1999/7 西穂-奥穂-槍ヶ岳縦走②
ポツポツと雨がテントをたたく。
時間は5時。外はあいにく雨とガス。「撤収めんどくさいな-」そんな愚痴から 今日一日が始まってしまった。
手早く朝食(乾燥米)を湯に入れ、 ホットミルクを飲む。寒い朝にこの一杯。たまらない。
中でゴロゴロしていると、雨音が止んだ!
今がチャンスとテントをたたいて雨粒を 落としたら撤収開始。
ガスに霞む涸沢からの直下降
ゴロ岩の涸沢岳を過ぎ、涸沢槍の脇を 直下降。
朝一、動きの鈍い体で慎重に下る。
幸いクサリ、ハシゴ、ボルト、L字溝のステップなど 様々な手がかり足がかりがあって助かる。
「カララ・・・」後発者の落石の音がガスの中に響く。そう昨年の地震で壊れた 登山道がこのあたりのようだ。
浮き石が多く、要注意区間である。
最低のコルにへは山荘から約一時間。ここから北穂高岳の間は岩の直登、 トラバ-スの連続だ。岩は安定しており、三点確保を確実に実践していく。
松涛岩
北穂南稜の分岐を過ぎると北穂高岳は もうすぐだ。
眼前に松涛岩を仰いで最後の登りを行く。
北穂小屋の”山岳劇場”
北穂高小屋のテラスはまるで映画館。
晴れていれば(上演中は)”絶壁の絶景”
ガスっていれば(休憩中は)真っ白なスクリ-ン。
残念ながら本日の上演は ないようだ。
さあ、いざキレットへ
ここからが大キレットの始まり。
北穂高小屋からガレとザレの道をひたすら下る。 飛騨泣き
下りきったと思うと 最初の難所、”飛騨泣き”が待ち受けている。
強い風の中、足元の切れ落ちた それは、見た目以上に恐怖を感じさせ
岩を掴む手に力が入る。
長谷川ピ-クを行く登山者
滝谷の絶壁をガスの合間に眺めつつ、 かなりもろくなった危険な岩壁を降るとそこはA沢のコル。
目の前のピ-クに 登山者が数人。下から見るとすごい所を登っているのがわかる。
対向者に「こわかったよ-」と脅かされながらその岩壁に取り付く。
途中足の置き場に窮する所が 要注意。「もっちょっとで足が届くのに・・・」私の足が短いのだろうか?
頂上に達するとそこが”長谷川ピ-ク”。”Hピ-ク”のペイントが目印だ。
混雑時はここでの渋滞に注意。反対側が見えないので、防ぎずらいところだ。
(ナイフリッジでの待機時間は妙に長く感じるものです)
快適な縦走路にガスが湧き立つ
無事にピ-クを超えるとそこは長大 かつ快適な尾根道。
ウキウキ気分で歩みを進める。
しかし不気味なのは、 前方のシシバナの垂壁。
ごつごつした灰色のそれはまるで要塞のようにも 見える。
シシバナの不気味な岩壁
シシバナの垂壁はハシゴと三点確保で よじ登る。
下半身はもとより上半身も使い、全身の筋肉を働かせる。
岩が少なく、砂が多くなってくると、ピ-クも近い。
そこは大キレット展望台”シシバナ”だ。
一応大キレットはここでおしまい。南岳小屋で「ほっ」と一息、ジュ-スを 一気に飲み干す。
穏やかな岩稜、南岳
ここからなだらかな岩の稜線。
歩くとカラコロ岩音が美しい 音色を発する。
そんな稜線を中岳、大喰岳と進む。
ふと耳を澄ますとガスの向こうから 賑やかな声が聞こえる。
そう言えば、好天ならば槍が眼前に立ちはだかる所なのだ。
槍岳山荘手前のテン場
賑やかなテント場をすぎるとそこが槍岳山荘である。
「今日はなんだかくたびれた。」天気も悪いし風も強い。
腹一杯メシも食いたい。
そんな言い訳を用意して今日は小屋泊りへ変更。
あったかい小屋の宿泊人となった。
槍ヶ岳独りぽっち明けて天気は・・・ガス時々雨そして風。
一日余裕があるので、東鎌尾根方向へ足を伸ばそうかと思ったが、 天候の好転も望めないようなので、 本日の下山を決意。
風雨の中、槍ヶ岳を往復。
独りぽっちの槍の先。祠に手を合わせ、今年のシンボル、”槍”の看板(?) を写真に撮る。
1999槍ヶ岳のシンボル
思い起こせば去年もこんな天気だった。
体力不足に泣かされた去年の失敗。
あれから一年。槍を眼前に仰ぐ事はできなかったが、
ずっと目標にしてきた夢のような稜線に別れを告げる。
そこから上高地へは一気に下る。
元々下り足(逃げ足?)の速い私。 鍛えた筋肉はこの時最大の武器になるものだ。
槍沢、横尾、徳沢、明神と駆け抜け上高地へ。
なぜそんなに急ぐかといえば、平湯温泉へのバスが最終2時なのだ。
できれば上高地からの穂高連峰、じっくり鑑賞したい。そんな 思いからなのである。
上高地から
さあ、もうバスの時間だ。
結局、ガスのない穂高連峰をカメラに納められなかった。
まあ良しとしよう。それもこれも今度の楽しみだ。
一年に一度の高山山行。来年の今ごろは何処で何をしているか?
きっと今年と同じように「まあ良しとしよう」 なんて言っているのだろう。
sak