2004/2下旬 八ヶ岳西面・阿弥陀岳北稜
晴天ナリ、晴天ナリ
雲ひとつなく晴天ナリ
規則正しく突き出す左右の足は一歩踏み出すたびに喜びを噛み締めた
どうしようもなく日々は過ぎて行き
どうしようもなく人はすれ違い続けて
結局のところ孤独は付き纏っていくのかもしれないんだけど
何とかしないとホントに諦めたままになってしまいそうで
それが怖くてそれが悲しくてそして辛くて。人は雲ひとつない晴天を想いつづける
思いのままなんてそう滅多にあるもんじゃあない
足るを知ればその幸せがようやく判ってくるはずさ
八ヶ岳の峰に囲まれて、ひたすら空は眩しかった
北稜組
行者小屋から中岳コルへの道を歩く
しばらくで目指す阿弥陀岳・北稜が正面に見えてくる
そこから北稜への登行が始まる
前夜の登攀計画の発表で「北稜組」になった
その日その時、北稜に取り付くことになったのは、自身密かに大きな意味があった
そして出会い
懇意にして頂いているみ-ぼうさんと稜上でお会いした
運命とは面白い。つくづくそう思う
第一岩峰
クラストした斜面をグイグイ登り、稜に出てから一投足でJP
潅木のついた急斜面を痛快にガシガシ登り込めば、あっという間に第一岩峰
岩峰の左に支点がありそこから右上。バンドを右へと数歩進んで直上するとテラスに支点があるからそこでピッチを切るとよい
そこから階段状フェ-スを登ると小さなリッジ。
そこを過ぎたらあとは緩い雪面を阿弥陀岳へと詰めるだけ
2ピッチというよりは1.5ピッチといった感じであっという間の出来事である
登攀終了
海岸で波に遊ぶ子供たち
波に遊ぶはずが波に遊ばれ、冬だというのに衣服はびしょ濡れ
諦観のニガ笑いがやがてココロの底から笑えるようになってくる
そしてその向こうには紺碧の太平洋
なんてことないこんなときが子を持つ身にはシアワセな瞬間なんだろうと思う
しかし、何かが物足りなかった
我侭といわれても仕方がない
やっぱり不幸者なんだと思う
全面的にそんなシアワセに降伏できなかった
リ-ダ-から教示を受けながら後発パ-ティ-を迎えて登攀は終了
大休止のあと阿弥陀を後にした
シリセ-ド
コルからは脱兎のごとくシリセ-ド
まるで子供のように雪に遊ぶ
いや、本質は子供なんだと思う
こんな自分は許されているのだろうか
子供のような大人が子供らしい子供に何をしてあげられているだろうか
そしてあの人は何も言わずに待っている
こんな自分は許されているのだろうか
下山途中、阿弥陀岳が神々しく輝いた
もはや言葉にならない魂の声
届いて欲しいあの人に
sak