2023/11/9 会越 御神楽岳・水晶尾根
晩秋の善き日に会越・御神楽
思いは通じ、目指すは水晶尾根
azmさんと
-魔法なんて、幻想だと思ってた-
岩壁に咲く彩葉
神が創りし、不溶氷
沢を遡り、藪を漕ぎ、岩を攀じる
そして静かな山旅
それは魔法のようなシチュエーション
前夜、津川で車中泊
4時に起床し、蝉が平先の登山口へ
暗いうちから歩き出すが、スモヒラまでの道は結構スリリング
登山道を右に見送り、直進して広谷川に出る
ここで装備をつけて、遡行開始
季節は晩秋
流石に腰まで流れに浸かりたくはないので、概ねへつる
1か所あるゴルジュは右岸巻き
ラクダの窓沢を仰ぎ見て、しばし進むと本名穴沢
いくつかの滝を越えると視界は開け、岩峰を縫うように走るスラブが見て取れる
そして右岸、トマノ左俣の細やかな流れに入る
途中、azmさんがゴーロの中に水晶を見つける
水晶は日本の国石
身につけることで邪気を払い、災難を防いでくれる効果があるといわれる
「水晶尾根」はその名の通り神の創りし不溶氷を見ることができ、スピリチュアルな魅力にも溢れている
トマノ左俣沢を少し登れば、左岸に濡れたスラブが現れる
過去の記録ではこちらを登ると記憶していたが、なかなか大変な登りになりそう
ここで一考
濡れたスラブの少し上流右岸から小尾根に乗って地形図上の尾根末端を目指してはどうか?
湯沢の頭までの距離は長くなるが尾根には乗りやすそうに見えた
ひとまず、偵察
右岸の草付きをひと登り
突き出たスラブの基部を左から回り込んで、スラブ上
そこから10mくらいの岩登りをすれば、あとは藪がつながり容易に支尾根に乗れそうだった
とはいえ、沢慣れしていないazmさんにはちょっと辛い登りだったみたい
不安は装備で解消しておこう、との考えからロープを出す
尾根に乗ってからはリッジを進む
始めは藪尾根、すぐに岩峰が現れて正面の藪を繋いで行く
次の岩峰は右を巻くように進むとしばらく藪が続き、扇状に広がる岩壁
右には山伏ノドームの威容が見える
そこを左にトラバースしてから右上で尾根に乗る
ここからは細いリッジ
容易だが落ちるとただでは済まないので引き続きロープを出してスタカットで行く
リッジを進み、岩塔を左から巻いて緩いフェイス
さらに細いリッジを進めば核心とされる御神楽槍
これを右から巻き気味に登ると、前方に山伏ノ頭が見える
尾根を目で追うが、結構距離はある
さて、ここで一考
これまで、安全性を重視してスタカットできたために時間は予定を大きく過ぎ、陽は傾き始めていた
日暮れまでには湯沢の頭に到達していないと今日の下山は厳しいだろう
「登山道まで2時間で行きたい。ロープは出さないで行くので、ゆっくりでいいけど休まないで行こう」
azmさんに、そう伝えた
自分にも言い聞かせた
「言葉の力」
それは魔法とも言うのだろうか
幸い、そこからのリッジはこれまでと比べると斜度はなく、藪も濃くない
足元の切れ落ちた場所でのクライムダウンもあるが、足を丁寧においていけば、ロープは要らなかった
尾根を回り込みながら行く辺りは、下を見るとスラブが続き落ちたら止まりそうもない
何か所かでお助けロープを使いながらも、あれほど遠くに見えた山伏ノ頭も目前まで迫っていた
フリクション抜群の岩場を登って、山伏ノ頭
そこから湯沢ノ頭まで藪を漕ぎ、闇に呑まれる前に登山道に出ることができた
目前の危機は脱し安堵
さて、ここからが踏ん張りどころ
あとは登山道をコロコロと、と言いたいところだけどヘッデンで行く栄太郎新道はなかなかスリリング
途中ルーファイで右往左往する場面もあったが、慌てることなく道を見出しながら慎重に下る
GPSアプリ様様
azmさんは弱音を吐くこともなく歩き続けてくれている
「強い山屋になるかもしれない」
そんなことを思わせる歩みだった
スモヒラで空になった水筒を満たして、喉を潤す
最後の休憩で行動食を摂るが、すでに晩飯の時間は過ぎている
それでも心折れないのは、あの日の苦闘があったからといっても過言ではない
-あの日の苦闘-
それは17年前の八ヶ岳
冬、阿弥陀岳北西稜での出来事だ
あの日も核心を抜けて、稜線の向こうに沈む夕日を見た
氷点下の暗闇を歩きながら頬張った飴が実に旨かった
先を行くsatoさんの背中が頼もしかった
そして、こんなシチュエーションに高揚した
まるで、自分が強くなったような気がして嬉しかったからだ
あの時の記憶が、今日の私を歩かせている
言葉の力
あの日の記憶
魔法なんて、幻想だと思ってた
でも、魔法はある
今ならそう言える
そして、それは繋がっていく
いつかきっと
今日を思い出すときに
sak
※ゴールが御神楽温泉になっているのはGPSアプリの消し忘れです
↓動画も