2022/6/28~29 実川・赤倉沢~花沼湿原~硫黄沢下降
今、自分に足りないのは、アレだ。
きっとそうに違いない。
確信的な思い込みから、行動に至るまでにそう時間はかからなかった。
今を生きるために、様々な人生訓や名言に納得してみたり、疑問を感じたり。
とかく日常は悩ましく、解は多様だ。
脳裏に浮かぶ南会津。
それが確信に変わる。
ひと気のない滋味溢れる場所を選ぶ。
そして独り自由を嗜むのだ。
七入から林道を行く。
実川林道は国道からすぐのところで、チェーンのゲートがある。
数年前までこのゲートに鍵はなく、車で矢櫃沢の先まで入れたようだが現在では鍵がかかっている。
広大な七入駐車場に車をおいて歩きだす。
すると、ゲートから1キロほどのところで崩落が起きていた。
鍵をつけたことに納得。
林道は途中で登り(左)、下り(右)に分かれる。
下に行くと実川に降りることができるが、その先に堰堤が見える。
それを嫌って、登りの林道へと進む。
赤安沢出合先の緩斜面から藪を漕いで入渓。
実川を遡る。
しばらくは平凡な流れ。
右岸が崩落した赤茶岩の滝から、滝とナメが現れ始める。
滝場は直登したり、小さく巻いたり。
1か所だけ泳いで水流左スラブに取り付いた。
実川の一番面白いところが、この辺りに凝縮されている。
流れが穏やかになると硫黄沢出合。
硫黄沢は水が少し白濁している。
この辺りは平坦地が多く、少しだけ硫黄沢に入った右岸台地が草原状。
近くの小沢で水もとれるので極上の幕場だ。
フカフカで気持ちの良い場所に天幕を張る。
沢旅はミニマリズム。
ザックで担ぎあげた道具たちで一夜を過ごす。
足りないものは自分で何とかするのも、また楽し。
自由時間。
あとはアレして、コレをする。
癒しの揺らぎに眠気を誘われ、うたた寝。
否、したたか酔いがまわったか。
鹿の鳴き声で目が覚めた。
すっかり闇に包まれた森の河原で意識を失ったかのように寝ているのだから、鹿も驚いたことだろう。
薪をくべ直し、寝床に潜る。
鳥のさえずりとともに起床。
昨夜、炊いた白米を雑炊にして食す。
幕装備はデポして、赤倉沢を遡る。
赤倉沢はすぐに二俣。
右俣を行くが、倒木が多くすっきりしない。
所々で水流脇を登るが、ヌメに注意が必要。
源流の雰囲気が満ちるころ、辺りは針葉樹で覆われる。
俊立する針葉樹が底知れぬ奥行きを演出する森は、まるで異界の淵。
倒木を床に幼木がひしめく。
混沌する生と死。
ゆっくりと未来が紡がれている。
硫黄沢左俣の源流を渡ると、もうすぐだ。
今、自分に足りないと確信した、アレ。
そう、湿原。
正確に表現するなら「人知れずひっそりと佇む湿原で惚ける時間」だ。
そして目指した花沼湿原。
森の只中にポッカリと開けた空間。
大きすぎない、こじんまりとしたところがまたイイ。
池に映る空が青い。
小さく、可憐な花が風に小さく揺れる。
遠くで蛙が何か言っている。
その言葉が解ったら楽しいだろうな、と思う。
水面に映る、青が沁みていく。
花沼湿原から西進。
いくつかの窪を渡って、硫黄沢本流へと下る。
赤茶けた川床。
いくつか滝場は出てくるが、クライムダウンと巻き下りでやり過ごす。
1か所、外傾した岩をクライムダウンする巻き下りが悪かった。
途中、コ字型の流程のショートカットルート(コル)を確認。
幕場まで下り、撤収を終えたら硫黄沢を登り返してショートカットに入る。
実川まで下って、対岸の実川林道終点へと登り返すが、結構な密藪。
おそらくはどこかに踏み跡もあるのだろう。
林道に出たら、あとは余韻を楽しみながら七入を目指す。
今を生きるために。
自分の足で歩く。
sak
↓山行動画