の行程も決して余裕はないのだけれどもここまで来てセカセカ行くのも馬鹿馬鹿しい
幸いここからは雪堤もかなりのボリュ-ムで繋がっている。時に藪を行くのもまた楽しである
ざんせつ 【残雪】
冬が終わり季節が変わってもなお消えずに残っている雪。
強烈な藪コギは嫌だけど道なき藪山を闊歩したいという身勝手な我儘を可能にしてくれる自然の恵み。「-回廊」
毛猛までの道のりは遠い。見た目以上に雪堤は切れており藪を行くことも多かった
残雪なき季節ならば容易でないことは明白で、それは遥か彼方イスカンダルへ旅立つくらいの意気込みがなければ 到底叶いそうもない
シリセ-ド 〔siri-sade〕
積雪した斜面に己の臀部の丸みを利用し滑り降りる行為。尻制動(?)。
登山における行動はスピ-ディ-且つ楽しいことこの上なく、時にやりすぎズボンの痛みに涙することもしばしば。
毛猛の頂は秘境たる雰囲気を匂わせていた。うむ。これこれ。(喜)
直下の猛烈な藪を突破すれば今度こそは幅五間はあろうかと思える雪堤。延々大鳥岳手前までは繋がっているようだ
毛猛の頂から見定めておいた本日の幕場候補地までは時にシリセ-ドを交えながら快適に高度を下げた
どくず 【読図】
地図に記載された等高線や記号などを基に情報を読み取ること。
それぞれの経験、判断、考察により熟達度の誤魔化しは効かないが、「地図が間違っていた」 というモットモらしい言い訳も酒の肴に利用できる。
明けて朝日と共に朝食とする
順調に進めば今日中に銀山平温泉に浸かれる。それを励みに雪と藪とを繰り返し大鳥岳、そして未丈ケ岳、 日向倉山もすぐそこというときに濃いガスと冷たい雨
この山行では、視界を失うのが最も痛手である。方向感覚を読図能力と判断力に頼わざるをえなくなるからだ
しかしすでに気持ちは温泉気分。とてもいい仕事はできそうもない。冷静になる時間が必要だと思った
方角を失わないために日向倉の山頂付近に天幕を張り、食事をしたら半ば不貞寝のように寝袋に直行した
みなみあいづ 【南会津】(地域)
会津盆地南に広がる山々を有する地域。広義的には川内、会越、奥只見、尾瀬、帝釈、駒止など各山域を指す。
いまだ静けさを保ち、原始の森に安らぎと恵みが残されている魅力の山々。
翌朝、未だ濃い霧にため息をつきながら磁石を片手に銀山平に向けて歩き出す
地形考察を重ねつつ何とか想定路を外すことなくシルバ-ラインの銀山平トンネル入り口に降り立つ
ここまでくれば一安心。小出の駅までどうしたものかはこれからじっくり考えよう。
ココロの憂いに南会津。
地味で素朴でゆるやかで。
喧騒に煩わされる日々、自分が渇きを覚えるのはそんな何気ない平穏のような気がしてならない
それがホントの南会津。意味の核心でもあるわけです
sak